【前編】ふるさと納税中国・四国サミットin鳥取県米子市

2018.06.18

鳥取県米子市

トラストバンクは鳥取県米子市と共催で、「ふるさと納税が地域にもたらす変革について」をテーマに「中国・四国サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えします。

神戸大学経営学研究科准教授 保田隆明

ふるさと納税は、ゴールドラッシュ状態です。ゴールドラッシュで儲かったのは、金塊を取りに行った人ではなくて、ジーンズを作って売った人たち。ですから、ふるさと納税で返礼品を提供した事業者が一時的に潤い、自治体には何も残らない、ということも有り得ます。獲得した寄附金を何に活用して、いかに地域を発展させていくのか。もっと真剣に考えるべきです。バブル特需に沸くのではなく、持続性と発展性があるような、町の総合政策の策定と実現につなげて欲しいと思っています。

ぜひ、ふるさと納税の制度が存在するうちに、「地域の事業者の育成」と「地域の経済力の底上げ」を実施してください。返礼品市場は、地方の事業者を鍛える道場と捉え、この市場で鍛えて他でも戦える体力を作らないといけません。事業者のビジネス力、スキルの向上は、早急な課題だと考えています。

事業者のビジネス力・スキル向上のために

1、デザイン・SKUの変更

デザインが悪ければ、どんなに良い商品だったとしても売れません。もし、1軒の事業者で1人のデザイナーを雇うのが難しければ、町で専属契約をするのも一案でしょう。

SKUの変更とは、販売単位の変更を指します。たとえば、5000円の寄附で30匹のサンマを返礼品に選べるとしても、どこに住んでいる誰が30匹欲しいと思うでしょうか。ではどうするのか。美味しいのは間違いないのだから、販売単位が不都合のために選ばれない売り方をするのではなく、知恵を絞って選ばれる商品設計をする必要があるのです。

2、業態の変更と新商流の開拓

業態の変更例として、岩手県北上市のアパレルメーカーを例に挙げます。このメーカーは、カシミヤの衣料品を作って百貨店に卸すBtoB企業でした。しかし、品質は良いものの、OEMのため薄利であることを課題に抱えていました。そこで、自社ブランドを作って消費者に直接販売するBtoCを検討。返礼品市場に参入すると、消費者から良質なカシミヤブランドとして認知されるようになりました。

業態を変更したことで、Uターンで若者が戻ってくるなど雇用創出の効果もあったといいます。さらに、表参道に作ったアンテナショップの売上も増加。アンテナショップでサンプルを見て、返礼品を申し込む人が増え、オフラインtoオンライン(OtoO)が実現しました。現在、ブランドは確立しつつあるので、今後は自前販路の拡大と、アトリエ風の新工場設立を検討しているそうです。

3、新商品開発、新規事業開発、起業

新商品開発の事例として、鹿児島県大崎町のサザンクロスというレストランを例に挙げます。このレストランは、ふるさと納税の返礼品用に、地元の素材をふんだんに使った、カタラーナという冷凍プリンを開発しました。するとたちまち人気の返礼品になり、道の駅でも販売することになったそうです。

飲食店の限界は席数で、多店舗展開も簡単ではありません。だけど、道の駅や通販での売り上げは、その限界突破につながります。すると、そこで得た収益をさらなる新商品開発や新規事業などに充てることができ、地元の経済は循環するようになるでしょう。サザンクロスさんは、「ふるさと納税がなければ新商品を開発しなかった」と仰っていました。なぜなら、商圏が大崎町内だけだったら新商品を開発しても売れないから。それが、返礼品で全国が商圏になったことで大きなチャンスを得たのです。

返礼品市場での新商品開発は何度失敗しても大丈夫です。ふるさと納税は、地方の事業者に対して圧倒的に商圏を拡大させ、テストマーケティングの敷居を低下させたことが、最大の貢献だと思っています。この「お試し道場」は一大チャンス。自治体は、事業者の育成支援のための道場と位置付け、事業者は積極的に事業の改善と新事業に取り組むべきです。そこに、地域の金融機関がサポートに入れば、強力な地域の経済循環が生まれると考えています。

4、新業態への進出

新業態への進出事例は、群馬県中之条町です。ここは、高級旅館がある四万温泉地。一度高級旅館に来た人をリピーターにするために、グランピングの施設を2億円かけて作った事業者さんがいます。

中之条町は、ふるさと納税の返礼品に感謝券を出しており、実は感謝券の約7割が旅館で使われていました。これまで感謝券は近隣の人が買い物に使うのではないか、転売するのではないかと言われていましたが、蓋を開けてみたら、寄附者が遠方から来て旅館に泊まっていたんですね。そこで、その事業者さんは新業態への進出を決断されました。

ここでやってはいけないのは、バブルだからと身の丈を越えた投資をしてしまうこと。もし、20億円をかけて大規模な施設を作ってしまっていたら、取り返せないことになっていたでしょう。

自治体と事業者が連携し、未来に向けた次の一手を

経済成長は、資本+労働+技術革新で起こります。ふるさと納税は、資金を呼び込み、モノを売り込み、人を呼び込む手法。次にやるべきは、交流人口の増加につなげる取り組みで、お試し移住や観光が重要になってきます。

たとえば、北海道東川町には、ふるさと納税で寄附をした人は無料で泊まれる簡易宿泊施設があります。もともと役場の施設だった建物を改装したもので、4泊、5泊と長期滞在する人が多いそうです。また、高知県越智町では、地域おこし協力隊だった人が古民家をゲストハウスにして運営しています。こうした宿泊施設は1つ作れば十分。泊まった人がSNSや口コミで広めてくれるので、話題性によって人は訪れてくれるでしょう。

最後に、ふるさと納税の寄附金は使い道に高い注目が集まっています。住民の暮らしぶり向上に使えば、住民満足度は上がります。ですが、長い目で見れば地域が経済的に自立するための土台作りにも投資すべきでしょう。投資の観点では、地方が有利なクリーンエネルギーや水もいい。唯一の体験である観光に注力するのはもちろんのこと、さまざまな観点から地域の未来を見据え、ぜひ、自治体と事業者・生産者が連携した取り組みに期待しています。

鹿児島県志布志市 ふるさと納税推進室 大迫秀治

私からは、「ふるさと納税の過去〜未来」というテーマにちなみ、志布志市のふるさと納税のこれまでの取り組みと今後の展望について発表させていただきます。

ふるさと納税の理念について

「ここ志布志市は、青い海と緑の大地に恵まれた素晴らしいふるさとです。その昔、この地を訪れた天智天皇が、「志」篤き里人にいたく感激され、この地を「志布志」と命名されたと伝えられています。その「志」篤き里人の子孫である私たちは、先人が誇りを持って脈々と紡いできた「志」の心を志布志市の基本理念として、市民憲章にあらわすことにいたしました。『志』とは自ら生きる目標を心に決めて目指すことであり、人や地域のために尽くそうという心であります。ひいては世の中全体のために奉仕する心です。私たちは、先人が築いた歴史や文化を引き継ぎ、『高い目標や夢』と『慈愛の精神』を持ち、市民一人ひとりがそれぞれの役割を担い、行動を起こし、『志』あふれる志布志市を築いていくことを誓います。」

これは、本市の市民憲章の抜粋です。ここで明文化されているように「他者からいただいた真心への感謝の気持ち」を「志」としていかに形に表すかをふるさと納税の取り組みを通しても実践し、市名に違わぬ「志あふれるまち」の活動として展開していかなければなりません。

とても大仰で理想論のようにも聞こえてしまうかもしれませんが、「仮市役所の慰問」や「避難所での炊き出し」「保育園・保育所へのクリスマスプレゼントの贈呈」等の「熊本地震復興支援事業」を実現できたように、今後ふるさと納税の仕組みを活用して広く「志の事業」を市政として展開したいと思っています。


これまでの取り組み状況について

志布志市のふるさと納税の状況は、平成26年度は57件、513万円、27年度は3.4万件、7億5563万円。そして、28年度が9.9万件、22億4691万円で一気に伸びました。人気のお礼の品ランキングは、4位が果物(いちごなど)、3位が焼酎、野菜、米、2位が肉、1位がうなぎで、うなぎは54.2%を占めています。

具体的な取り組みとしては、平成27年から、志布志市の観光特産品協会に返礼品手配・発送を委託しました。目的は、より民間に近い視点で事業を推進することと、生産者に一番近い団体なので生産者の育成・支援を担えること。「ふるさと納税=物産振興」という位置づけで始めました。

最初は、観光特産品協会が品を仕入れて発送していましたが、事業を進めるうちに生産者から直接寄附者へ返礼品を送る仕組みが必要になり、専門指導部をつくって仕組みづくりをスタート。発送システムの導入やパソコンの設定など、細かいことから丁寧にサポートしながら、生産者さんを育成していきました。結果、ふるさと納税を通じて生産者同士が連携して商品発送のノウハウ共有や共同企画など、交流の機会が増えたと感じています。

27年9月には、アイデアはあっても知識が不足している部分に専門的な観点からアドバイスをもらい、その実現に向けた調整をするためにアドバイザーを登用。28年度からは、「ふるさと納税推進室」をつくって本格的に事業展開し、ふるさとチョイスのイベントへの出店や、先進自治体に話を聞きに行くなどしています。さらに、大手広告代理店と「メディアミックス委託契約」を結び、Web広告や新聞雑誌、駅看板などにも取り組みました。

しかし、その一貫で作成したPR動画の掲載が全国の皆さんやせっかく本市へ寄附を下さった方々に不快な思いをさせてしまったと同時に、地域の生産者さんや寄附者さんにご迷惑をかける結果となってしまいました。この反省を生かして、ソーシャルメディア審査会を設け、外部に出す映像はそこで審査する体制を築きました。

それに伴い、改めてふるさと納税の運営方針を設定しました。冒頭の市民憲章の「志」に関する明文も踏まえ、志布志の「志」を全国にお届けすること、全国の皆様の「志」をまちづくりに活用させていただくこと等、事業推進における基本理念や目的を明確にしたのです。

まだまだ手探りですが、ふるさと納税の本来的な趣旨が「税制を通じて都市部から地方へお金の流れを生むことによる地域の活性化にあること」を踏まえ、志布志市のふるさと納税の目標も単に寄附額を追うのではなく、いただいた寄附金の使い道や、活動成果を広く知っていただいた結果として、市の知名度やイメージが高くなるものでなくてはならないといった市内での議論とともに、各方策についても検討を重ねております。

戦略的に取り組むために、昨年から総務省・在京メディアの有識者やフードコーディネーター、お客様対応の専門家などにも参加いただいています。加えて、リスクマネジメントも実施。本市のふるさと納税は特に急激に伸びたため、あらゆるリスクをはらんでいる可能性があります。それを洗い出し、防止策や対応策を練っているところです。

これまでは、返礼品開発、お客様対応、広報宣伝、物産観光それぞれがバラバラに動いていたのですが、「チーム志布志」としての連携を強化しようとしています。週に一度、情報共有を行い、月に一度市長を交えた本部会、そして観光特産協会を含めた年二回の全体会を開き、目的がぶれない運営体制を作っているところです。

今後の展開について

今後の展開は3つあります。1つ目は生産者の「志」を明確に出すこと。たとえば米農家の「誇りと自信をもってつくったお米」という想いやこだわりを、商品と一緒に届けたいと思っています。

2つ目は、全国の皆様からの“志”にお答えしていくこと。寄附金の使い道を明示し、ふるさと納税の財源は何に使われているのかを整理して予算の特別会計化を目指します。クラウドファンディングへの参加や、志布志市に興味をもっていただいた方にファンになってもらうために、志民(志の市民)登録制度も検討しています。

3つ目は、観光振興及び定住促進への展開です。志布志市をふるさと納税で知った方からの声で、「実際に行ってみたい」というのが多くあるものの、なかなか応えられていないのが現状です。ですから、観光提案をしていきたいと考えています。

text by
鳥取県米子市

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