【前編】ゆうばり国際ファンタスティック映画祭/目指すは、世界的映画祭

2017.04.02

北海道夕張市

今年で27回目の開催となった、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭。大規模ながらアットホームで、映画関係者や市民、観客との距離が近いことが魅力です。その会場の様子などを2回にわたってお伝えする「前編」です。

夕張はかつて日本最大級の炭鉱都市という顔を持ちつつ、「映画の都」という顔も持っていました。昭和の最盛期は、街に17もの映画館が稼働。しかも、3交代の炭鉱員に合わせて、映画館は24時間営業でした。

今でもホテルシューパロからスキー場のあるマウントレースイまで続く「キネマ街道」には、昭和の匂いとロマンがあふれる映画看板があちらこちらに飾られています。「猿の惑星」「ローマの休日」など、思わずカメラを向けたくなるものばかり。映画ファンにはたまりません。

そんな映画の都、夕張を代表する冬のイベントが「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」です。もともと、1990年に行政主導の助成金でスタートした映画祭でしたが、市の破綻によって休止に追い込まれました。

しかし、日本を代表する映画祭として歴史を刻んでいたことから、夕張の再生に映画祭復活は欠かせないという、全国からの支援と応援がありました。そして何より、市民の強い思いから、2008年に資金調達から運営までを市民主導で行う映画祭として、奇跡の復活を果たしたのです。

この映画祭の特徴は、使われていない施設やホテルの宴会場などを活用した、市民やボランティアによる手作り感満載のイベントであること。それでいて、上映されるのは、公開前のハリウッド映画や日本未公開映画、短編映画など、5日間の期間中に80〜100もの映画が公開されることです。

上映前後にはアナウンサーや映画監督、俳優による解説があるのも見どころの一つ。地元の施設なので、舞台と観客の距離が近く、目の前で映画への想いや作った背景を聞けるという、贅沢な映画体験を味わえます。

また、会場付近のホテルや飲食店は限られているため、地元のお店で映画監督や俳優との交流もできるんです。期間中、訪れているすべての人との距離が非常に近い、世界的にも珍しい、唯一の映画祭といえるでしょう。

映画関係者や市民、観光客が集まる「屋台村」

映画関係者や市民、観光客が集まる「屋台村」

2017年は、神山健治監督のアニメ「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」をオープニングに、俳優の斎藤工監督の「blank13」、第89回アカデミー賞で作品賞を含む6部門にノミネートされた実話「LION/ライオン〜25年目のただいま〜」を始め、公開前の注目作品から短編映画まで見応え十分なラインナップ。

その他、監督や俳優によるトークショーや、広場でストーブを囲んで食事やお酒を楽しむストーブパーティー、ホテルに隣接した“屋台村”での宴会など、初日から最終日まで、笑顔と感動、エネルギーをたくさんもらえるイベントでした。

ストーブパーティー

ストーブパーティー

しかし、資金調達から運営まで、すべてを市民主導で行う映画祭を毎年開催するのは簡単なことではありません。そこで、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭事務局(特定非営利活動法人ゆうばりファンタ)の千石慎弥さんにお話を伺いました。

特定非営利活動法人ゆうばりファンタ 千石慎弥さん

特定非営利活動法人ゆうばりファンタ 千石慎弥さん


——今回の映画祭は、開催できるかどうかわからない状態だったと伺いました。開催にあたって壁になったことは何だったのでしょうか。


千石 毎年のことですが、余剰金がないため、必要な方に必要な予算を捻出できません。また満足な外注予算も立てられず、何度も発注を悩みました。

それでも、市民を中心に、スタッフや学生ボランティア、マスコミ、外注事業者の必死な努力と熱意で本年も開催できました。

——映画祭を終えて、どのようなことを感じましたか。

民間運営になって開催10年の節目を終え、ようやく足下の努力が形になりはじめたかなと思います。実際のところ多方面から、「今までで一番運営がスムーズだ」との声をいただけました。

これは、現場を統括したスタッフと100名の学生ボランティアの成果だと思います。学生の中から、来年はスタッフとして参加したいなどの声も出ていてうれしく思っています。

ゆうばり映画祭は夕張市を象徴するものなので、過去に積み上げたジェンガをひたすら上手に抜き取り、上に積み上げるように、どうにか10年財政破綻以降も継続してきました。この10年間で抜き取れるジェンガも無くなりつつあるため、今後映画祭を存続させ続けるには新たな取り組みによる資金調達を必要としています。

——今後、映画祭をどうしていきたいとお考えですか?

100年映画祭を目指してゆうばり国際ファンタスティック映画祭を世界のファンタスティック映画祭のひとつにすることです。

具体的には、ゆうばりのコンペにノミネートされた作品は、世界のファンタスティック映画祭と共有され、無名なクリエーターがゆうばりから世界に羽ばたく構図を作っていきたいと思います。

そういった取り組みがゆうばり映画祭の価値を高め、より多くの方が夕張に訪れることで、まちをもっと元気にしていきたいですね。

(取材・文:田村朋美、写真:増山友寛)

後編はこちら

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