【後編】ふるさと納税中国・四国サミットin鳥取県米子市

2018.06.18

鳥取県米子市

トラストバンクは鳥取県米子市と共催で、「ふるさと納税が地域にもたらす変革について」をテーマに「中国・四国サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えします。

坂井市寄附市民参画制度について
福井県坂井市総合政策部企画情報課 小玉悠太郎さん

坂井市は福井県の北部に位置する人口約9.2万人の市です。平成19年に三国町、丸岡町、春江町、坂井町の4町が合併して誕生しました。東尋坊や丸岡城などの観光資源があることでも有名です。また特産品は、発祥地であるコシヒカリをはじめ、北陸のブランド和牛「若狭牛」、ブランドミディトマト「越のルビー」、越前がに、甘エビ、花らっきょうなどなど数え切れないほどあります。

このような豊富な特産品がある中、坂井市は平成28年度まで返礼品一切無しでふるさと納税に取り組んできました。

平成20年のふるさと納税制度設立当初、坂井市がふるさと納税に対し持った意思は、「寄附を通じて、誇りを持って市民参画してほしい」という事でした。

この意思のもと、平成20年4月1日に坂井市寄附による市民参画条例を制定しました。寄附金の使い道に特化した制度であるため、平成28年度までお礼の品を出さずにふるさと納税に取り組んできました。

当条例の特徴は3つあり、1つ、「寄附金の使い道は市が決めるのではなく市民公募で決める」こと。2つ、「公募によって集まった使い道の中から市民が決める」こと。3つ、「それぞれ目標額に達した段階で事業化する」ことです。

公募する使い道に関して大枠を定め、その範囲で公募を行っています。具体的には、協働のまちづくりに関する事業、子どもの健全育成や教育に関する事業、環境対策に関する事業、文化財に関する事業、そして旧4町の地域の特色を活かす事業です。公募対象は市民、あるいは市内で活動しているNPO企業等で、昨年は高校生からも事業提案をいただきました。

公募により集まった事業の中から、検討委員会にて寄附金を集める事業を決定します。メンバーとなる市民代表は4名。PTA、商工会推薦枠など各分野の有識者が参加しています。

このようにして検討委員会で決定した事業に対して目標額を設定し寄附を募ります。今では坂井市を離れてしまった方や坂井市在住の方など、寄附をすることで「この事業が成長したのは、自分の力もある」と誇りを持って市政に参加してもらいたいと考えました。

これまで、「東尋坊での自殺防止活動支援」、「北陸三大祭の三国祭を存続させるための山車保全」、「Uターン就職者への奨学金返済支援」、「アートフェス創出事業」といった市民提案がありました。

行政だけで考えたのでは発議できないような提案がでてくるもの寄附市民参画制度の特徴と言えます。

平成20年から昨年度まで延べ4400万円の寄附金が集まりました。うち市民からの寄附の割合は20%です。残りの80%に関しても、血縁者が坂井にいる方や、かつて坂井市に住んでいたといった縁のある方が多いのが特徴です。

いただいた寄附金で実施した事業は、昨年度までで15個あります。たとえば、「地震時における児童の安全を確保するプロジェクト」では、地震が起きたときにガラスが飛散しないよう市内小学校の窓ガラスに飛散防止シートを貼り付けました。また丸岡城でおこなう古城まつりで使うからくり人形の修繕等にも寄附金を活用しました。

毎年最低1つは事業を行ってきましたが、返礼品なしで集まる寄附金には限界があるため、事業の規模やスケールが小さいのが寄附市民参画制度の課題でした。ふるさと納税でもっと寄附を集められたら、より夢のある事業ができるのではないか。ふるさと納税の担当になり、そう感じました。福井県の寄附額は全国で47位、46位の東京よりも少ないという事実があります。ふるさと納税で地域に元気を与えようと提唱した福井県が、都市部の東京より下である現状を目の当たりにしたのです。

そこで、坂井市は平成29年4月から返礼品を導入しました。導入目的は、より大きな夢のある事業をスピード感をもって実現することです。新規事業を公募すると、48の事業提案が集まり、29年4月から新たに寄附金を募る事業を決定しました。

今後は寄附市民参画制度をより好循環させることを目標に事業に取り組みたいです。

地域おこし協力隊×ふるさと納税のチカラ
山形県朝日町 まよひが企画 佐藤恒平さん

私は山形県の西村山郡朝日町から来ました。朝日町の主要産品はりんごとワインです。ふるさと納税の返礼品でもりんごとワインが主要な返礼品となっていて、リンゴ栽培は今年で130周年を迎えました。一番人気はワインで、国産ワインコンクールでも数々の賞を受賞しています。2016年に開催された伊勢志摩サミットで提供されたワインも朝日町のワインです。

そんな朝日町の人口は約7000人。山間地域で電車は通っていません。県庁所在地である山形市へのバスもなんと1日1往復しかありません。ただ独特な観光スポットとして空気を祀る空気神社があり、この場所で行われた結婚式は「ふるさとウェディングコンテスト」で総務大臣賞を取りました。

まちづくりの特徴としては、まちをまるごと博物館化するエコミュージアムという手法を取っており、これが30年近くも続いています。また最近、スポーツメーカーのミズノ株式会社さんと地域づくりでコラボし、町役場のユニホームなども提携で作っています。

私は、朝日町のまちづくり総合アドバイザーを担っているとともに、町の非公式PRキャラクター「桃色ウサヒ」の中の人をしております。もともと、地域おこし協力隊として朝日町にやってきて、朝日町で起業し、今に至ります。設立したのは、地域振興サポート会社、まよひが企画。全国の自治体の地域振興をお手伝いする会社で、朝日町だけではなく山形県内だけでも5市町村ほど受けています。

そこで今日は、「地域おこし協力隊のはじまり」「桃色ウサヒ(僕が入ってるきぐるみ)の活動紹介」「ふるさと納税担当への転向」「朝日町ふるさと納税の紹介」と順にお話ししたいと思います。

まず、地域おこし協力隊のはじまりですが、これは、当該自治体外に住む人に地域振興の業務を委託することができ、約3年間の給料と活動費を補助するという、2009年から始まった総務省の制度です。大学生のときに、ゆるキャラの研究をしていた私は、2010年に朝日町からスカウトされました。

そこから、情報交流推進員業務を委嘱され、着ぐるみを使った情報発信「桃色ウサヒプロジェクト」がスタートしました。

桃色ウサヒとは、朝日町の非公式PRキャラクターです。「非公式」の理由は公式のキャラクターにしてしまうと柔軟に動けないから。主な仕事は、まちの情報発信で、名前の由来はアサヒ+ウサギ=ウサヒ。ウサヒは他のゆるキャラに比べて、見た目に個性がなく、遊園地にいそうなのが特徴です。個性がないから、まちの人からすると「このウサギにPRを任せて大丈夫か?」「改善したほうがよくないか?」という不安な気持ちになる。

すると、「自分のアイデアで、何とかしなきゃ」とアイデアがでてくるんですよね。これが実は、まちおこしに重要な当事者意識につながります。だからウサヒは地域の人からアイデアをたくさん出してもらえるよう、わざと隙の多いデザインにしました。完成されたキャラクターの場合、新しい何かを付加するのは難しいですが、ウサヒはツッコミどころ満載でいくらでもカスタムできます。

さらには通常、着ぐるみの中の人はバラしませんが、ウサヒの中の人をはあえてバラしました。なぜなら、町民はお客さんではなく、大事な仕事仲間だから。町民の前では信頼の証として、たとえ子どもの前でも頭を取ります。

なぜ仕事仲間かと言うと、ウサヒの仕事は朝日町のPRですが、ウサヒがPRするのではなく、自分事として捉えた町民が媒介になっているからです。たとえば、ウサヒが投稿するTwitterやFacebookを町民がリツイートしたり、シェアしたり。そういう口コミがかなり大きく作用していますね。それは、朝日町を去っていった人たちにも情報が届きますし、桃色ウサヒの地域PRの根幹を支えています。

ウサヒの仕事のスタンスは、プロデューサーとなる町民の指示で面白いものは何でもやってみること。畑を耕したり海に入ったり、田植えをしたり。これらによって実証できたのは、まちをPRするアイデアを地域の人もそれなりに持っていることです。地域住民というプロデューサーがウサヒを通してアイデアを実現する、逆コンサル型のスタイルを桃色ウサヒのPRでは採用しています。この手法は想像以上にうまくいき、平成27年度には総務省のふるさとづくり大賞で総務大臣賞を受賞しました。

また、地域の人たちが面白いアイデアを出してくれるので、たびたびメディアに取り上げられ、自分たちの費用負担はゼロでのPRが実現。桃色ウサヒは、ゆるキャラとしてではなく、まちの人と一緒に無個性な人気キャラクターを育てる楽しい体験を通して、「自信」と「誇り」を醸成していくプロジェクトなのです。

さて、ここから次のステップのお話です。アイデアは引き出せても実現していくためには資金が必要です。そのためにどうすべきかを考えた結果、地域おこし協力隊の3年の任期を終えたあと起業し、ふるさと納税のお仕事をお手伝いする事業をすることになりました。朝日町からは業務委託で地域づくりのアドバイザーをという形で就任しふるさと納税をお手伝いすることになったのです。

2014年当初300万円程だった寄附を、2年間で2000万円まで伸ばしてほしいというのが町からの期待でした。
最初に取りかかったのはふるさと納税の方針づくりでした。朝日町は人口約7000人のまちなので、役場職員は100名ほどしかいません。ふるさと納税の担当はいても、その仕事だけをするわけではないため、責任の所在地をはっきりさせ、効率よく仕事を分担する必要がありました。だから、方針を作って誰が何をするのかを決めたのです。

具体的には3つ、返礼品の価格は3000円程度にすること、寄附後にの使途が見えるような広報をすること。そして、パッケージのデザインにこだわるというものでした。朝日町から送られる返礼品や封筒、お手紙などが、「朝日町から送られてきた」と一目で分かるよう、クリエイティブディレクターの籍を町内の政策推進課に置き、地域おこし協力隊の青木良太君に入ってもらいました。

青木君の加入により、ふるさと納税のパッケージ、封筒や冊子などをすべて統一されたデザインで制作されました。ちなみに町人に向けても、ふるさと納税でどんな活動をしているかを知ってもらうために、役場のロビーに展示を開始。こうした取り組みによって、昨年度(2016年度)は寄附金額が1億円を突破しました。

しかしながらこれは、デザインを良くしたことが成功要因だとは考えていません。
1億円を突破した要因は、デザインではなく体制作りだと思っています。2014年までの体制は広報に政策推進課、運営統括に総務課財政係、返礼品を考えてお返しするのが農林振興課・商工観光課がバラバラに動いており、うまく回っていませんでした。だから、広報を担当していた政策推進課に地域おこし協力隊入れ、今まで別々の部署にお願いしていたことを一手に引き受けることにしたのです。役場内の体制をリニューアルしたことが、朝日町ふるさと納税を劇的に変えました。

これが、僕が3年間でやってきたことです。役場の体制を変え、生産者の行動変容を起こし、デザインを変えた。わかりやすくして関われる人を増やすという意味で、実のところ手法はウサヒとまったく同じで、デザインをきっかけに関わってくれる人の意欲を高めていくというスタイルなのです。

現在はふるさと納税の全体運営からは手を離れ、寄附の使い道になれるような新しい事業を実験的に開拓している最中です。たとえば、小学校の授業で僕が先生になり、児童たちに特産品の販売を学んでもらう授業をしています(お仕事を考える授業〜移動販売車を作ろう〜)

また、農業とITをつなげる取り組みとして、田んぼの雑草を刈ってくれる水中の雑草取りロボットの開発に携わったり、農作業の効率化を図るためのアプリを開発するアイデアソンを開いたりしています。さらに2017年1月からは古民家をリノベーションしてゲストハウスをオープン。地域の人と旅人たちとの交流で、移住促進ができないかと考えています。

様々やっているように見えますが、やりたいのはシンプルで、ふるさと納税に新しい使途として寄附したくなるような取り組みを作っていくことです。あるニュースで、「ふるさと納税の返礼品は奪われたら奪い返す終わりなきレースだ」と表現されていました。厳しい表現ですが、限られた金額の中で競いあうレースだということに僕も概ね賛成です。ただし、奪い返すだけがレースの走り方ではないと思うのです。

レースは1位にならなくても、走り方を工夫すればファンを作れます。朝日町は自分のできる走り方を選んで走ったから今の成果があります。何をどうするかは自治体独自の戦略ですが、いずれにしても外部の人材を的確に配置することによって、レースの走り方は必ず工夫できる。それぞれの走り方にそれぞれのファンができ、それぞれのふるさと納税が楽しく進んでいくことを願っています。

ふるさと納税担当者のあるべき姿〜転換期を迎えて感じること〜
愛知県碧南市 坂本直敏さん

僕は今日、日本を変えにきました。ふるさと納税の過去と未来がテーマなので、ある経験を通して感じたことをお話したいと思います。

碧南市は、愛知県の南に位置する人口7万2000人の市です。白醤油発祥の地で、全国で開催されている「醤油サミット」の開催地にもなりました。また、にんじんとたまねぎの収穫量は県下トップクラスです。

ふるさと納税の実績としては、平成26年の9月から返礼品をスタートし、27年度が6億3000万円で件数が4万3000件、28年度が5億7000万円で3万4000件でした。27年度の寄附額は、愛知県で1位、東海3県で2位、全国55位です。クラウドファンディングを通して子宮頸がんの副反応者の治療費を集めたり、ふるさと納税東海サミットが碧南市で開かれたりしたこともありました。

そうして、寄附額が集まったことで、ふるさと納税は過大評価されました。少しあぐらをかいたような状況で体制が変わり、碧南市はふるさと納税で「寄附金額と件数を追う」という目標を立ててしまったのです。そこに、29年度から僕が配属されました。引き継ぎを受けるなかで、「ふるさと納税とは何なのか?」とものすごく疑問に思うようになりました。市民とも距離があり、よく言われるような「温かさ」もありません。

そんなとき、ある出来事を通してふるさと納税の大切さに気づきました。それは、返礼品で扱っている、100万円以上の寄附で、市内の遊園地や水族館など公共施設を貸し切り利用できる「ふるさと納税へきなん満喫スペシャルプラン」を実施したときのことです。

会社の福利厚生として企業の社長が寄附をして、社員を招待するような使い方を想定していたのですが、実際は、「児童養護施設の子どもたちに利用してもらいたい」と寄附されました。「僕の代わりに楽しんでもらってほしい」と。しかもこのプランはこれまで6件の寄附があったのですが、6件とも同じ使われ方をしていました。

この寄附を受けて、僕はプランニングに走りました。施設を探し、公共施設が休みの日での日程調整、雨天中止となった場合の延期日確保、ホテルのランチ会場の予約……。そこでふと気づいたのが、実施することが目的になっていたこと。寄附者の思いを感じていなかったし、そこで遊ぶ子どもたちの笑顔も想像していなかった。

気付いてからは、とにかく反省しました。今からでも自分に何かできないかを考え、児童擁護施設の方に普段子どもたちはどんなことをしているのか、児童養護施設とはどんな施設なのかなど、あらためて聞きました。すると、「小さなことでも、子どもたちにとっては大きな経験なんです」と言われました。

子どもたちは普段遊園地に行けません。しかも、18歳になったら施設を出ないといけない。社会にいきなり飛び込むことになるんですね。「普段皆さんが当たり前に思っている小さなことでも、この子たちにとっては特別な経験です。だから、本当にありがたいです」と言われました。

そこで、市内で活動するバルーンアートの団体に事情を説明して、ホテルでのランチの前にバルーンアートで楽しんでもらう仕掛けをすることにしたのです。バルーンアートの方も碧南市に擁護施設があったことを知らなかったし、どんな子どもたちが施設に入るのかも知りませんでした。一から說明をして、子どもたちに少しでも喜んでもらいたいことを伝えると、この回が終わった後に、「次もぜひやらせてください」と言っていただき、別の企画でもボランティアで参加してくださいました。

この体験を経て、僕はいくつか行動を起こし始めました。別の「へきなん満喫スペシャルプラン」の際、市の文化ホールで映画を上映することにしました。子どもたちに何か少しでも経験してもらいたい、少しでも喜んでもらいたいと思い、本物の映画館の様に映画チケットを作り配布しました。映画の受付にはスーパーにあるガチャガチャを置き、市のマスコットキャラクターのバッジを入れて、コインを渡して回してもらうことに。誰もが知っていると思うガチャガチャですら、半数の子どもはやり方が分かりませんでした。

これらを通して、ふるさと納税は人を動かすことを知りました。映画チケットも、施設運営者に僕の思いを伝えると「それならぜひやらせてください」と作ってくださったし、ガチャガチャも当日用意してくださいました。レストランも、通常貸し切りは1時間ですが、バルーンアートの時間も含めて数時間貸してくれたのです。子どもたちは、たくさん食事を食べ、とても喜んでくれました。

でも、一番心を動かされたのは僕でした。僕が自治体職員になったのは「地域のため」で、それを思い出したのです。自治体職員としてやるべきことは、地域の皆さんのために働くこと。ふるさと納税を何のためにするのか。市のPRももちろん目的のひとつだと思いますが、単にPRするだけならYouTubeでもできます。だけどそれで、地域の方が喜び、幸せになってくれるのでしょうか。やるべきは、自治体を知ってもらい、好きになってもらうことだと思います。

それを今、1番進めているのはトラストバンクだと思うんです。トラストバンクの方と話すと、皆さん必ず「地域のため」と言います。一方、自治体職員と話したときに、この言葉は出てこない。このことは、自治体職員として僕の中で葛藤もあるしトラストバンクへの嫉妬もあります。「地域のために」僕らはもっとやらないといけない。しがらみはもちろんあると思いますが、いかにそれを打破し、地域の人たちにアプローチしていくかを考えるのが大切ではないでしょうか。

ふるさと納税を間違った使い方をするのではなく、良い制度を、誰がどう使うかだと思っています。僕一人では日本を変えられないかもしれません。だけど、ふるさと納税と一緒なら日本を変えられるかもしれない。それにより、自分のまちも変えられると思っています。

みなさんは、ふるさと納税をどう使いますか?
みなさんにとって、ふるさと納税とは何ですか?

text by
鳥取県米子市

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