【中編】ふるさと納税中国・四国サミットin鳥取県米子市

2018.06.18

鳥取県米子市

トラストバンクは鳥取県米子市と共催で、「ふるさと納税が地域にもたらす変革について」をテーマに「中国・四国サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えします。

原点回帰〜米子市ふるさと納税のこれまで、そしてこれから〜
米子市役所 企画部長 大江淳史

米子市は、ふるさと納税制度ができた初年度から取り組んできました。取り組みのコンセプトは4つ。「地元特産品を全国発信」、「“お役所らしくなく”やる」、「市の知名度UPとイメージ作り」、「市外に市民をつくる」、です。

まず、「地元特産品を全国発信」のために、行政と地元事業者によるタイアップで、「米子市民体験パック」と「がいなええもん」を始めました。「米子市民体験パック」は、当時3,000円以上の寄附をしていただいた方全員に、地元企業から原則無料でいただく菓子やお茶、水などを詰め合わせて送るというもの。

地元企業からは試供品として無料提供してもらっていましたが、お送りする数が増えたタイミングからは、自治体が費用負担するかたちで原価をお支払いしています。

「がいなええもん」とは、いわゆる返礼品です。地元企業には約60%をお支払いして、送料は企業負担でやっていただく代わりに、品物を選んだ方の連絡先をお渡ししました。送った品物を気に入れば追加注文がくる可能性が高く、将来的な顧客名簿にもなりますから。

2つ目の「“お役所らしくなく”やる」とは、簡便、迅速、丁寧に対応すること。米子市は全国に先駆けて、専用ページでのクレジット決済をはじめました。米子市民体験パックも、市が企業からいただいたものを詰め合わせて送るため、注文が来たら即日、遅くても翌日には送れます。とても迅速な対応が最初からできていました。

3つ目の「市の知名度UPとイメージづくり」ですが、もともと米子市には「米子市といえば○○」と言えるものがあまりなかったんです。だから、米子市といえばふるさと納税、逆にふるさと納税といえば米子市と認知されるようにしたいと考えました。

当初から、米子市の返礼品について書かれているブログを見つけては、ひとつひとつ「ありがとうございました、またよろしくお願いします。気に入られたらお友達に紹介してください」とコメントをしていました。すると、インターネットで「ふるさと納税」と検索すると「米子市」というキーワードが出てくるようになったんです。

そのおかげで、朝のワイドショーなど全国放送のテレビ局が多数取材に来てくれることになり、マスコミが米子市のイメージ作りを強力にバックアップしてくれました。

そして最後の「市外に市民をつくる」。人口が減少する今、移住者などで人口を増やすよりも、市外に米子市のサポーターを増やそうと考えました。そこで、サポーターを希望する寄附者に市政情報をお送りしたり、里帰りツアーを企画したりしました。

結果、平成20年度の寄附件数は134件、寄附金額は1067万円と、当時ではトップクラスの規模になったのです。しかも当時、ターゲットは地元出身者と思っていたので、県外での県人会で積極的にPRしたり、市職員の同級生に対して、市長と市職員の連名でDMを送ったりしていました。特にお盆や正月の帰省シーズンには、駅や空港でのPR活動に力を入れましたね。

ですから、初年度の返礼品は、故郷への郷愁を誘うために、米子市の風景の絵葉書や、米子市のイメージキャラクターの携帯ストラップ、市の公営施設の招待券などを送っていました。ただ、隣の島根県が、蕎麦やいちじくなど農産品を送っていたので、翌年から「米子市民体験パック」などを取り入れました。

その後もどんどん増え続け、平成24年度の件数は7201件に。当時、この件数は全国1位で、3000件を超えた団体は米子市だけでした。まさにこれが狙いで、市民を市外につくるというのは、金額よりも件数、ファンをつくることが重要だと考えていました。

翌年も順調に増え、3.39倍の2万4000件になり、件数は2年連続で日本一になりました。金額も初めて1億円を超えて約2.8億円でした。26年度からは、全国の市町村がふるさと納税に力を入れ始めたため、爆発的な寄附金を得る自治体が増えましたね。

米子市を追い抜いていく自治体には、魅力ある返礼品、「牛肉、米、海産物(カニ)」がありました。どれも、米子市でも出せたのですが、特化はできませんでした。平戸市はポイント制度をつくったり、玄海町や綾町は生鮮品を定期的に送りはじめたり、それ以外にも魅力的な使い道をPRする自治体が出てくるなど、ふるさと納税市場は活性化しました。

これからの米子市のふるさと納税のテーマは、「原点回帰」です。地元の特産品を全国に発信し、市の知名度アップとイメージづくりを図って、市外に市民を作っていくというのが米子市のふるさと納税の原点。米子市は原点回帰により、ふるさと納税制度の健全な発展に寄与したいと考えています。

パネルディスカッション
テーマ:「これからのふるさと納税に必要な視点・考え方」

登壇者:
株式会社シフトプラス 小﨑 将司 氏(派遣元:宮崎県綾町)
佐賀県玄海町 井上 俊一 氏
鳥取県米子市 企画部 部長 大江 淳史 氏
株式会社トラストバンク 代表取締役 須永 珠代
株式会社トラストバンク 黒瀬 啓介(派遣元:長崎県平戸市)
モデレーター:神戸大学大学院経営学研究科准教授 保田 隆明 氏

保田 まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

黒瀬 ふるさと納税は平成24年度から担当していて、初年度の寄附金額は107万7千円でした。その後に、米子市のHPを見て、トラストバンクの存在に気付き、おかげさまで2年後に全国一位を取らせてもらいました。ただ、自分たちは寄附を集めていた感覚はほとんどありません。地域産業の活性化に切磋琢磨した結果、寄附金額や件数につながりました。

その後、26億円まで伸びましたが、昨年度は10億円減りました。僕はこの10億円減ったのはとても良い事例になったと思っています。このマイナス10億円をプラスの10億円に変えたいと思い、いろいろとやってきました。

井上 私は平成26年度まで玄海町でふるさと納税の担当をしていました。27年度からは水産課へ、今年4月からは住民福祉課で仕事をしています。

小﨑 私は役所に入所してすぐ、23歳でふるさと納税の担当になりました。何をすればいいのか分からない状態だったので、当時全国1位だった米子市に研修に行きました。そこでふるさと納税の可能性を感じ、綾町でも頑張ろうと思ったのが始まりです。取り組みを進める中で、ふるさと納税だけで終わってはいけないと思い、地方のものをいかに高く売るかを考えてきました。

保田 井上さんは、ふるさと納税の担当から水産課、住民福祉課に異動されたとき、ジレンマがあったと聞きました。どのようなお悩みがありましたか?

井上 当時、玄海町はふるさと納税にかける予算がなく、人脈を頼ったり、ボランティアを募ったりしていましたが、やりたいことのアイデアがあっても予算がなくてできなかったんです。その体験から、水産課では生産者や事業者さんたちがやりたいことを徹底的に聞いて、できることを実現するようにしています。

保田 非常にリアリティのある話ですね。大阪で自治体向けのクラウドファンディングの決起会をしたときも、アイデアはあっても予算がなくてできないと悩みを抱える自治体は多くありました。予算はクラウドファンディングで募ればいいと思うのですがどうでしょう?

井上 当時は、ふるさと納税が浸透していなかったので、須永社長に玄海町役場に来てもらって職員や生産者への講義をしてもらいましたが、「正直それどころではない」人が多かったんですね。今は、クラウドファンディングで資金集めができるので、この手法を知る人が増えたらいいなと思います。

保田 平戸市は、HPに寄附金の使い道を細かく載せていますね。ユニークな使い道も多いのですが、以前黒瀬さんは、もっとメリハリのある使い方をしたいと仰っていましたね。

黒瀬 どの自治体も財政が厳しいので、いろんな企画を作ってもなかなか予算が通らないんです。「前年比5%カット」「10%カット」と、予算ベースで事業を切る体質があるので、どんどん職員は企画する能力が低くなってしまったのかなと。だから、ふるさと納税で財源ができても、ユニークな活用の仕方を企画できないと思うんです。ただ、初めて自由に使える資金ができたので、今は少しずつ面白い企画が生まれているような気もします。

保田 ありがとうございます。小﨑さんはふるさと納税担当をされたあと、出向して民間目線、マーケティング目線を地域に根付かせようと活動されています。その立場から見て、今のふるさと納税制度に思うことはありますか? もし、担当者に戻ったらどのような戦略を立てるでしょうか?

小﨑 昔は、寄附金を集めることに注力していましたが、今戻るとしたら1億円集めればいいと思っています。1億円で事業を育てることに注力したいですね。

保田 綾町では、ふるさと納税で返礼品を出していた企業が、卒業する事例も出つつあると聞きました。

小﨑 有機野菜でつくるスムージーを販売しているベジオベジコという会社です。私が担当者だったころ、綾町の強みを活かすためには、綾町の有機野菜を使ったスムージーを返礼品に出したらどうかと須永社長に言われて、スムージーの会社を探しました。そこで出会ったのが、潰れかけていたベジオベジコです。社長に掛け合い、ふるさと納税の返礼品にトライしてくれることになりました。

この会社の強みは、ブランディングが上手だったこと。たとえば、寄附者に対して印刷した手書きのメッセージを同梱したり、きれいな箱に野菜の食べ方を載せたりしたところ、反響がかなり大きくてリピーターが毎日生まれるようになったんです。

すると、「直接買うにはどこに行けばいいですか」という問い合わせが殺到するようになったので、青山のファーマーズマーケットに出店したら大反響だったんですね。そこで、東京の根津に八百屋を作ったところ、もともと寄附者だった方が固定客になり、さらに口コミなどで顧客はどんどん増えました。

最近、「ふるさと納税で新規開拓するよりも今の顧客を大事にしたい。ふるさと納税をやめさせてほしい」と連絡があったので、近いうちにふるさと納税を卒業されることになると思います。

保田 ふるさと納税を通してオンラインで商品を提供して、その良さを知った人たちがオフラインで獲得するようになったと。OtoOの非常に良い事例ですね。

須永社長は、綾町のように、何を返礼品にしてブランディングしようか悩む自治体から、アドバイスを求められることがあると思います。そのときに気を付けていることはありますか?

須永 綾町のスムージーに関しては、「綾町の野菜の大ファンなので、綾町のスムージーを飲みたい」と言っただけなんです(笑)。というのも、ここ数年、都内でスムージーが流行っているのですが、どこで作られた野菜を使っているのかは、ほとんど書かれていないんですね。価格で考えると、おそらく海外産だろうなと。そういった情報発信は意識してやっていきたいと思っています。

保田 ふるさと納税に限らず、地方の企業や事業者がうまくいった事例を日本で一番知っているのは須永さんだと思います。

須永 弊社でもいろんな事例をみんなで集めようとしています。ふるさと納税も、まさにここにいる4人がいろんな事例を作ってくれたことで、他の人が真似しやすくなったと思います。事例はデータとして蓄積しているので、いずれ公開したいと思っています。

保田 ありがとうございます。米子市は、ブランディングやシティプロモーションにふるさと納税はどれくらいのパンチがあるとお考えですか?

大江 3年前はトップだったので、米子市のブランディングはある程度成功したと思います。ただ、まちの規模感によってやりやすいことやりにくいことが違うんですね。平戸市、玄海町、綾町がやられたことは、人口15万人の米子市がやるには少し難しい。それに、米子市は面積がそんなに大きくないので加工品がメインになります。だから、生産者が横のつながりで何かをするのも現実的ではない。

だから、管理職の年齢になって異動した経済部では、システムづくりや事業者さんの仕組みづくりに取り組みました。すると、総務省から「非常にユニークな取り組みだから特別に全額交付で特別措置を取る」と言われ、自腹を切らずにシステムをつくることができました。

保田 平戸市は一度全国1位になっています。それをブランディングやプロモーションに使うこともできたと思うのですが、ずっと地に足の着いた事業者の支援育成をされていたように思います。意図的だったのでしょうか?

黒瀬 ふるさと納税で日本一になった翌年は、ふるさチョイスで特集ページを組んでもらいましたが、PR活動はほぼやっていないです。なぜなら、平戸市は規模が小さく産業規模も限られているので、物ありきのふるさと納税では、これ以上の発展は厳しいと思ったから。「出す品がない」という状況になるのがある程度見えていたので、ここで競っても仕方ないな、と。ならば、「コト」で勝負すべきだと考えました。

それから、寄附金を集めて地方が元気になることで、0が1になることはあっても1が100にはなりません。だから、産業をつかさどる部署が産業振興に財源を活用して展開する必要があります。100人の“消費者的”寄附者よりも、1人の“平戸のまちづくりに共感する”寄附者を大事にしてきました。

保田 井上さんは水産課に異動した後、生産者・事業者さんの話をより聞くようになったと仰いました。そのなかで、先程の平戸の話でも出てきた、産業人口の視点が強くなったと思います。寄附金額より、産業人口が大事になりましたか?

井上 個人的にはどっちも大事だと思います。ただ、他の課との連携がまったく取れていなくて、異動後はふるさと納税に絡もうとしても全く絡めなかったんです。行政の悪いところでよく言われることですが、縦割りでなかなか連携ができない。連携すればもっとうまくいくんだろうなと思います。

保田 今後は連携がうまくいきそうですか?

井上 そうですね。連携しないとまずいと思っています。

保田 ありがとうございます。綾町の場合は、金額・件数が伸びたものの、畜産と農業に偏っているので、返礼品にあまり余地がなかったのではないかと思います。一方で、まちのブランディングとしてユニークな取り組みをされていますね。

小﨑 ふるさと納税で伸びたときはかなり運が良かったのですが、じゃあ寄附を集めて何をするのかが、まったく無かったんですね。それに絶望感と言いますか、寄附を集めても地域は何も変わらないなと思い、少額を集めて綾町をブランディングすることにしました。共感してくれるメンバーを集めて「aya100」を立ち上げ、東京での販促活動を始めたのです。綾町のブランドを強みに、ふるさと納税に頼らない方法でまちづくりを進めました。

保田 aya100では、首都圏をマーケットに始められたと思うのですが、その成果や事業者さんたちの変化はどうでしたか?

小﨑 東京での販促に農家さんを連れて行ったら、「自分の作った野菜をこんなにも美味しそうに食べている姿は初めて見た」と感動されたんです。結果、「もしかしたら自分の作る野菜は、どこでも勝負できるんじゃないか」と自信を持つ方が増えました。

その中のひとりに25歳の藤原くんというオクラ農家がいます。彼は農業をはじめて数年だから、自信がなかったんですね。綾町には40年50年のベテラン農家さんがたくさんいるから、それに比べると自分の野菜はまだまだだと。だけど、東京の販促で「美味しい、美味しい」と言って食べる人たちの姿を見て、「僕、挑戦します」と、九州の「ななつ星クルーズトレイン」にオクラを出したら採用されたんです。今では、「僕のオクラは日本一」と自信を持って栽培されています。

保田 須永社長、今の事例はまさにそうだと思うのですが、ふるさと納税は、商品の良さを知ってもらって、その結果として事業者が自信をつけていくというのが非常に大きな効果だと思うんですね。トラストバンクは、消費者と接する機会を作ったり、有楽町でカフェをやったりされています。その効果を紹介してもらえますか?

須永 ふるさと納税市場は、事業者・生産者さんの自信がつくってきたと言えると思います。ちょうど、今後のイベントには事業者の方を連れてくることを条件にしようと社内で話しているところです。なぜなら、先程小﨑さんがお話ししたようなことが次々と起こるのを私たちは目撃するんですね。感動して自信を得て、明らかに目の色が変わっていく。リアルの現場がとても重要であると肌で感じているから、弊社ができることはもっと提供したいと考えています。

保田 大江さん、ほかの3つの町と米子市が違うのは、一次産業か二次産業か、つまり生産か加工かで、米子市の場合は加工がメインです。消費者との接点をもったとき、生産者ほど感動できないかもしれませんが、それでも加工業者が気づきを得た、ビジネス効果を最大化したなど事例はありますか?

大江 「大山ハム」があるのですが、ブランド名としてはあまり知られておらず、関東では「おおやま」と読まれてしまうんですね。それが最近ふるさと納税の影響で「だいせん」と読んでいただけるほど有名になりました。そして、「大山ブランド会」が民間の力で立ち上がりつつあるんです。加工品のブランドが力を合わせて売り出そうとしている取り組みは、とてもいいと思いました。

保田 よくあるのは、強い会社だけが潤い、ほかに波及効果がないこと。だけど、強い会社のブランディングに他の事業者も乗っかり、より強くしていこうとされているのですね。

では、次は産業の活性化に軸足を移動したいと思います。平戸市の産業振興の事例や取り組み体制の紹介をお願いします。

黒瀬 平戸市は、10年前に立ち上げたブランド協議会があり、ずっとブランド化に取り組んできました。平戸は四季折々のいろんな産物があるのですが、小ロットなんですね。「平戸と言えばこれ」といわれるような、圧倒的ロットを持つものがひとつもない状況なので、「季節ごとに平戸の魅力が変わる」という打ち出しをしています。

それから、産業振興として商工物産課では、起業セミナーを開催しています。年に数回、講師が講演するものや、個別の起業相談会があります。直近2年間で、セミナーに参加したのは64名、個別相談会は73名、そこから起業したのは13社でした。実際2年間で起業したのは24社なのですが、ふるさと納税の支援策を使って起業されたのは13社でした。

保田 平戸市の人口は3万2000人くらいですよね。そこで13社、24社起業して食べていけるのかなという心配もあるのですが。

黒瀬 ちょうど、産業振興の部署に「起業支援の次は、経営支援が必要では?」と言っているところです。スタートアップの立ち上げはできても、その後の継続が大変です。ふるさと納税の寄附金を活用して起業した事業者に対しては、ふるさと納税の返礼品にしている商品をブラッシュアップしてもらっています。

保田 返礼品市場があるので、最初から販路があった。しかも、平戸市の場合は東京に商品を卸せる居酒屋や商店街などの販路もあるので、そういったバリューチェーンができつつあるということでしょうか。

黒瀬 そうですね。今は平戸市の特設サイトやふるさとチョイスもありますし、首都圏には何店舗も平戸市単独のショップや居酒屋があるので、そこは起業しやすい部分だと思います。

保田 ありがとうございます。井上さん、玄海町は平戸市よりも海産物の品数も量も多いと思うのですが、地元の事業者の育成や支援はどのように取り組んでいますか?

井上 私が担当のときは、ふるさと納税をアテにするなと言っていたので、新規の事業者さんは生まれなかったです。平戸市のようにシティプロモーションを計画的にできていないので、町民や生産者さんと向き合い、彼らのやりたいことの後押しやフォローをしたいと思っています。

保田 水産課では、事業者の方とのやり取りがたくさんあったと思うのですが、「ふるさと納税をこう活用しよう」などのお話をされたことはありますか?

井上 最初はしていました。しかし、話を聞くうちに、ふるさと納税以外にやるべきことがたくさんあることに気付きました。たしかに、ふるさと納税はお金がすぐに振り込まれるメリットはありますが、事業者さんがやりたいのは、しっかりとしたHPを作ることや、効果のあるPRなどでした。まずはそれらを実行して、自信をつけてもらった後、ふるさと納税にも取り組んでみるという流れにしています。

保田 健全な議論が現場でなされているということですね。ありがとうございます。では次に、地域商社についてどう考えるか、その可能性を伺います。綾町のaya100は、地域商社の動きだと思います。今後、どのように取り組んでいきますか?

小﨑 私が地域商社を立ち上げた理由は、ふるさと納税と世界がまったく違うからです。ふるさと納税は市場も大きくなっているので、品を出せばある程度注文が入ってきますが、自分たちで立ち上げた通販では誰も買ってくれません。実際に、一週間たって1件も注文が無かったこともありました。これはまずいと思いましたね。

ふるさと納税だけに頼るのはダメだと言うのは簡単だけど、それ以外で売上を上げるのは簡単ではない。だから、自分たちが商売を学んで、ノウハウを蓄積していけば、ふるさと納税以外で売上を出せる事業者を増やせるかもしれないと考えたのです。まちと事業者に還元していくことが、僕の役目だと思っています。

保田 まちの規模が小さいと、職員の目の届く範囲だからやりやすいでしょうし、逆にリソースが足りないこともあるでしょうね。その点で、ほかのまちより規模の大きい米子市はリソースがある一方で、難しい面もあるかもしれません。大江さんは、地域商社をどう考えますか?

大江 今あるものをうまく地域商社として活用するのが重要だと思います。米子市のふるさと納税は、米子高島屋との連携が強いんですね。米子高島屋は連結決算対象ではありますが、独立法人。地元の百貨店です。53年、ずっと頑張っていただいているためノウハウもあります。ですから、どこかのブランディング会社に依頼する必要性がないと思っていて。地域に元気な有名百貨店があることが、地元振興になると思っています。

保田 ありがとうございます。最後に須永社長にお伺いします。今後、自治体が地域商社を担っていくにあたって、アドバイスがあればお聞かせください。

須永 以前、ある方に、「ふるさとチョイスって国の中間支援組織みたいですよね」と言われたんですね。今後、同じような企業や組織・団体が出てくるのではないかと思っています。自治体だから、企業だから、NPOだからとか、そういったことは関係なく、みんなで力を合わせて課題解決に取り組むことが重要だと思います。

地域の良いものがどこにあるのかわからないと言う会社は本当に多いのですが、唯一情報が集まる県があります。それは、高知県の四万十ドラマさん。産品を提供したり道の駅をやっていたりと、商社的な役割を果たしています。そこに行くと高知のいいものはこれだよと全部教えてくれます。そういった機関が他にはないんですね。

ただ、ふるさと納税をきっかけに各地で小規模の地域商社が生まれようとしています。すると必要になるのが、それらを取りまとめる組織。今後は越境ECも日本に広がっていきます。そういった視野を持ち、自分たちで販売できるノウハウを身につける重要性を考えながら、ふるさと納税に取り組んでいただけたら、日本の明るい未来を描けるのではないかと思っています。

事業者連携の立ち上げと今後の目標 ~浜田ふるさと寄附事業者連携会~
株式会社ワールドワン 井上貴司

株式会社ワールドワンは、平成27年度から浜田市の委託業者としてふるさと納税に関わり、本年度より浜田市のページ作成やPR、イベントなどをほぼすべて請け負っています。

当初はページ作成と事業所サポート業務を請け負っていましたが、今はコンサルティングなど幅広くお手伝いをしており、地場産品の通販サイトや商社業務、浜田のふるさと寄附事業者連携会の事務局なども担っています。

まずは、いかにして事業者連携会を立ち上げたかを簡単にお話しします。

弊社は、平成27年に事業者サポート業務の委託を受けてから、毎日たくさんの事業者さんを訪問しました。訪問することで分かったことがたくさんあります。ひとつは、事業者同士の仲が悪いこと。浜田市は「のどくろ」が有名なのですが、「あそこが1万円で5尾入れるなら、こちらは7尾入れる」とか、ほかにも「あそこの〇〇は味が悪いのになぜ載せているのか」「あそこと同じページに載せないでほしい」など、特に同業者は仲が悪かった。

二つ目は、ふるさと納税の仕組みを知らない事業者さんがほとんどだったこと。「市役所に言われたから送っただけ」だと、何を言っても伝わらないし、改善する気もない状況でした。これは非常にまずいと思い、みんなで共働できる場を作ってはどうかと考えました。市役所の許可をもらい、すべての事業者さんにメールを送りましたが、返信はゼロ。そこで、個別に口説いて歩くことにしました。

でも、闇雲に口説いてもうまくいきそうになかったので、事業者さんの相関図をつくりました。作ってわかったのは、キーとなる事業者さんの存在です。複数社とつながっている人が見つかったので、そこにひたすら通い続け、連携・協働が必要なんだと口説き続け、賛同いただきました。そして、その方と一緒に口説きの和を広げていったのです。

事業者さん同士の仲は悪くても、「自分も参加しないと損だ」と思う事業者さんが多かったので、その気持ちを逆手に取りました。また、各業界で悩むポイントが異なるため、さまざまな業種の意見を聞けるようにしました。結果、47事業者さんに加盟していただけたのです。当時、浜田市の登録事業者は96、賛同いただいた47事業者は、返礼品を送っている事業者さんのほとんどでした。

組織体制は、会長1名、副会長2名、役員7名、事業局長1名、オブザーバー2名、会員37名。会長は地元信用金庫の理事長、事務局・事務局長は弊社で請け負い、オブザーバーは須永社長と浜田市産業経済部の参事に参加していただいています。会員は各事業所の役員、社長、または決裁権のある現場の方。なぜなら、持ち帰ると決まらないので、決裁権のある人が集まってスピーディーな決議をするためです。

この連携会は、ふるさと寄附を集めることを目的としていません。連携会の目的は、あくまで地域産業を活性化すること。この連携会と、浜田市のふるさと寄附推進室が連携し、ようやく立ち上がったわけですが、ここまでに約1年かかりました。

立ち上げ後は、設立総会、定例会、役員会、勉強会などの会合を定期的に行っています。加えて、トラストバンク主催のイベントにも出店。テレ朝夏祭りふるさとコレクション2016や、大阪・横浜の大感謝祭などです。

テレ朝夏祭りふるさとコレクション2016に出店するに当たり、定例会で事業者さんを募ったところ、15社26名が名乗りを上げてくれました。そこで連携会にイベントチームを作り、飲食や販売は行わず、寄附獲得に特化し、浜田市のPRをするための作戦を練りました。自社のPRは可能ですが、参加費は自腹。参加する事業者さんの産品で特別限定商品をつくり、事業者さんがふるさと納税について語れるようにするための勉強会も開きました。

実際にイベントに参加し、後日反省会をしたのですが、一番多かった声は、「異業種のメンバーと明確な目的のもと、一致団結できた」という意見。同業者同士、仲が良くなるきっかけになりましたね。

今は連携会で、ふるさと納税を通じて自分たちに何を創れるか、何を残せるかをテーマに、定期的に勉強会を行っています。まずは、ふるさと納税の考え方をわかってもらう。次に、制度を通じて地域を活性化するために、事業者ができること、すべきことは何かを投げかける。「毎日自社の産品ページを見て、他の自治体と比べて改善できるところがあるかを考えてください」と話しています。

また、浜田市は産品フォーカスを脱却し、生産者・事業者にフォーカスしようという話をしています。浜田市は「のどぐろ」で一定の知名度と寄附をいただいてきました。これからは、生産者・事業者へのファンづくりの移行期間として、浜田市ののどぐろ・お米という表記から、○○会社ののどぐろ、○○農家のお米という表記に変更。産品ページも、生産者・事業者の現場や人が分かるように作り始めています。

制度が無くなったとしても、売上を上げられる仕組みづくりへの一歩を常に考えてほしいので、そのステージづくりが連携会の役割と考えて取り組んでいます。目指しているのは、事業者連携会のような取り組みが全国に広がり、地域と地域がつながり、地方間取引ができるようになることです。

text by
鳥取県米子市

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