【後編】ふるさと納税東北サミットin天童市

2018.04.09

山形県天童市

2017年10月6日・7日。トラストバンクは山形県天童市と共催で、「ふるさと納税×地域の課題解決」をテーマに「東北サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えする「後編」です。


※前編はこちら

ピンチをチャンスに!ふるさと納税×コトによるファンづくり
弘前市広聴広報課 川口未央さん

青森県弘前市では、ふるさと納税で弘前を知ってもらい、来てもらうきっかけとして、弘前ならではのコトを提供し、他の自治体との差別化を図っています。

弘前市は生産量日本一のリンゴや、弘前公園の桜、弘前城が有名な場所です。しかし、城の石垣を修復するため、現在お城はありません。それにより観光客の大幅減少が懸念されていました。そこで、このピンチをチャンスに変えるため、工事期間しか見られない、体験できない事業を展開しました。

石垣の修理には34億円、10年がかかります。その財源は全額市から支払うのは困難のため、ふるさと納税に着目。平成26年に、ふるさと納税の特別コース「弘前城天守が動く!世紀の大修理~石垣普請応援コース~」を新設し、内堀特別内覧会を実施しました。

埋め立てた内堀を開放し、下から天守を見上げる体験は、とても人気に。さらに、「天守曳家体験」として、で天守を約77メートル移動させるイベントも実施。解体することなく、高さ14メートル、40トンの天守を70日間人力で移動させるイベントには、全国から407人が参加してくださいました。この取り組みは海外メディアにも取り上げられています。

そのほかにも、解体前の石垣に弘前の歴史を投影するプロジェクションマッピングや、石垣を積み上げる体験イベント、解体される石垣を見る体験も実施しました。

結果、弘前市の寄附額は平成25年度に320万円だったのが、平成26年度には4800万円に。もともと返礼品を設定していなかったので、多くの方が石垣工事に賛同いただいたことになります。今しか見られない、体験できないコトを提供することで、弘前城の価値の再認識、興味の情勢を構築できました。今後もさまざまな取り組みによって、弘前ファンをつくりたいと思っています。

寄附者ブロガー 亀山久美さん

私は、東京で暮らす弘前市出身者です。弘前城の体験イベントを偶然見つけ、親子で参加しました。普段、ふるさと納税の返礼品は食品を中心にいただいているので、体験型のイベントに参加するのは初めてでした。地元の方と会話をして、炎天下で汗をかいたこと、息子と記念写真を撮ってアイスクリームを食べたこと、地元なのに知らなかった弘前城の歴史を知ったことなど、本当に楽しい時間を過ごしました。

私のような、地方出身の都心在住者がふるさと納税を考えたとき、まずは、自分のふるさとを候補に入れると思うんです。そのとき、返礼品がたとえば弘前ならりんごやリンゴジュースだったら、それは普段から実家からたくさん送られてくるから要らないんですよね。

そういったモノよりも、地元に残っている親が元気に暮らしているかが分かるようなサービスや、空き家の見回りサービス、お墓のお掃除サービス、雪かきサービス、草むしり、買い物サービスなどが増えると嬉しいです。

【パネルディスカッション】ふるさと納税×地域の課題解決に向けた挑戦

北海道根室市 塩原康之さん
新潟県柏崎市 今井由衣さん
三重県玉城町 中野雄広さん
鹿児島県大崎町企画調整課商工観光係 竹原静史さん
山形県天童市 沼澤賢次さん
ファシリテーター:神戸大学経営学研究科准教授 保田隆明さん

保田:根室市は、地域課題の解決のために、15人の市民の方がふるさと納税の寄附金の使い道について検討する「未来会議」を発足しています。人選はどうされたのでしょうか?

塩原:推薦と、こちらからお声掛けした方で、30~40代の方が中心です。

保田:地方に行けばいくほど高齢化率が高いため、議会は高齢者の意見ばかり聞く傾向にあると思います。ですが、未来会議は30代40代が中心。意図的に集めたのでしょうか?

塩原:はい、意図的に集めました。とにかく、上がってくる課題の解決はスピード感が大事なので、意見をもらったらすぐに反映すべく行動しています。

保田:市民巻き込み型はとても大切な切り口ですね。一方、新潟県柏崎市は女性を全面に出した施策をされていて珍しいと思います。ターゲットとしては、都市部の女性にUIターンで来てもらいたいのか、それとも返礼品を選んでもらいたいのか、どちらでしょう?

今井:もちろん、移住定住は考えていますが、ふるさと納税の寄附から移住に結びつくのはハードルが高すぎるので、事業者さんにターゲットを意識した見せ方をしてもらうために、首都圏の女性に選ばれる商品づくりを考えてもらっています。

保田:都市部の女性に受け入れられるくらいセンスの高い商品を売る市であれば、地元の方の自尊心も高まりますよね。

今井:外からの評価を得てこそ、内部の人間が良さに気付くと思うので、そういう効果も期待しています。

保田:外からの評価といえば、大崎町の地元レストランが作った冷凍プリンは、返礼品で火が点いて、地元の方も買うようになりましたよね。

竹原:仰る通りです。ふるさと納税での販売額は突出しているので、今後は、他の販路開拓、拡大に力を入れたいと思っています。

保田:外部要因による活性化という観点では、天童市も5年前と今では、市民の方の「将棋の町」「フルーツの町」という認識は変わっているのでしょうか?

沼澤:市内のいたるところに将棋のモニュメントがあるので、昔から将棋は意識していたと思います。ただ、職人に目を向ける人や、将棋の町であることに誇りを持つ人は少なかったと思いますが、改めて自分たちのまちに誇りをもつ人は確実に増えてきていると思います。

保田:フルーツは高級なものが多いので、その質の高さを再認識した方は多いのではないですか?

沼澤:農家の方にとっても、改めて人気がある、自分たちの栽培に自信を持てるということにつながりましたし、ふるさと納税を始めてから外の人が「サクランボやラフランスなど、フルーツは天童市」と認識して、リピートされる方が増えました。

保田:課題は地域によって異なると思いますが、玉城町は三重県南部地域の13市町で広域連携の取り組みをされています。課題のすり合わせは難しいですか?

中野:三重県南部の移動手段は自動車しかないため、それが共通の課題です。ただ、連携して大きな取り組みをするには、それぞれの首長を巻き込む必要があり、そうなると難しい点も多々出てきます。客観的なアドバイザーとして、県に入ってもらうべく、声掛けをしているところです。

保田:シティプロモーションで連携し、知名度を上げる目的は何でしょうか。

中野:それは、住民と町のためです。玉城町は伊勢神宮との関わりがあるので、観光資源はあるんです。だけど、観光客は来ないですし、住民も観光地だと思っていない。この意識を変えるべく、「食」プロジェクトを立ち上げ、伊勢神宮に行って帰るのではなく、隣の玉城町にも寄ってもらえるような動機を作ろうとしています。

保田:そうはいっても、「わざわざ行かない」というのが多くの方の正直な意見だと思います。それでもシティプロモーションは必要だと思いますか?

中野:知名度が上がれば、地域の産品が売れる。すると、事業者や生産者の活力になり、市民が町を誇りに思うことにつながると思うので、シティプロモーションは必要だと考えています。

保田:その点、天童市はフルーツで知名度が上がったと思います。住民の方に変化はありましたか?

沼澤:まちへの誇りや生産者たちの自信にはつながっていると思います。

保田:ありがとうございます。柏崎市に伺います。柏崎市は原発があるので、他の自治体に比べると財政的余裕があると思います。ふるさと納税は何を目標にされているのでしょうか。

今井:柏崎市を継続して応援したい人、ファンを増やすことが一つの目標です。ただ、原発のイメージが強いので、違う軸を作るために模索中です。

保田:まちづくりの観点からは、玉城町が運営しているコミュニティバスは、まちづくりにも寄与していますか?

中野:していると思います。コミュニティバスは、予約した人の家を周って目的地に行くので、Aさんの家に行って、Bさん家に行ってと、バス内はどんどん人が増え、コミュニケーションが生まれています。

保田:大崎町では、うなぎの知名度が上がったことによる波及効果や、プロモーション効果はありましたか?

竹原:事業者さんの業績が確実に上がっていて、その利益を使ってシティプロモーションのお手伝いをしようという人も出始めています。結局、町のために頑張れば、まわりまわって自分に戻ってくることを、みんなが認識しているからだと思います。

保田:事業者の販路拡大は難しいと思いますが、各事業者が単独で頑張っているのか、それとも事業者同士が連携して取り組んでいるのでしょうか。

竹原:きっかけづくりは自治体で、その後は企業努力ですね。

保田:よく聞くのが「売上を伸ばす必要もないし、ネット通販もよく分からないからやらなくていい」という事業者の声です。大崎町でそういった声はあがらず、みんな喜んで販路拡大していますか?

竹原:忙しいことを嫌う住民性はありましたが、やらないよりも、やったほうが所得は上がって暮らしは良くなります。それを実感いただいています。

保田:根室市ではいかがですか?

塩原:通常国内で出回るさんまより、少し規格が小さいさんまを、自治体の支援でベトナムに輸出しています。輸出の手続きを行政がやり、事業者の販路拡大に貢献している形ですね。

保田:ありがとうございました。

高知県須崎市 元気創造課 元気創造係 有澤聡明さん、守時健さん

高知県須崎市 元気創造課 元気創造係 守時健さん

高知県須崎市 元気創造課 元気創造係 守時健さん

高知県須崎市は、人口2万2000人の市です。名物はB級グルメの鍋焼きラーメン。市の課題は、とにかくお金が無いことです。約1700自治体中1629位で、夕張市の次は須崎市と言われるくらい、財政状況はよくありません。

私たちが所属する元気創造係では、地域おこし協力隊、移住定住、ふるさと納税、マスコットキャラクターのしんじょう君事業をてがけています。しんじょう君は、2016年のゆるキャラグランプリで優勝し、テレビやイベントなど年間約150日も出演する人気キャラクター。グッズは約1000種類で、売上は年間数億円。ゆるキャラでつながったつながりを生かして、「ご当地キャラ祭りin須崎」というキャラクターイベントを開催したところ、約9万5000万人もの方にお越しいただけました。

そもそも、しんじょう君を作ったきっかけは、「町のための情報発信なら一人でもできる」と思ったからです。須崎市をアピールするにはとにかく情報を外に出していくことだと思い、SNSで発信を続けたところ、現在Twitterのフォロワーは2万7500人、facebookいいねは7250人、ブログの年間PVは100万PVになりました。

高知県須崎市 元気創造課 元気創造係 有澤聡明さん

高知県須崎市 元気創造課 元気創造係 有澤聡明さん

【しんじょう君×ふるさと納税】
ふるさと納税は、しんじょう君がPRしています。ブログやツイッターでPRし、ご当地キャラ祭りで関係者やファンの皆さんがSNSで拡散してくれるなどした結果、平成27年度は約6億円、平成28年度は約10億円の寄附が集まるようになりました。

寄附者の方はしんじょう君ファンが多いため、意思を持って須崎市にふるさと納税をしている方が多いのが特徴です。

【市民の夢×ふるさと納税】
須崎市には、「ACTすさき」という団体がいます。ACTすさきは、空き家を活用して地域貢献をしたいと考えていましたが、資金がなくてつまずいていました。そこで、地域の方が作っている野菜をふるさと納税の返礼品にして資金を作ることにしたのです。現在は、人口60人くらいの限界集落にゲストハウスをオープンしており、ここに昔ながらの日本の生活を体験したい外国人観光客が泊まりにくるようになりました。

また、地域の農家さんが作った野菜を無駄なく世の中に広めたい想いから、味は美味しいのに規格外だから捨てていた野菜を使う「農家レストラン」も作ろうとされています。ほかにも、ふるさと納税で「ぽんかんのオーナー制度」もやっており、寄附者からの応援メッセージをたくさんもらっています。そのメッセージを見た農家さんが、「農家を辞めようと思っていたけれど、もっと頑張ろう、続けよう」と言ってくれるなど、地域に活力が湧いています。

【安和地区の取り組み】
安和地区では、小学校と保育園の統廃合という大問題が出たため、地域の方が「集落活動センター」を設立しました。ただ、資金が無いのでふるさと納税の返礼品市場に参加し、活動資金を作られています。行政ではサポートが行き届かないお年寄りの見守りや防災活動、移住の取り組み、ウォーキングイベント、高齢者が集まる福祉部会、教育事業などに取り組まれています。地域が前向きに活動するきっかけを、ふるさと納税が与えてくれました。

【ふるさと納税の使い道】
須崎市では、いただいた寄附金の多くを「子どもの健全育成に関する事業」に使っています。第2子以降の保育料無料、中学校給食実現のための積立に加え、今後確実に縮小する人口対策として、海外需要対策や移住政策も考えています。特に、国内でインバウンド需要は伸びていますが、須崎市に外国人観光客はほぼ来ません。早急に施策を立案し、実行したいと考えています。

実は、須崎市はフランス・パリで開催されている「Japan Expo」に2年連続で参加しています。昨年は、しんじょう君と市内の事業者と一緒に参加したところ、しんじょう君にはフランス人のフォロワーが増え、事業者のブースは主催側から「過去7年間の最高記録だ」と驚かれるほど売り上げたのです。結果、パリ伊勢丹など多数の販路拡大につながり、「須崎の工芸品を特集したい」など、海外メディアからの取材依頼も来るようになりました。

15年前の須崎市は、財政状況が悪く、観光やまちづくりに投資できない「何もない町」でした。だけど、10年前にB級グルメの「鍋焼きラーメン」が誕生し、5年前には若いUターン者や地域おこし協力隊が地域を生かしたイベントをやるようになりました。そして今は、しんじょう君をきっかけに、さまざまな変化が起きています。

目指すのは、持続可能な町ではなく、発展し続ける町。地域の方、寄附者、しんじょう君のファン、移住者など、さまざまな人の総合力でシナジーを生み出し、発展し続ける須崎市を作っていきたいです。

text by
山形県天童市

この記事につけられたタグ

関連する記事