【前編】ふるさと納税近畿サミットin三重県南部

2018.04.06

三重県南部地域

2017年9月8日(金)・9日(土)。トラストバンクは三重県南部13市町と共催で、「広域連携とふるさと納税から始まった取り組み」をテーマに「近畿サミット」を開催しました。先進自治体による取り組み紹介の様子をお伝えする「前編」です。

ふるさと納税の最新動向と広域連携の可能性 トラストバンク 代表取締役 須永珠代

ふるさと納税は、地域を活性化させるために有効な一つのツールです。もちろん、これから人口が急激に減少する社会ですから、ふるさと納税だけではどうにもなりません。活用の仕方によっては、大きな威力を発揮する可能性があると思っています。

今後のふるさと納税で重要なのは、ファンづくりです。一度ふるさと納税をした人は翌年もする確率が高いでしょう。ただ、「お肉が欲しい」という動機でふるさと納税をした方は、翌年も「そのとき欲しい返礼品」をもらえる自治体に寄附する可能性が高いと思います。だからこそ、次につながるファンづくりが大切だと考えています。

また、ふるさと納税によって全国の事業者たちにも変化が起きています。たとえば、島根県浜田市では、事業者連携会が発足して販路を拡大。鹿児島県大崎町も、ふるさと納税をきっかけに初めて地域の事業者が集まり、自分たちで企画したイベントの開催や、新商品の開発に取り組んでいます。

事業者がふるさと納税をテストマーケティングのツールとして使うケースも増えていて、新商品を返礼品として出し、人気が出なかったらやめる、人気が出たら設備投資するなどの流れが生まれているのは嬉しく思っています。

今回のサミット開催地である三重県南部の13市町は、ふるさと納税をきっかけに3年前から広域連携が始まった地域です。同じように、広域連携としては、災害時に被災地以外の自治体が被災自治体の代わりに寄附を集める取り組みが生まれたり、鹿児島県の大隅半島が連携して事業者同士のつながりができたりなど、ふるさと納税をきっかけにさまざまな動きがあります。

急激な人口減少はすでに始まっています。もう、首都圏のヒト・モノ・お金を流動させるだけでは立ち行かない現状があるいま、広域連携で海外を視野に入れた取り組みができたら、そこには大きな可能性があると思います。

「広域連携の可能性について」三重県玉城町 中野 雄広さん

三重県南部では、玉城町をはじめ13市町が連携して、ふるさと納税を活用したPR活動を始め、今年で3年目になります。平成27年からガイドブックを作るなど10市町からスタートし、翌年には13市町が連携するようになりました。

昨年は、ふるさと納税をしてくださった方を抽選で、「南部まるごと体験体感ツアー」というイベントにご招待しました。2つのコースに分かれて、「寄附した町は、こういう町だ」というのを伝えるためのツアーを実施したのですが、宿泊費も交通費も、寄附者の実費でした。そんな条件で本当に来てくれるのか心配でしたが、応募数は想像をはるかに越えており、当日は私たちもバスの中や行く先々でおもてなしをして回りました。

広域連携をするメリットは、自分の町を知ってもらう機会が増えることに尽きると思います。たとえば、玉城町単独だと時間も予算も限られますが、広域連携なら、知ってもらうきっかけが増える。それに、担当者同士の情報交換ができますし、同じ目的で取り組むから絆も生まれるんです。いまのところ、デメリットはほとんど感じていません。

ただ、三重県南部の知名度は低いので、いかにして観光客を増やしていくか、移住定住のきっかけにつなげていくかは大きな課題です。市町だけでなく、事業者や県とも連携しながら、地域が本当に活性化するように取り組みたいと考えています。

「奇跡の温泉で人々を癒す」北海道豊富町 能登屋 将宏さん

北海道豊富町は、人口が4000人を切ってしまった稚内市に近い北の町。サロベツ湿原や広大な牧場、最北の温泉郷・豊富温泉があるのどかな地域です。

なかでも今回お話ししたいのは、豊富温泉です。この温泉は、油分をたくさん含んでおり、大正15年に石油掘削の際に噴出しました。当時は、「やけどによく効く温泉」としてロシアからも湯治に来る方が多く、25年前から乾癬の方、10年前からアトピーの方が多くいらっしゃるようになり、今では年間6000人という人口より多い湯治客が訪れています。

湯治なので、平均滞在は2~3週間。アトピーで日常生活が送れなくなったような酷い症状の方が湯治に来られ、きれいな皮膚を取り戻すケースがとても多いため、「命を救ってくれた温泉」として移住者も増えています。ただ、豊富町は過疎地なので、湯治客が増加するに伴い、受け入れ態勢の情弱さが露呈しています。施設の老朽化も目立ち、豊富町の財源だけでやっていくのは困難で、現在はふるさと納税でいただいた寄附金の半分を活用しています。

豊富温泉と同じ泉質は日本では他になく、世界でもあと1か所しかないと言われています。ですから、これは豊富町だけの財産ではなく、日本の財産。全国からいただいた寄附を、全国で困っている方のために使おうと考えました。

平成26年には、寄附金200万円を充てて湯治宿泊施設の備品を購入、27年度は90万円を充ててシンポジウムを開催。28年には2010万円を充てて、湯治の総合案内所であるコンシェルジュデスクの運営、相談を充実させました。さらに、雇用創出と人材育成にも670万円を充てています。また、2016年7月から、医療機関を経由して豊富温泉に来た場合、交通費を含めた費用が医療費控除の対象になる温泉利用型健康増進施設に認定され、その施設整備費にも充当いたしました。

ほかにも、小中高校生を対象にした、湯治体験ツアーも開催。協定を結んでいる東京都港区の銭湯5カ所で、豊富温泉を体験できるイベントも実施しました。

今後は、受け入れ態勢と広報活動に注力していきたいと考えています。目指すは、記憶に残る豊富町。豊富温泉の効能によって、皮膚疾患で悩んでいる方の苦悩が少しでも緩和されたら嬉しいですね。

「伝統工芸の復興に向けて」山形県天童市 沼澤 賢次さん

天童市は、江戸時代から続く伝統工芸「将棋駒」の産地で、国内シェアは90%以上を誇ります。しかし、後継者が不足し、このままでは衰退する可能性が高いことを課題に抱えていました。特に、ふるさと納税をはじめる前は、将棋人口そのものが減り、新たな職人の担い手も減り、高齢化も進んでいました。ですから、ふるさと納税の寄附金は将棋駒産業の復興に活用しています。

ふるさと納税を活用するにしても、将棋駒単品での改革は難しいため、寄附してくれた方に、名前を彫った将棋駒のストラップを返礼品のおまけでつけて送ることに。すると、このおまけを気に入ってリピートする方が増えたのです。加えて、将棋駒を直接購入する人も増加。ピーク時、将棋駒の産業規模は約4億7000円、ふるさと納税を始める前までは約1億2千万円に冷え込んでいましたが、今では3億円までに回復しました。

一時は、ストラップの生産が追い付かないため、受付を休止することも。次の一手として、「3月のライオン」とのタイアップを企画しました。グッズを作って返礼品に加えたほか、波及効果として観光客が増加し、寄附者のリピーターも増えています。

また、平成28年にはは著名なデザイナーとコラボした、新しい飾り駒の制作も開始。つい先日完成し、返礼品にも掲載されています。世界的なデザイナーにお願いすることで、将棋文化の普及を世界へも普及することを目指し、今後も幅広い取り組みをしたいと考えています。


※後編はこちら

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