無いものは作ればいい。夕張はベンチャーシティだ!

2017.04.02

北海道夕張市

転勤がきっかけで、家族で夕張に移り住み、本業と並行して「ゆうばり再生市民会議」の代表を務める澤井俊和さん。「夕張はベンチャーシティだ」と語る澤井さんから見た夕張とは。お話を伺いました。

先行しすぎた破綻のイメージ

僕が夕張に来たのは2006年。ちょうど、夕張が破綻した年ですね。理由は転勤でした。転勤が決まったとき、正直に言うと「え、破綻した市で子育てするのか……イヤだな」ってね、やっぱり思いましたよ。

でも夕張に来てわかったことがあります。それは、破綻という暗く寂しいイメージがいかに先行しているかということ。僕は北海道出身なので、破綻していないのに夕張より寂しく不便で高齢化が進んだ、北海道の田舎まちをたくさん知っています(笑)。

ただ、ネガティブなイメージが全国に広がったことで、破綻直後、地元の人は夕張出身であることを言えなかったそうです。子供たちは特に顕著で、はずかしくて夕張出身であることを隠していたと聞きました。

そんな話を最初に聞いていたので、夕張に来てからは、あえて夕張に住んでいることをポジティブに話すようにしました。親がポジティブだと子どもにも伝播するんですよね。今ではすっかり家族で夕張が大好きです。

夕張市の名所「千鳥ヶ滝」

夕張市の名所「千鳥ヶ滝」

ゆうばり再生市民会議への参加

僕は今、「ゆうばり再生市民会議」の代表をしています。この団体は、もともとは前任の藤倉市長が立ち上げたボランティア。だから、藤倉市長が任期満了で退任されたとき、ゆうばり再生市民会議も解散しては? という話がありました。

だけど、みんなが一生懸命に取り組んできた足跡が残っていて、「二度と破綻してはいけない、自分たちでどうにかしないといけない」という強い想いがあった。そこで、なくすのではなく、行政から独立した団体として継続させることにしたのです。

活動は、主に福祉と資源、環境の3つの観点から行っています。たとえば福祉の場合、一人暮らしのお年寄りが増えていることが課題の一つ。もともと、お子さんが巣立ち、ご夫婦だけで生活している人が多かったのですが、破綻後は若い家族が市外に出て行き、お年寄りだけが残ったケースが増えました。

高齢化が進み、人口も減っているなか、一人暮らしのお年寄りが家で具合が悪くなって倒れたらどうするのか。学者や専門家との勉強会や視察などから、解決策を模索している最中です。

夕張再生市民会議 代表 澤井俊和

夕張再生市民会議 代表 澤井俊和

団体の活動のなかで、僕が特に力を入れたのは、子どもたちに夢と刺激を与える取り組み。JAXAと一緒に、ロケットを作って飛ばしたり、ラジオを作ったりする「コズミックカレッジ」という体験型の学習会を開催しています。

ヒントにしているのは、赤平市にある植松電機さんのイベント。それに親子で参加してヒントをもらい、学習会を実施するときは植松電機さんにも手伝ってもらっています。

今は年に1回しか開催できていませんが、子どもたちが毎年「次は何ができるんだろう」と楽しみにしてくれているので、もっと回数を増やせたらいいなと思っています。

いまある魅力を組み合わせたい

個人的には、「高校の魅力化」の一つのアイデアとして、夕張高校の普通科に、校長裁量で映像コースを作れたらおもしろいなあと思っています。

夕張には、27回続けている「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」があります。その場で、高校生が自分たちで作った作品を発表して、映画監督や俳優にアピールできたらワクワクしますよね。そんな高校ってきっと他にない。

夕張にはロケ地もあるし、広い建物や空き家がいっぱいあります(笑)。高校生などの若い子たちがクリエイティブな発想を磨いていく場は、夕張に作れると思っています。

いずれにしても、夕張に来て暮らす若者が増えたら、若者が必要とするモノが増えて、産業が活性化するはずです。夕張には「超穴場」と言えるスキー場もあるし、空港も札幌も近い。いくつかある魅力を組み合わせることで、今までに見たこともない夕張を作りたいですね。

映画のロケ地「幸福の黄色いハンカチ、思い出の家」

映画のロケ地「幸福の黄色いハンカチ、思い出の家」

無いものは作ればいい

ご存知の通り、夕張にはたくさんの課題があります。他の市に当たり前にあるものが、この街にはありません。でも、僕ら市民が当事者意識を持って「夕張をどうにかしないといけない!」と思っているから、みんなが同じ方向を向いて、「無いものは作ろう!」と前向きに行動を起こしやすい。

しかも、何か行動を起こすと、必ず市民から反応を得られるのが夕張のいいところ。「こういうことをやりたいんだけど手伝って欲しい」と言われたり、「私も参加したい」とプロジェクトに関わる人が現れたり。

団体や企業、応援してくれる市民と一緒になって新しいことに取り組めるので、一人では難しいことでも、みんなが知恵を絞るから形になりやすいですね。もしこれが、破綻していないまちだったら「誰かがやってくれる」と、みんなどこか他人事だったでしょう。

市民が動くことで、いろんなことが動き始めます。行政も市民も一緒に声を出して、むしろ僕ら市民が行政を動かすくらいの関係性になって、未来につなげたいですね。

夕張はベンチャーシティ

いま、夕張には少しずつ、若い移住者が増えているようです。それはきっと、夕張は新しいことに挑戦しがいがある、ベンチャー企業ならぬ「ベンチャーシティ」だからだと思います。そもそも底にいるので、何をやってもプラスにしかならないんですよね(笑)。

声をあげれば協力者も得やすいし、小さく挑戦して成果を出せば、次の大きな挑戦にもつなげやすい。今夕張で頑張っている人は、そこを魅力に感じてくれているんだと思っています。

それに、移住者はいわゆる“よそ者”だからこそ、違う視点で何かに気づいたり、意見を言いやすかったり、それを実現しやすかったりするんですよね。僕もよそ者だけど、ゆうばり再生市民会議の代表をしているし、よそ者という違う視点を持っていることで、できることってたくさんあると実感しています。

だから、まちづくりをしてみたい、地域活性化に絡んでみたいという方は、夕張に関わって欲しい。もちろん、選択肢は移住だけではないので、いまの場所に住んだままでもいくらでも関わって欲しいと思っています。

僕も、コズミックカレッジはJAXAさんと植松電機さんの応援なしにはできなかったと思っています。そうやって、外部の応援団をもっと増やすことで、夕張の未来を作っていきたいです。

(取材・文:田村朋美、写真:増山友寛)

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