【後編】ふるさと納税 中部サミットin長野県白馬村

2018.01.11

長野県白馬村

2017年10月20日、21日。株式会社トラストバンクは長野県白馬村と共催で、ふるさと納税の「災害時における情報発信と寄附金の活用」「未来に繋がる地域のファン作り」をテーマに「中部サミット」を開催しました。地域がファンをつくるにはどうしたらいいのか、先進自治体による取り組み紹介や基調講演の様子をお伝えする「後編」です。


※前編はこちら

「あなたの町を応援してもらうための3つのポイント」
株式会社トラストバンク 田村悠揮

自治体や事業者さん・生産者さんの、ふるさと納税に対する考え方は、少しずつ変わり始めています。これまで、ふるさと納税は「お礼の品」という販路でしかなかったかもしれませんが、テストマーケティングに活用される例が増えています。

また、特産品などモノのPRからコトのPRに変わり、「隣町には負けられない」という競争から、地域同士の広域連携による共創に変わり、「どれだけ寄附を集められるか」ではなく、「この制度を通じて地域を元気にしよう」という変化が起きています。

こうした状況下で、ふるさと納税が大きな影響を与えているのは、「人のつながり」です。同じ地域内でもつながりの薄かった、自治体と事業者さん、事業者さん同士、地域と寄附者、地域と地域…。このつながりを一過性にするのではなく、地域のファンになってもらうには、継続して地域を応援してくれる寄附者と、地元に愛着あふれる住民の両方への取り組みが必要です。

では、継続する寄附者をつくるにはどうしたら良いでしょうか。これは私の実体験でもあるのですが、寄附をしたときに何かしらの感動体験があったり、自分の寄附が役立った実感があったりすると、寄附者はその地域を自分事として捉えるようになります。

そのためには、自治体と事業者さん・生産者さんの連携は不可欠です。まず自治体が知ってもらう機会を作り、事業者さん・生産者さんは感動体験を用意し、そのあと自治体は継続したコミュニケーションを取っていく。ホームページやメールなどによる定期的な情報発信はもちろん、SNSを使った相互コミュニケーションや、寄附者を対象にしたバスツアーなどリアルイベントを企画するなど、さまざまな工夫が必要になると思います。

そして、応援者を増やすには「地域の魅力」だけでなく、「地域の課題」も発信する必要があります。たとえば、ふるさとチョイスの「ガバメントクラウドファンディング」は、地域課題や社会課題など、寄附金で解決したい課題を提示して、寄附を募る仕組みです。災害支援もそのひとつ。熊本地震や各地の台風被害、鳥取地震、糸魚川大火など、地域を支援したいという純粋な寄附と応援が集まりました。

一方、地域に愛着あふれる住民との取り組みには、住民参加型の会議で、一緒に寄附金の使い道を考えたり、みんなで地域課題と解決策を出し合ったりしている自治体はいくつかあります。ふるさと納税や地域のことを一緒に考える場を設けたら、地元の方は地元をより好きになるのではないでしょうか。

まちを応援してもらうための3つのポイントは、「地域の人や課題を知ってもらって地域への愛着を持ってもらう」こと、「応援者が参加する機会をつくって、達成感と充実感を持ってもらう」こと、そして「単発ではなく仕組み化して継続し、関係を醸成していく」こと。ぜひ、これまでに得ているたくさんのつながり、そしてこれから作っていくたくさんのつながりを無駄にせず、継続したファンをつくっていきましょう。

「ITを活用した地域のファンづくり 顧客視点の獲得と地域全体の売り上げ拡大」
日本中小企業情報化支援協議会 代表理事 森戸裕一

私はナレッジネットワークの代表や、一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会の代表理事や大学教授などを通じてさまざまな活動をしています。主に、全国47都道府県の地域支援や、出身地である佐賀県伊万里市の支援を主に手掛けています。

最近では、全国でシェアリング事業を立ち上げるお手伝いをしているのですが、そのお手本になっているのが中国です。日本は、なかなかシェアリングの事業に踏み切れないのですが、中国は受け入れている。

たとえばシェアリングサイクル。自転車の管理が大変だと思うかもしれませんが、いま中国ではものすごい数のシェアリングサイクルが走っています。なぜなら、自転車を所有している人が不便を感じたため、持たない方がいい、持たずにシェアしようという概念が広まったためです。

ここで、ひとつ皆さんに質問です。スマホをお持ちの方は手を挙げてもらえますか? ありがとうございます、ほぼ全員ですね。いまや、世界中で誰もがスマホを持っている時代です。

実は、中国でシェアリングサイクルが大流行しているのも、みんながスマホを持っているからなんです。スマホでQRコードを読み取ってカギを開け、行きたいところに着いたらスマホをかざしてカギをかける。これで決済まで完了します。簡単ですよね。もちろん、盗難などさまざまな課題はあるものの、私は日本の地方こそ、シェアリングのポテンシャルがあり、ぜひ進めるべきだと考えています。

自転車だけでなく、車や家などを観光客や出張者と一緒にシェアすれば、低コストで運用でき、みんなが便利に使えます。きっと、海外からの旅行者はとても喜ぶでしょう。また、高齢者もスマホが使えるようになれば、予約乗車や定期乗車、オンデマンド乗車などができるようになり、コミュニティバス活用の活性化につながります。コミュニティバスの停留所を公民館などのコミュニティスペースと組み合わせることで、買い物代行のようなビジネスも生み出せるかもしれません。

ただ、いざ地域に行って話をしても、「ITの人が難しいことを言っている」と、理解されないことがよくあるんです(笑)。実際、出身地の伊万里市でも、職員さんに理解されるまで1年かかりました。だけど、膝詰めで話していくと、「ITの話しではなく、これからの話しなんですね」と、理解を得られるようになりました。一極集中で地方の商店街はシャッターが閉まり、若者はどんどんまちを出て高齢化が進む。こうした「これまで」の話題ではなく、シェアリングなどは「これから」の話し。ちょっと期待が持てますよね。

「これから」の話しでいうと、以前伊万里市の方々に、「伊万里は大学がないから若者が出ていく」と言われたことがありました。そこで、「それなら若者を連れてきます」と言って、本当に毎週福岡から伊万里市に大学生を連れてきました。とにかく、できない理由や、やらない理由を聞くと、それを一回やってみたんです。

すると何が起こったかというと、地域の人たちが、自分たちだけではアイデアが出ないけど、外から毎週若者が来ることで、新しい発想が生まれることに気付いたのです。今はネットでいくらでも外の人と交流できるのだから、たとえ人口が少ない地域だったとしても、一度でも来たことがある人や出身者を巻き込めば、関係人口や交流人口を何万人、何十万人、何百万人と増やせる可能性があるわけです。

人が減るから元気がなくなる、若者が残らないから発想が乏しくなる、そんな時代ではありません。いつも持っているスマホを開けば、瞬時にたくさんの人とつながれます。

相対的に、新しい人と出会いつながる頻度が高い東京では、新しい仕事が生まれやすいかもしれません。でもたとえば、ドローンの実証実験ができるのは地方。であれば、出身者でドローンの新規ビジネスをしている人に、「東京にいるままでいいので、出身県でも少し手伝ってもらえないか」と声をかければ、多くの人は喜んで手伝うと思います。

移住定住や企業誘致は簡単ではないけど、週に数時間だけでいいから手伝って欲しいと言えば、はじめやすい。そうして交流人口や関係人口を増やしていくと、地方に新規産業が生まれやすくなると考えています。

大学生が毎週伊万里市を訪れる取り組みは、一過性で終わらないよう、彼らにFacebookグループやページを運用してもらって、コミュニティを継続させています。伊万里市に行っておもしろいことを取材し発信してもらうのですが、おもしろいことがなかったら自分たちで企画してもらう。最初は、地域の人からすると「また変なことやって」と、大学生の活動が「余計なこと」だったかもしれません。だけど、3年が経った今、彼らのFacebookページは1万を超える「いいね」があり、伊万里ファンを増やし続けています。

現在、この取り組みは全国に広げており、約20の地域の情報発信を福岡の大学生が自らやっています。住民だけ、地域だけで考えず、外部の人や若い人とゆるやかに関係性をつくりながら考えていくと、地域はうまく回り出すはず。固定観念にとらわれたバイアスは取っ払い、ぜひ柔軟な考え方で外部のファンを増やしていきましょう。

text by
長野県白馬村

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