【後編】ふるさと納税九州サミットin大隅半島 ~地域ブランド力の向上~

2018.04.09

鹿児島県大隅半島

2017年9月22日(金)・23日(土)。トラストバンクは鹿児島県大隅半島の4市5町と共催で、ふるさと納税による「地域ブランド力の向上」をテーマに「九州サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えする「後編」です。


※前編はこちら

『売れる仕掛けづくり ~大隅半島4市5町の生産者アワード~』

大隅半島4市5町の生産者アワード。各地からノミネートされた商品から、書類審査を実施。審査を通過した商品9つの中からグランプリと準グランプリを決定します。

<ノミネート商品>
鹿屋市 有限会社出水田鮮魚の「無添加干物!季節の詰め合わせセット」
垂水市 宮下商店「宮下さんちのつらさげ芋」
曽於市 日本有機株式会社「薩摩黒鴨スモークセット」
志布志市 楠田淡水有限会社「楠田のうなぎ味噌」
大崎町 サザンクロス「シェフの魔法のアイスプリン」
東串良町 児玉醸造有限会社「しょうゆいろいろ8本セット」
錦江町 有限会社南九州きのこセンター「エノキのポタージュスープ」
南大隅町 株式会社サウスマックス「楽塩の焼塩と竹筒セット」
肝付町 高山CHOYAソーイング株式会社「鹿児島しゃつ」

審査員から事業者への質問
株式会社オフィス内田 代表取締役 内田勝規さん、
株式会社トラストバンク代表取締役 須永珠代
株式会社トラストバンク 田村悠揮
梶山商店 代表/aya100 代表 梶山剛さん
株式会社MY HONEY 取締役 麻田雄一さん

須永:宮下商店「宮下さんちのつらさげ芋」は、とても美味しくて驚いたのですが、ターゲットは誰を想像して作られたのでしょうか。

宮下商店:昔の人たちの知恵を復活させて作ったのが、つらさげ芋です。手間暇かかるため大量には作れないのが課題ですが、お子さんの離乳食や子どもたちのおやつにも、食物繊維もたっぷりなので女性の方に食べてもらいたいと思って作っています。

田村:他の方も、どんな人に食べてもらいたいと思って作ったのか教えてください。

出水田鮮魚:うちはもともと魚屋で、日持ちする加工品として干物を作り始めました。ターゲットは魚を食べなくなってきている、30代の子育て世代。若い人にも受け入れられるようなデザインを工夫し、塩分も抑えました。

日本有機:薩摩黒鴨のスモークを最初からカットし、子どもにも食べやすい味付けにすることで、家族みんなで気軽に楽しめるよう作りました。

楠田淡水:うなぎの養殖を30年やっているのですが、気軽に常温で持ち運びができて、安価に楽しめる商品をつくりたいと思ったのがきっかけでした。ウナギのイメージは蒲焼だと思いますが、うなぎ本来の美味しさを味わえるのは白焼きです。白焼きに味噌を乗せて食べる美味しさも提案したいと思いました。お土産やおつまみ、ご飯のお供など、全世代をターゲットに作っています。

サザンクロス:ふるさと納税がきっかけで開発した冷凍プリンです。いくつか種類があり、大崎町のクワ茶農家さんがつくる、クワの実を生かしたプリンも作っています。冷凍で保存でき、家族みんなで楽しめるプリンに仕上げました。

児玉醸造:県外の方に、鹿児島県の味を届けたいと思って作った商品です。和食離れで醤油の消費量は落ちていますが、和食を家庭で食べてもらう楽しさを感じてもらうために、カラフルな8本セットのギフトにしています。

南九州きのこセンター:ターゲットは働く女性、忙しい女性、家族のために頑張る女性のです。手軽にあたたかく、エノキの栄養をとってもらうために作りました。

サウスマックス:観光客にターゲットを絞り、1個1個手作りで作っています。

高山CHOYAソーイング:鹿児島の伝統工芸である大島紬を使った何かをつくれないか試行錯誤し、紬を使ったシャツを作りました。すべて紬を使うと高価になるので、部分的に縫い付けています。ターゲットは30代から50代の働く男性です。

グランプリ・準グランプリ決定!

グランプリ賞:有限会社出水田鮮魚の「無添加干物!季節の詰め合わせセット」
準グランプリ賞:垂水市 宮下商店「宮下さんちのつらさげ芋」

一番左が有限会社出水田鮮魚、右隣が宮下商店

一番左が有限会社出水田鮮魚、右隣が宮下商店

内田:どれも甲乙つけがたかったのですが、決め手になったのは見栄えです。今回たくさんの加工品を知り、鹿児島県の可能性を感じました。

いま、首都圏だけでなく、さまざまな場所でマーケットが縮小し、今まで揺るがないと思われていたことが崩れ始めています。その一つが百貨店業界。あちらこちらで百貨店が閉店・縮小するなど、業界は苦しんでいます。

先日、大学で講義をしたときに、「この1年間で、百貨店で買い物したことがある人」と問いかけると、誰も買い物をしていませんでした。そもそもインターネットがありますし、若い人は百貨店で買い物をしないんですよね。

同じような変化として、2030年には6000万人の外国人観光客が来ると言われています。たしかに、インバウンドは経済のひとつの原動力になると思いますが、本気で考えられているでしょうか。自分たちに都合の良い商売はなく、海外のスタンダードも理解しながら、いかに消費者視点で考えらえるかが重要です。

たとえば、東京のある百貨店で毎年開催されている北海道物産展は毎回人気なのに、鹿児島物産展はいまいちうまくいかないという事例がありました。北海道物産展が人気の理由は、取引先を毎回入れ替えたことで、毎回新しい売り場になっていたから。一方の、鹿児島物産展はずっと同じ取引先でした。どこで誰に売るのか、マーケットはどう捉えたらいいのかを考えなければ、いくら良いモノでも売れません。

インバウンドなら、どこの国のどんな人に何を提供したいのかを考える。国と国には国境がありますが、文化や情報の流れには国境はないので、消費者を意識した商品づくりと情報発信をすることで、売れるモノ作りをしてほしいと思っています。

ふるさと納税における生産者事例
1勝99敗人生 梶山商店代表、aya100代表 梶山剛さん

岩手県出身で、結婚を機に奥さんの地元である宮崎県綾町に移住。綾手づくりほんものセンターという地域直売所の店長を4年経験し、現在は梶山商店の代表をしています。

綾町は、自然を壊さない農業をやろうと、50年かけて有機栽培の土を作ってきた町です。このすばらしい自然と町を後世に伝えるべく、aya100というプロジェクトを立ち上げ、「100年後に綾の魅力を伝えるため」の活動をしています。

具体的には、それぞれに仕事を持つ人が有志で集まり、たとえば、農薬や除草剤を使わずにお米を作っているのに、安く売られてしまう課題を抱えていた農家さんとは、米粉を使ったカレー粉を開発。また、無農薬の生姜がなかなか売れないときには、ジンジャーパウダーを作りました。

商品を開発したら、恐れることなくどんどん情報発信し、自ら東京に行って売り歩く。東京のレストランで綾町の食材を使ったランチイベントを開催するなど、行動を起こすことでメディアにも取り上げられるようになりました。

ふるさと納税の返礼品も、少し傷がついてしまったような「わけあり野菜」を提供。わけあり野菜に共感いただいた方からの申し込みは、年間約3800件あります。これにより、農家の収入を増やすと同時に、農薬や除草剤を極力使用しない野菜をボリューム感重視で買いたい消費者ニーズに対応できていると思います。

私にできることは、綾町を知ってもらうこと。とにかく早く数多くの失敗を重ねることで、ゆるぎない1勝をたぐり寄せたい。100年後に綾町の魅力を伝えるために、動きながら修正して、1勝99敗人生を続けています。

最後に、aya100を立ち上げたときに作った動画をご覧ください。

この動画の中に出てくる生産者さんのうち、2人がもう亡くなってしまいました。だけど、映像で生き続けています。

人に頼るということ 株式会社MY HONEY 取締役 麻田雄一さん

マイハニーは蜂蜜の会社で、東ヨーロッパの伝統的なお土産である「ナッツのはちみつ漬け」などを作って販売しています。もともと、鳥取県で私の妻が一人で始めた会社ですが、今は表参道にもショップを設け、従業員数は60人、売上は8億円規模の会社になりました。売上のうち約5億円は、ナッツのはちみつ漬けが占めています。

現在は、カカオとはちみつで作ったチョコレートやシャンプーなどラインナップを増やしています。チョコレートを作ったのは、世界的にも砂糖を減らす運動が増えている中で、ほとんど砂糖で出来ているチョコレートを健康食品に変えたいと考えたから。50年後くらいに、「昔はチョコレートを砂糖で作っていたらしいよ」と言われるような世界になればいいなと思っています。

また、ライフスタイルのなかで、料理で使っている砂糖をはちみつに切り替えることを目指して、東京銀座の職人さんたちと一緒に、和食に砂糖を使わず、はちみつを使うムーブメントを起こそうと考えているところです。

私は、ブランドをつくるために必要なのは5つあると考えています。1つ目は、既存の商品と「戦わない」こと。難しいところで戦おうとしないのが一つの戦略です。2つ目は、ひとつのことに集中すること。最初からたくさんの商品をラインナップするのではなく、一つの商品に集中する。その商品で5億円、10億円規模の売上を作ろうと思えば、そもそも他のことをやっている暇はないと思うんですよね。ですから、一つのことに集中してやり続ける覚悟が重要だと考えています。

3つ目は、スピードを最優先にすること。実行までに時間がかかると、市場が変わってしまったり、他の人が先にやってしまったりという可能性は大いにあります。スモールスタートで、やりながら考えるのが大切だと思います。

そして4つ目は、人に頼ること。自分一人ですべてをこなそうとするのは時間もお金もかかります。それよりも、周りにいる人の知識やスキル、経験、人脈などに頼りながら、スピードを上げていく方がいい。いろんな人の意見を聞いていいモノをつくり、意見を聞きながらブラッシュアップを重ねつつ、スピーディーに売っていく。これが重要です。

最後は、とにかくかっこよく、可愛くすること。どれだけ良い商品だったとしても、パッケージやデザインが残念だと売れません。今や、商品説明を読む前に画像で判断される世の中なので、デザインにはお金をかけるべきだと思います。人に頼る勇気を持ち、人を巻き込むことがとても大切ですね。

text by
鹿児島県大隅半島

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