【前編】ふるさと納税東北サミットin天童市

2018.04.09

山形県天童市

2017年10月6日・7日。トラストバンクは山形県天童市と共催で、「ふるさと納税×地域の課題解決」をテーマに「東北サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えする「前編」です。

ふるさと納税による地域への経済効果と金融機関へのアンケート調査結果
神戸大学経営学研究科准教授 保田隆明さん

ふるさと納税には論点がたくさんあります。我々がやるべきは、ふるさと納税は効果があるんだというのを見せること。効果を見せられないなら、辞めるべきと考えています。そこでいうと、私は効果があると思っているので、続けるための研究をしています。

岩手県北上市は、産官金連携が進んでいて、北上信用金庫がふるさと納税を上手く活用している市です。お金がめぐればめぐるほど地域経済は発展するのですが、一方で、地方は金融機関にお金があまっていて、めぐっていない現状があります。しかも全国の金融機関は東京に進出している。

なぜか。それは、地方でお金を貸す人がいないからです。地方ほど、金融機関に眠らせている資産は膨大でしょう。ですから、ふるさと納税をきっかけに地域企業の生産活動が活発になれば、お金が必要になり、雇用が生まれ、給与が上昇し、地域内で消費が発生し、地域経済が循環すると考えています。

北上信用金庫は、積極的に返礼品を提供できる事業者を発掘して支援する金融機関です。あるお菓子屋さんに、「ふるさと納税の返礼品に出してみないか」と提案し、そのための運転資金を融資しています。これはとてもいい循環で、信用金庫からすれば新規の融資先開拓であり、事業者は新規販路の確保につながっているのです。

金融機関のアンケート結果報告

全国すべての信用組合、信用金庫、地銀の法人営業担当役員にアンケートを郵送しました。回収率は33.5%と非常に高かったです。その結果を報告します。

地域連携について
地域自治体と包括提携などの枠組み(産業活性や観光支援など)はありますか?
ある:70%
ない:30%

その包括提携の実態や中身が、ふるさと納税をきっかけにさらに充実した、活動が活発化した事実はありますか?
ある:5%
ない:85%
今後活性化しそう:10%

今後そのような包括提携の枠組みを作る意向や計画はありますか?
ある:8.5%
ふるさと納税を機にそういう話が出てきた:1.5%
ない:90%

地方創生の専門チームや窓口の明確化などを行っていますか?
いる:65%
いない:35%

その動きはふるさと納税の存在で加速や強化されましたか?
そう思う:2%
少しそう思う:6%
あまりそう思わない:49%
そう思わない:42%

治自体の地方版総合戦略の策定について、ふるさと納税はその中身の充実に寄与したと思いますか?
そう思う:3%
少しそう思う:40%
あまりそう思わない:36%
思わない:20%

多くの自治体では、主に地元の事業者から特産品などを買い上げて、それらを返礼品としてふるさと納税の寄附者に対して提供しています。それをどう思いますか?
地域内の事業者の収益には寄与しているが、ビジネス力の向上など地域の事業者の育成効果はない:42.2%
地域内の事業者の収益とビジネス力向上など地域の事業者の育成効果も有する:49.7%
地域内の事業者の創意工夫をそぎ落とすので、返礼品の買い上げは適切ではない:2.5%
その他:5.6%

一部自治体ではふるさと納税の返礼品提供事業者の発掘を地元の金融機関と一緒に行っている、あるいは、地元の金融機関が自治体に紹介しています、この事例にあてはまりますか?
当てはまる:3.7%
少し当てはまる:9.9%
あまり当てはまらない:36.4%
当てはまらない:50%

ふるさと納税の返礼品を提供している事業者より、資金繰りや融資の相談を受けたことがありますか?
ある:39%
ない:61%

ふるさと納税の返礼品を提供している事業者より、資金繰りや融資以外の事業相談を受けたことはありますか?
ある:31%
ない:59%

ふるさと納税は、地域の産官金連携を加速させると思いますか?
そう思う:3.3%
少しそう思う:42.6%
あまり思わない:46.9%
そう思わない:7.4%

ふるさと納税をきっかけとした起業・創業は地域内で見られますか?
見られる:1.3%
少し見られる:3.9%
あまり見られない:47.8%
見られない:49.1%

ふるさと納税は金融機関の預貸率の向上に寄与すると思いますか?
寄与する:0.8%
少し寄与する:12.4%
あまり寄与しない:57.8%
寄与しない:35.4%

ふるさと納税の返礼品を提供する事業者に対してどのような融資スタンスを持ちますか?
運転資本および設備投資資金を積極的に融資して支援していく方針:20.4%
運転資本を積極的に融資して支援していく方針:3.2%
国による規制度合いを見極めながら慎重かつ前向きに運転資本の融資の可能性を検討する方針:47.8%
ふるさと納税の制度が終了した場合の反動が懸念されるため融資には慎重な姿勢:1.9%
その他:26.8%

ふるさと納税をきっかけとして、地域内の事業者を新規開拓した事例はありますか?
ある:5.1%
ない:94.9%

ふるさと納税をきっかけとして、地域内の既存の取引先事業者への追加融資を実行した事例はありますか?
ある:7.3%
ない:92.7%

ふるさと納税をきっかけに返礼品を提供する地域事業者はスキル・力量が向上したあるいは今後期待できると思いますか?(5点満点)※抜粋
新商品開発への意欲:3.46
商品のデザイン力:3.31
地元での評価:3.30
顧客満足度向上:3.17
マーケティング力:3.03

ふるさと納税が地方創生に貢献すると思う度合いはどうお考えでしょうか?(5点満点)※抜粋
地域産品の域外での販売先の拡大:3.41
既存企業による新商品開発力や新規事業創造力:3.29
地域のブランディング・シティプロモーション:3.26
地域内での起業。創業促進:2.72
地域内におけるリスク性資金の供給量:2.68
域外からの移住者定住者の増加:2.44

これらの結果から、金融機関がふるさと納税をきっかけに融資を増やしていない理由は様子を見ているからであることが分かります。審査基準を変えているわけではなく、制度がなくなっても継続できるのかを見ているのです。

ふるさと納税をきっかけに、金融機関が販路拡大やビジネス開発、商品開発などについて積極的にアドバイス、支援している雰囲気はあまり見られません。ぜひ、金融機関はこれをビジネスチャンスに捉えて欲しい。自治体は、地元の金融機関に、北上信用金庫のような好事例を発信する必要があると思っています。

まちに担い手を育てる「ふるさと納税」シティプロモーションの発想から
東海大学文学部広報メディア学科 河井孝仁さん

まちの担い手とは誰か。人口が増加しなければ、地域持続は不可能なのだろうか。――大切なのは、どこに住んでいても自分たちを応援してくれている人をいかにして増やすかだと思います。観光だけに留まらない、支援・推奨意欲を持つ住民、関与人口を増やす必要があるのではないでしょうか。

そもそも、まちづくり活動をすることが、まちづくりへの参加ではありません。頑張っている人や、魅力的なものを伝えるだけでもいい。頑張っている人にありがとうと言うだけでもいい。そういう人たちが増えていけば、まちにとって重要な資源になるはずです。

また、まちの担い手は頭数ではありません。積極的にまちに関わろう、推奨しよう、感謝しようとする人の思いの量を増やしていくのが重要。ふるさと納税の仕組みで、それを増やせているでしょうか。まちの魅力を5つ以上挙げられる人がどれだけいるでしょうか。

人は、まちの資源になるために生きているわけではなく、自分の幸せのために生きています。だからこそ、自分にとって意味がある状況を作る必要があると思うのです。地域の魅力を語れる人は、自分は地域にとって意味がある存在だと思っている。そうした人を増やすためにも、魅力を積極的に伝え、語れる人を増やすのが重要です。

発信を強化すると、まちに対するプライドが生まれ、地域に関わろうとする意欲が高まり、地域の魅力が向上し、地域外からも参画したい人が増えていく。そうした、「熱を持ったしなやかな土台」をいかに作れるかが、シティプロモーションの肝となります。

そのための地域魅力創造サイクルは、魅力を発散させ、共有し、編集し、浸透し、評価する。そのときに、地域参画を増加させ、一緒にまちを考える人たちを増やしていく必要があると考えています。

・発散
魅力を引き出すために、まず、集めた人たちにまちの魅力を1人100個挙げてもらいます。人、コト、モノ、トコロ、仕事、過去、未来という7つの要素から何でもいいので挙げてもらうと、今まで当たり前だと思っていたまちも、見え方が変わってきます。

・共有
たくさん上がった魅力から、あまり重ならなかった魅力を体験して共有すると、「まちにはこんな魅力があったのか」とはじめて気付きます。その体験を家族や友人、SNSで共有していくと関与する人数はどんどん増えていきます。

・編集
ただ、魅力が見つかったからといって、それ単体でアピールしても何も起こりません。必要なのは、その魅力で幸せになれる人物のペルソナを明確にし、ストーリーを作ること。自分たちのまちは誰に共感されるのかを明確にしない限り、地域ブランドは作れません。

・浸透
ブランドメッセージができたら、次は浸透させることが必要となります。浸透のために必要なのが行動、メディア戦略です。活用できるのは、オウンドメディア(広報誌やWebメディア)、アーンドメディア(新聞記事、テレビニュース、口コミ)、ペイドメディア(広告)の3つ。これらを戦略的に組み合わせる必要があるのです。

たとえば、ふるさと納税はまちの外に打ち出しているけれど、町の人たちがどれだけふるさと納税の意義を理解しているでしょうか。自分たちの生活や幸せを支えてくれていると認識していますか? まずは、現状がどうなのかを多方面から傾聴してください。その上で、動かしたいターゲットは誰で、その人は普段どんなメディアを活用していて、どんなテーマに興味があるのかを明確にしてください。

また、認知獲得のためには、可視化と並行してターゲットの熱量を上げる必要があります。ニュースリリースやオウンドメディアで取り上げた内容がキャッチーであれば、アーンドメディアが動き出す。すると、熱量が上がっていく。アーンドメディアが動かないような情報を発信していても仕方がないんですよね。ドミナント:差別的優位性、トレンド:動向・傾向への連携、ギャップ:意図的逸脱、この3つで興味を引くことが大切です。

メディア戦略により「なんだか聞いたことがある」という状況を作れたら、人は動きやすくなります。そうなれば次は、彼ら彼女らを自分事化させてください。どのメディアでどの情報がターゲットに刺さるのかを考え発信します。

たとえば、生駒市PRシネアドは、大阪南の子育て世代だけに対して、自然豊かな町の、教育水準の高い環境で子育てができることを伝えた動画を、大阪南の映画館だけでCM放送しています。そして、狙った相手の心が動いたとき、どこで情報収集をすればいいのか困らないように、Webサイトへの誘導導線を用意しています。

ここまできたら次は、人をやる気にさせること。そのためのインセンティブ設計が必要です。ターゲットにとって「美味しい」こととは何でしょうか。それは、必ずしもモノ・カネではありません。人によっては、力が発揮できる場所、人と集まれる場所などがインセンティブになるでしょう。

生駒市の場合、自然菜食カフェでの食事や先輩ママとの交流会を開催し、それをインセンティブに行動を促進しています。人を動かし、人が関わり、地域のことを考え、マジになるメディア戦略活用。ぜひ各市町村で実施してみてください。


※後編はこちら

text by
山形県天童市

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