ふるさと納税サミットin東京

2018.04.06

東京都

2017年10月27日(金)。トラストバンク主催で「課題解決、これからのふるさと納税」をテーマに「東京サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えします。

ふるさと納税を活用したこれからの地域づくり トラストバンク 田村悠揮

ふるさと納税の市場は急激に拡大しています。ここで注目して欲しいのは、自治体と事業者、事業者と事業者、地域と寄附者、地域と地域といった、もともとつながっていなかった人たちとのつながりです。

このつながりを生かして、これから注力すべきは「地域のファンづくり」。地域のファンとは、継続して地域を応援し続けてくれる寄附者と、地元に愛着あふれる住民の方。ふるさと納税をきっかけに、地域の魅力に気付き始めている方を巻き込み、地域の魅力を再発見してもらうのが重要だと考えています。

継続して応援してくれる寄附者を作るには、返礼品が送られてきたときのインパクトや、感動を与えることと、自分の寄附が使われている実感を得てもらうことが大切です。そのためには、自治体がPRとコミュニケーションを担い、事業者・生産者が感動体験をつくる必要があります。魅力的な特産品は全国各地にあるので、記憶に残してもらうような仕掛けが重要になるのです。

それから、地域や特産品の魅力を伝えるだけでなく、地域が抱える課題も発信するのも大切です。本当に困っていることが分かれば、人は応援したくなるもの。定期的な情報発信をすれば、そのたびに寄附者は思い出すので、たとえば広報誌を郵送する、使い道を書いた手紙を送る、SNSを使った双方向のコミュニケーションを高頻度で行うなどの工夫が必要だと思います。

課題を伝えるために有効な手段のひとつが、ガバメントクラウドファンディング(以下:GCF)です。目的と課題を具体的に伝えて、純粋に共感した方から寄附を集められるので、地域ファンを醸成しやすいと思います。GCFでは、地域問題解決、社会問題解決、地域おこし協力隊の起業支援の3つのパターンで活用されています。

地域のファンをつくるために、プロ野球やサッカーのチームを想像すると分かりやすいと思います。たとえば、自分の好きなチームなら、好きな選手、チームの魅力と課題、昨日の試合結果、次の試合日程など、すらすらと言えるでしょう。それを自分の町に置き換えたとき、どうなのか。ぜひファンづくりのヒントにしてもらえると嬉しいです。

ふるさと納税による地域事業創出と地域開発 
神戸大学経営学研究科准教授 保田隆明さん

ふるさと納税は、返礼品を通じて地方の企業を育て、地域経済が発展するためにある制度だと思っています。しかし、使い方を間違ってしまうと、かつての炭鉱の町の衰退、世界遺産登録後に観光客が減ってしまう地域のように、栄枯衰退の入り口になる可能性を秘めています。だから、やるべきは、町の延命ではなく、蘇生からの完全復活です。

15年前まではインターネットで物を売買する社会ではありませんでした。でも今は、人口9000人の町でも、全国や世界へ自分たちの商品を届けることができます。ふるさと納税制度によって、地方にいる企業が自分たちの力で全国に商品を届けるチャンスを得ている。それができるのかできないのかで、ふるさと納税制度の真偽は問われるので、ふるさと納税をきっかけに変化した事業者の事例をもっとたくさん発信しなければいけないと思っています。

制度が存在するうちにやるべきは、地域の事業者の育成と、経済力の底上げです。ですから、返礼品で差別化をするのではなく、まちづくりで差別化をしないといけません。ふるさと納税の返礼品市場は地方の事業者を鍛える道場ととらえ、事業者の育成支援をしてください。そうすれば、いずれ地元経済が自立存続可能になり、まちづくりに必要な「カネ」と「ヒト」は循環するようになるでしょう。

以前、山梨県の富士吉田市の布団屋からこのような相談を受けました。

「返礼品を一度提供したら顧客との関係はそれっきり。どうすれば良いですか?」

私の提案の1つ目は、エントリー商材を開発することでした。一度布団を買った人が何度もお店に来るためには、枕やシーツなど布団の周辺商品を買いやすい値段で揃えることが大切です。2つ目は、10年後にまた布団を買ってもらえる関係を構築すること。売り切りモデルからの脱却ですね。3つ目は、他社と提携した布団屋から寝室事業への進出です。今までは富士吉田市の布団屋さんでしたが、ふるさと納税をきっかけに大きく飛躍するチャンスが生まれました。

最後に、ふるさと納税で成功している自治体は、すでに潜在顧客と販売網を持った存在です。それは企業にしてみると宝の山。今のうちに企業と連携し、交流人口の増加やまちづくりにつながる施策を考えるべきだと思っています。

パネルディスカッション「課題解決のための各市町のふるさと納税」

パネリスト:
埼玉県深谷市 福嶋 隆宏さん
静岡県西伊豆町 土屋 千春さん
高知県四万十町 高口 亨太さん

モデレーター:神戸大学経営学研究科准教授 保田 隆明さん

福嶋:深谷市は埼玉県北部に位置し、主要産業は農業で深谷ネギが有名な市です。ふるさと納税の取り組みとしては、寄附者の方にお礼品を選んでもらう人気投票の実施や、お礼品の魅力を高めるための事業者セミナーなどを開催。商品開発力を身につける、ノウハウを高めていく取り組みを続けた結果、平成28年度は20品、平成29年度は23品の新商品が生まれました。市としては、2年以上にわたり、地域資源の発掘と付加価値向上に取り組んでいます。

土屋:伊豆半島の西側中央にある西伊豆町は、宿泊・飲食・お土産・干物の卸売、小売などの観光業が盛んな町です。ふるさと納税は、プロジェクトチームを立ち上げており、現在23人の職員で取り組みを進めています。2017年10月からはGCFにも挑戦しており、「あわびとひらめの稚貝稚魚放流プロジェクト」を立ち上げました。若者の流出により漁業の衰退が課題のため、漁業関係者のやる気を掘り起こす、雇用を創出する、釣りに訪れる観光客を増やすことを目指しています。

高口:高知県四万十町は四万十川の中流に位置する、人口1万7000人の町です。主要産業は、農業と林業。ふるさと納税は、「ふるさと納税×関係人口」をテーマに取り組んでいます。関係人口とは、交流人口と定住人口の間に位置する人と定義し、2拠点生活をする方や、四万十町のイベントに何度も来てくれる方、リピートしてくれている寄附者を想定しています。

保田:ありがとうございます。まず土屋さんに質問です。23名のプロジェクトチームを発足されているとのことですが、それぞれに自分の仕事をやりながらプロジェクトに参加しているのだと思います。みなさんのモチベーションはいかがでしょうか。

土屋:立ち上げ当初の平成26年度は、すごく盛り上がって取り組んでいたと聞いています。現在は、年初にやりたいことをチームでディスカッションし、それぞれに行動している状態です。私は新商品開発や、既存商品の売上を伸ばすための施策などを考えていますね。

保田:それだけの人数を巻き込めるコツはあるのでしょうか。

土屋:プロジェクトにずっと関わっている職員を旗振り役として巻き込んでいます。

保田:深谷市でも同じような取り組みはありますか?

福嶋:昨年から、有志でプロジェクトチームを立ち上げました。そこからスピンアウトした女性チームもあり、イベントなど企画しています。

保田:深谷市は、花園インター付近に年間650万人の集客を見込んだアウトレットモールができると聞きました。商品開発力を磨いているのは、それも視野に入れているからでしょうか?

福嶋:もちろん視野に入れています。ただ、それはひとつのきっかけにすぎず、地域の産業力を高める取り組みを継続的に行いたいと考えています。

保田:地理的には東京まで2時間くらいなので、他の地方に比べると、販路の確保はそこまで苦労しないのかなと思います。そのぶん、商品開発に力を入れられるのでしょうか。

福嶋:たしかに、現在、販売先は確保していますが、将来のことを考えると付加価値を高めなければなりません。ですから、商品開発力を身につけるのは肝だと思っています。

保田:ありがとうございます。四万十町に伺います。ふるさと納税を通じて解決したい課題は何でしょうか。

高口:一番は、販路の拡大です。そこで、インターネットで商品を売れるようになるよう、事業者さん向けに「どのようなWebページを作ればユーザーの心に響くのか」などを学ぶWebセミナーを定期開催しています。

保田:研修プログラムは誰が作っているのですか?

高口:四万十町役場と外部の専門家で作っています。

保田:それは独自コンテンツですね、素晴らしいです。深谷市も事業者向けセミナーをされていますよね。

福嶋:外部の民間企業に入っていただき、「お礼品は箱を開けた瞬間が最大のプレゼンテーションである」ことや、魅力的な商品写真、ネーミングなどをテーマに、毎月セミナーを開催しています。今後は、より効果を高めるために個別のコンサルティングにも力を入れたいと考えています。

保田:集団学習から個別学習になるとしたら、その個別学習のコストは誰が負担するのでしょうか。

福嶋:深谷市が負担しています。参加希望事業者からエントリーを受け付け、その中から選抜しています。

保田:ありがとうございます。西伊豆町は漁業に関する課題解決のためにGCFのプロジェクトを立ち上げました。他にも課題はあると思いますが、なぜこの課題を選んだのか教えてもらえますか。

土屋:寄附者からの寄附金の使い道への意見で多いのが、「産業の発展に使って欲しい」という声。そこで、漁業の課題を解決しようと考えました。

保田:目的は、漁獲量の回復や漁業の衰退を止めることだと思いますが、GCFによって漁業に携わる人たちにスポットライトが当たり、自信回復につなげる効果も大きいのではないでしょうか。

土屋:そうですね。漁協が稚貝や稚魚を放流しても、すぐに漁獲量はあがりません。しかし、ふるさと納税で応援いただいた寄附金を使えば、いつもより多くの放流が見込めるため、関係者のやる気につながるのではないかと思っています。

保田:ありがとうございます。四万十町は金融機関との連携などは考えていますか?

高口:事業者は、人材不足・設備が不十分という課題を抱えているので、地域の金融機関と連携したいと考えています。

保田:町全体で事業者を育成しようとする意識が強いですね。深谷市も事業者参加型の取り組みが印象的ですが、住民も巻き込んだりしているのでしょうか。

福嶋:事業者さんが中心ですが、全国で商品を売るためには、外部の知見やノウハウが必要です。ですから、市内外を問わず、さまざまな方に関わっていただいています。

保田:交流人口を増やしたい自治体が多いなか、深谷市は外部の企業も巻き込みたいと考えている?

福嶋:そうですね。巻き込みたいです。産業の価値を高めるという目標に向かうためにふるさと納税を活用して、市内外に関係なく企業を巻き込んでいきたいです。

保田:最後に、西伊豆町は返礼品に感謝券をラインナップされています。2018年3月末で終了するという話もありますが、感謝券で地元の旅館に泊まってもらえるなら、関東圏からのお客さんを呼び込む効果はあると思います。実際、使用割合はいかがでしょうか?

土屋:ほとんどがホテルや民宿で使われています。感謝券があるから西伊豆町に来るきっかけを作れていますが、感謝券がなくなると観光客が減る可能性があり、ホテルの方も危惧されています。交流人口は年々減っているので、感謝券で歯止めを掛けたかったですね。

保田:感謝券が無くなったとしても、リピーターを作るための施策は考えていますか?

土屋:記憶に残るサービスが肝だと思うので、ホテルや民宿などには、より良いサービスを提供してもらうために工夫してもらっています。

保田:ありがとうございました。

ふるさと納税による課題解決 これからの展開 トラストバンク 代表取締役 須永珠代

ふるさと納税は、地域外の交流人口や関係人口を築ける制度だと思っています。もちろん、この制度だけで地域課題を解決できるとは思っていません。しかし、急激な人口減少と労働力人口減少に立ち向かうには、国や自治体、企業、NPO、個人など、様々な人の力が必要で、ふるさと納税はそのきっかけを作っていると思うのです。

今までつながっていなかった人々がつながり、シナジーやインパクトを生み出そうとしています。ぜひ一緒に、ふるさと納税をきっかけに起こっていることを広く発信し、より多くの人と連携できるような仕組みをつくっていきましょう。

今後注力したいと考えているのは、同じ課題を解決したい複数の自治体と一緒にプロジェクトを立ち上げること。複数の自治体が共同で1つのGCFのプロジェクトを立ち上げるようになればいいなと思っています。想いのあるところに人は集まり、行動は生まれます。ふるさと納税を活用して、地域課題を解決し、地域経済が循環する社会を作りましょう。

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東京都

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