【後編】ふるさと納税近畿サミットin三重県南部

2018.04.06

三重県南部地域

2017年9月8日(金)・9日(土)。トラストバンクは三重県南部13市町と共催で、「広域連携とふるさと納税から始まった取り組み」をテーマに「近畿サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えする「後編」です。


※前編はこちら

パネルディスカッション「課題解決のためのふるさと納税」

山形県天童市 総務部ふるさと納税推進室 主査:沼澤 賢次さん
北海道豊富町 総務課地域振興課 課長補佐兼係長:能登屋 将宏さん
三重県玉城町 産業振興課 主幹兼係長:中野 雄広さん
株式会社トラストバンク(派遣元:長崎県平戸市) 黒瀬 啓介さん
ファシリテーター神戸大学経営学研究科准教授・保田隆明さん

保田:課題解決のためのふるさと納税というテーマでお話を伺いたいと思います。まずは、平戸市の状況について教えてもらえますか。

黒瀬:平戸市は、いただいた寄附の使い道に重点を置いており、今は産業振興に注力して、ブランド化の取り組みを実施しています。

保田:ありがとうございます。天童市は将棋駒産業がかつて4億7千万円規模だったのが1億2千万円まで減り、ふるさと納税によって3億円まで回復しています。職人育成講座の受講生人数も回復したと聞いていますが、万が一、返礼品がなくなった場合、将棋駒の産業産出額は維持できると思いますか?

沼澤:いえ、現状は厳しいでしょうね。だから、「3月のライオン」とのコラボなど新しい取り組みを模索しているところです。

保田:将棋駒を彫るための技術習得までは、時間がかかるんですよね?

沼澤:10年かけてようやく彫れるようになります。育成講座の受講生は復活しましたが、後継者問題は、この先もずっと天童市の課題だと思います。

保田:ただ、将棋産業をコンテンツ産業に転換させつつありますよね。映画やアニメとコラボすることで将棋ファンが増え、将棋駒の需要が増えている。

沼澤:そもそも将棋は敷居が高いと思うのです。ルールも複雑なので、馴染みやすくするために、いろいろ企画しています。

保田:映画監督やデザイナー、俳優さんを巻き込んだ取り組みは、沼澤さんが主導しているのですか?

沼澤:そうですね。3月のライオンのコラボについては、広告代理店などを通し、メインで関わらさせていただいています。

保田:さまざまな取り組みによって将棋ファンは喜んでいるかもしれないけど、地域課題の解決や市民の暮らしは良くなっていない、などの声はありませんか?

沼澤:なくはないですね。すぐに目に見える効果があらわれるものではないので、例えば「ふるさと納税を使って目の前の道路をきれいにしてください」などの声は挙がっている状況です。

保田:なるほど。ありがとうございます。

保田:次は能登屋さんに伺います。豊富温泉によって医療面で全国の人の課題解決をされていると思います。一方で、地域の課題解決はいかがでしょう?

能登屋:豊富町の税収を、地域の課題解決に使い、ふるさと納税でいただいた寄附を、町外から来る方の温泉施設などに充てています。自分たちのことは自分たちの税収でやりくりし、全国からいただいた寄附は、全国で困っている方たちに還元している状況です。

保田:豊富町に行かなくても、温泉成分を活用した化粧水を作ったり、どこかの施設にお湯を届けたりするとビジネスが広がると思うのですが、いかがでしょう?

能登屋:すでに、濃縮温泉水や保湿クリームなどは返礼品を含め販売しています。ただ、湯治目的の場合、泉質6割、環境4割と言われているんです。ですから、やっぱり豊富町に来てもらうのが一番いいんですよね。

保田:北海道だけで食べられるお菓子やお酒があるのと同じような地域ブランディングですね。ありがとうございます。その点、平戸市の場合は海産物や歴史的遺産、観光ビジネスがもともとあったと思いますが、ふるさと納税をきっかけにした変化は見られますか?

黒瀬:もちろん大いにあります。平戸市がラッキーだったのは、メディアに多数取り上げられたこと。それにより、市民が町に誇りを持てたと思います。それから、もともと平戸市がターゲットにできていたのは、予算上、九州が限界でした。だけど、ふるさと納税によって関東圏までターゲットにでき、施策の幅は増えています。

保田:なるほど。天童市は将棋産業があり、豊富町は温泉があり、平戸市は観光資源を持っています。では、玉城町はどうでしょうか?

中野:三重県も伊勢神宮があり、歴史的な遺産もあるのですが、交通弱者なんです。行きづらい場所にあるから、PRが難しいのが課題です。

保田:三重県南部地域の13市町が連携したのは、それも要因ですか?

中野:そうですね。伊勢志摩地域だけでなく、その周辺が一体にならないと知名度や認知度が上がりません。知名度を上げるきっかけづくりのためでもあります。

保田:ありがとうございます。今後もそれぞれ課題解決に取り組まれると思います。どんなことに取り組まれるのか、教えていただけますか?

沼澤:子育て支援と移住定住は地方にとっては避けられない課題だと思います。そのほか、ふるさと納税は市外の方向けで、例えばコラボ企画を立てても市民の方は恩恵を受けません。こういった企画が市民にも還元できるような施策も実行したいと考えています。

能登屋:豊富町は酪農の町です。しかし、人口減少と後継者不足で農家数が減っているのが現状。どうにか生産量をあげて全国に届けられるよう、後継者を増やし、酪農を守っていくのが課題ですね。基幹産業は一次産業なので、そこを守る施策を打ちたいです。

黒瀬:平戸市は、創業支援、産業振興を重点的にやっています。この1年間で24社が起業しているのですが、なかでもふるさと納税を活用した支援で起業したのは13社あります。町の未来につながる投資をしないと意味が無いので、起業したら終わりではなく、その先も支援できるような仕組みをつくるのが課題です。

【後半】パネルディスカッション「広域連携の可能性」

高知県四万十町 にぎわい創出課 主査 高口亨太さん
沖縄県東村 総務財政課 課長補佐 又吉一樹さん
沖縄県沖縄市 株式会社ラクセスイノベーション 新垣司さん
岩手県西和賀町 ふるさと振興課 地域おこし協力隊 藤原朝子さん
一般財団法人北上観光コンベンション協会 きたかみチョイス プロジェクトリーダー 登内芳也さん
三重県玉城町 産業振興課 主幹兼係長:中野 雄広さん
ファシリテーター神戸大学経営学研究科准教授・保田隆明さん

保田:まずは、北上市と西和賀町の取り組みから教えてください。

登内:中小企業や小規模事業者を支援するのが一番のテーマです。そこで、岩手県内の6自治体の事業者に登壇してもらうアワードを開催しました。

藤原:私は3年前にUターンで地域おこし協力隊として西和賀町に戻りました。登内さんからお声がけいただいて、アワードに参加しました。

保田:アワードの審査基準はどこに設定されていますか?

登内:事業者さんの仕事に対するこだわりや思いです。モノや会社の宣伝ではなく、思いを持った人にフォーカスを当てています。

保田:そもそも、北上市と西和賀町は昔から協働の取り組みがあったのでしょうか?

登内:西和賀町にダムができたとき、そこに住んでいた人が数千人北上市に移り住むということがありました。ですから、昔から縁故関係が多いので、自然とイベントや取り組みは一緒にやることが多かったです。

保田:アワードは6自治体が参加したとのことですが、岩手県内の他の自治体にも声をかけたのでしょうか?

登内:岩手県内22自体に声をかけて、参加したのが6自治体でした。自治体と事業者の関係構築ができていないと難しいのですが、今後もっと増やしていきたいです。

保田:この取り組みから、どう発展させていきますか?

登内:そもそも、アワードを立ち上げたきっかけは、自治体を表彰する「ふるさとチョイスアワード」でした。私は、自治体ではなく、事業者が発表する場を作りたいと思ったんですよね。北上市も返礼品をはじめて4年目になりますが、どんなに美味しい野菜セットを送っても、1年経てば、寄附者の方はどこから送られた野菜なのか、きっと覚えていないと思うんです。それをどうにかしたいと思って、事業者の人にフォーカスしたアワードを企画しました。

保田:ありがとうございます。

保田:沖縄県東村はいかがでしょう。

又吉:沖縄県東村は、本島の北に位置する村です。近隣3村が国立公園に指定されたため、来年の世界自然遺産指定を目指しています。ふるさと納税を活用して、観光ガイドや自然保護の整備などに活用できないかを考えているところです。

保田:世界自然遺産の活動をする課とふるさと納税の課は別だと思います。しかも、3村が協力するとなると、巻き込む人がとても多いのではないでしょうか。

又吉:その通りです。それぞれに調整が必要ですね。

保田:三重県はPR、岩手県は事業者のつながり、沖縄は世界遺産で連携されています。四万十町は何を基点に連携するイメージでしょうか。

高口:高知県四万十町は、県内5市町村で広域連携を始めました。今は13市町が参加しています。観光を基点に連携すべくツアーの打ち合わせはしていますが、良いコンセプトがなかなか見つからない状態です。連携して何を提供するツアーなのか、共通項を生み出せないでいますね。

中野:観光ガイドに載っていないスポットを紹介するツアーがいいと思います。呼ぶ人を寄附者に限定すれば、自分の町や隣町を知ってもらうきっかけになる。実際、三重県南部の13市町連携ツアーでは、地元の人しか行かないような場所も盛り込みました。事業者さんを訪問して話を聞いたのは、かなり好評でしたね。

保田:ちなみに、北上市は他の自治体と返礼品で連携を組む話はないですか?

登内:そもそも私が北上市に行ったのは、311による沿岸部の復興支援でした。そこで、小規模事業者の流通が成り立たなくなり、モノが作れない現状を見ました。そこからようやく作れるようになっても、販路が無くなってしまったことで、発展性がなかった。そんなときにできたのが、ふるさと納税制度だったのです。だから、北上市だけではなく、沿岸部を含めて広く連携して活動したいと思っています。

保田:ありがとうございます。その点、沖縄県東村は世界遺産登録という特殊要因での連携です。返礼品での連携はいかがでしょう?

又吉:東村の返礼品は、パイナップルとマンゴーに偏っているんです。これらは季節ものなので、収穫時期以外は、そもそも寄附がないんですよね。ですから、他の町村と補いながら、通年の返礼品を持つのは良いアイデアだと思いました。

保田:観光面での連携はどうですか?

又吉:隣村と観光での連携が進んでいます。観光ガイドも出版していますし、民泊も受け入れています。東村で受け入れられる民泊は、年間約1万人。それ以上は受け入れられないので、近隣の村にお願いするなど、連携は進んでいます。

保田:観光観点で行くと、三重県南部13市町は一つひとつの町が埋没してしまうのではないかと思うのですが、そこはいかがですか?

中野:それはあります。ですから個別対応をして、各市町の担当者の顔を覚えてもらえるような努力はしています。

保田:三重県南部ストリートみたいなのがあって、そこに13市町が出店していたら面白いですね。

中野:そうですね(笑)最終的には三重県全体が一つになりたいと思っています。そのためにも、定期的にイベントの相談や勉強会などを各市町で開催しています。まずは職員同士の交流を深めるために、各地の美味しいモノを食べて、知ることから始めています。

保田:最後に、広域の課題を解決するために、自治体の連携連合の可能性について、それぞれ考えをお話しいただけますか。

登内:北上市のアワードに出られた方のほとんどが起業して3年くらいの方です。規模は大きくても10人程度。ですから、事業者の支援は金融面もセットになるので、地域全体を連携させています。

又吉:東村は過疎化で路線バスが1日3便しか通っていません。そこで、ふるさと納税を活用してコミュニティバスを導入しました。これからそのバスで近隣の村もカバーし、本数も増やそうとしているので、広域で住民に喜ばれるサービスを展開したいですね。

中野:玉城町にも乗り合いバスがあります。交通の便が悪く、車社会の町なうえに、高齢者が多い。そこで、家に引きこもらず外に出られるように、予約をして乗れるバスを走らせています。このバスは、今後ふるさと納税で寄附してくれた方も乗れるようにしたいと考えています。

高口:高知県は、各事業者のリアルの販売は強くても、通販になると非常に弱いのが特長です。その課題を解決するためにも、広域連携は可能性があると思っています。いま四万十町では、事業者を対象としたEC勉強会や、リピーターを作るための勉強会などを開催しているので、ぜひそれを他の自治体にも広げていきたいですね。

text by
三重県南部地域

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