【後編】平成29年度 ふるさと納税 全国首長会議

2017.08.16

東京都千代田区

自治体間の過度な返礼品競争など、批判的な報道も見受けられるふるさと納税。一方で、制度を地域活性や地域課題解決のツールとして活用することで、さまざまな優良事例も生まれています。そこで、トラストバンクは、ふるさと納税を活用した地域課題解決の動きを全国に広めるべく、全国の市区町村の首長を一堂に会した「ふるさと納税全国首長会議」を開催しました。その様子をお伝えする「後編」です。


※前編はこちら

■平成29年度ふるさと納税全国首長会議
開催日:平成29年7月12日

【前編】
・「ふるさと納税がもたらした地域活性化事例について」トラストバンク代表取締役 須永珠代
・「ふるさと納税制度の健全な発展を目指す自治体連合について」福井県知事 西川一誠氏
・「今後のGCFと新プロジェクトについて」トラストバンク 浪越達夫
・「ふるさとからのグローカル人材輩出を目指して」
トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋力氏
・留学奨学生の声

【後編】
・「ふるさと納税の現状と課題」総務省自治税務局 市町村税課長 池田達雄氏
・パネルディスカッション「地域の課題解決について」
モデレーター:神戸大学経営学部事業創造&地方創生センター所長 保田隆明
パネリスト :北海道上士幌町長 竹中貢氏
   長崎県平戸市長 黒田成彦氏
   トラストバンク代表取締役 須永珠代

ふるさと納税の現状と課題 
総務省自治税務局 市町村税課長 池田達雄氏

本年7月4日、総務省においてふるさと納税の受入実績等について調査結果をとりまとめ、公表しました。ふるさと納税の平成28年度の受入実績は2,844億円、対前年度比1.7倍となっており、ふるさと納税の受入実績は着実に伸びていることから、国民の皆様に制度が浸透しつつあると認識しています。また、熊本県や糸魚川市などの被災地に対して、多くの寄附が集まっていることは大変心強いことです。

総務省自治税務局 市町村税課長 池田達雄氏

総務省自治税務局 市町村税課長 池田達雄氏

調査結果によると、ふるさと納税の募集の際に、資金調達が必要なプロジェクトや事業を具体的に明示し、寄附の使い途として選択できるようにしている自治体が全国で200団体にのぼることが分かりました。

たとえば、訓練用筋電義手の貸し出しを行う小児筋電義手バンクへの応援プロジェクトや、市内小中学校のこどもたちに本を送るプロジェクトにふるさと納税を活用する事例を報告いただきました。

いわゆるガバメントクラウドファンディング(GCF)に代表されるように、具体的なプロジェクトに共感して、ふるさと納税をするという流れを作っていくことが、制度本来の趣旨にかなうと考えています。ぜひ、ふるさと納税を募集する際には、使い途について創意工夫を図ることにより、地場産業の振興や地域活性化を行っていただきたいと思っています。

ふるさと納税に係る返礼品の送付については、国会審議において、厳しくご指摘いただいています。ふるさと納税制度は地方団体をはじめ多くの方々から高い評価をいただいている一方で、返礼品目的でふるさと納税が行われ、自治体間で返礼品競争が過熱していることなどの問題が、ふるさと納税制度そのものに対しての批判につながっています。

総務省としては、返礼品競争の状況を解決するため、全国の自治体に対して、制度の趣旨に沿った良識ある対応をお願いし、ふるさと納税制度を健全に発展させていきたいと考えています。

パネルディスカッション「地域の課題解決について」

モデレーター:神戸大学経営学部事業創造&地方創生センター所長 保田隆明氏
パネリスト :北海道上士幌町長 竹中貢氏
   長崎県平戸市長 黒田成彦氏
   トラストバンク代表取締役 須永珠代

保田 ふるさと納税は、寄附の使い道によって、住民の暮らしを向上できる仕組みです。地域一人ひとりの付加価値や所得の高まりにつながるわけですから、寄附によって経済が発展したことがわかれば、寄附者は意義を感じてくれると思います。

そしてこの制度は、自治体に対して住民と寄附者という顧客を生み、どちらの満足度も高めないといけないという、とてもチャレンジングな状況をつくりました。なかでも、寄附者に対する活動報告が先進的で、かつ地域経済が活性化している先進自治体、平戸市と上士幌町にお話を伺います。

まず、平戸市の漁業やまちづくりについて教えていただけますか?

黒田 ふるさと納税は平戸市の産業分野や生活に大きな変化をもたらしました。それまで漁業は、獲った魚介類をそのまま市場に卸すのみでしたが、産直市場や、ふるさと納税のカタログを作ったことで、「もっとお客様が喜ぶようにしよう」「調理しやすい形に加工しよう」と、それぞれが工夫を凝らす流れに変わっていきました。

現在は60事業者がふるさと納税のカタログに掲載し、今までは無かった新規商品開発が19件生まれ、平成27年度から2年間で1億円を超える設備投資がされているという変化が訪れています。

それまでの平戸の弱点は、少量・多品種・季節限定だったことです。ですが、産直市場やふるさと納税をきっかけに、事業者ごとではなく「平戸」というブランドで売り出せるようになりました。さらに、平戸の知名度が上がったことで、首都圏の百貨店やデパートとも取り引きできるようになっています。

保田 ありがとうございます。一方、上士幌町は人口の社会増が発生していますよね。ぜひ紹介してください。

竹中 昨今言われている「消滅可能性」というのは、上士幌のような山村の地域にとって、数十年前からずっと課題でした。人口が減るということは、地域経済や地域の活力に大変大きなマイナスを与えてしまいます。

ただ、人口問題の解決は難しくても、人口減少の幅なら少しでも小さくできるかもしれません。そのために大切なのが、首都園と積極的に交流すること。お互いに引き付け合う関係になりたいと考えていたときに、つないでくれたのが、ふるさと納税でした。インターネットを通じて、上士幌と都心がつながったのです。

そこで上士幌は、戦略的に移住定住を促進しようと考えました。都心の人は上士幌での子育てや教育に不安があるでしょうし、仕事はあっても年収が低いことがハードルになる。その課題を打ち消すために、ふるさと納税の使い道は子育て支援に絞ることに決めました。

平成26年3月に、「ふるさと納税・子育て少子化対策夢基金」を作り、ふるさと納税でいただく寄附は、小さな子どもから高校生まで、子育てや先進的な教育、医療費、スポーツなど、あらゆる面に活用。その結果、2016年は72人の社会増があったのです。半分以上が、首都圏からの移住でした。

地方で安心して子育てや生活ができる環境が整ってこそ、地方創生が実現します。その点では、ふるさと納税が果たす役割は大きいですね。

保田 須永さんにお聞きします。平戸と上士幌の優れた点はどこだと思いますか?

須永 平戸市は、知り合った4年前とは発する言葉が全く違っていて、自治体が経営視点やマーケティング視点を持ち、いかに販路を拡大するかを考えています。

上士幌町は、ふるさと納税の課以外の職員さんも、いかにふるさと納税が必要かを理解した上でサポートしています。だから、担当者が変わっても安定してふるさと納税を運用していけるような仕組みがあると思います。自治体に必要なのは経営的視点で、それを学んで実践していくことが地域の発展につながると思っています。

保田 平戸市は、ふるさと納税の寄附額で1位になったこともありますが、昨年度はその前の年よりも10億円近く減りました。それに対して、事業者から言われたことなどありましたか? 

黒田 実は、平戸市のふるさと納税は、現在トラストバンクに出向している黒瀬が1人で仕組みを作りました。そして、彼は当初から「この制度がいつまでもあると思うな」と事業者に伝えていたんです。「依存してはいけない」と。だから、物産担当者は市場を開拓し、事業者も工夫を凝らす努力を当たり前のようにしていました。

平成27年度はふるさと納税で26億円の寄附をいただき、翌年は16億円まで下がりましたが、産直市場の売り上げはどちらも9億円で変わりませんでした。独自の販路にファンがついたのだと思います。そもそも、ふるさと納税で寄附をいただくこと自体がありがたいことで、官民両方がそう考えて取り組んでいます。

保田 上士幌町と聞いて、場所がわかる人はこれまで少なかったと思います。今後、地域の可能性を引き出すためには、地域の稼ぐ力を引き出し、観光地経営をする「DMO」がキーワードになると思いますが、上士幌町はどのような戦略でやっていますか?

竹中 これまで、観光は観光協会が中心にやっていて、稼ぐことまでは考えていませんでした。でも、インバウンドを含めて考えると田舎にも市場があるはずで、それを再発見してスキームを作り、観光で稼げるようにしようと動いています。

その場合、経営視点を持ち、どう稼いでいくのかを一人ひとりがそれぞれの立場で考えていくのが、大事なポイントです。上士幌町は子育てで一定の効果が出たので、次は「ふるさと納税・生涯活躍生きがい基金」をつくり、まちづくり会社を立ち上げます。行政、民間、金融、マスコミなど、みんなの協力と賛同を得ながら、まちづくりを進めていきます。

また、上士幌の知名度はまったくなく、寄附者の98%が「ふるさと納税で初めて知った」と言います。ですから、上士幌を知ってもらい、興味を持ってもらうために、都心のイベントに参加したり、テレビ番組に出演したりと、積極的な活動に取り組んでいます。

保田 一方で、平戸市には観光のイメージがあります。しかも、シーズンに大きなばらつきがなく、アジアからの観光客もいる。ふるさと納税をきっかけに、観光につなげた取り組みなどあれば教えてください。

黒田 平戸の観光は、城のある北部にとどまっていて、日帰り客が中心という課題があります。市の中部や南部、離島での観光を発達させたら、宿泊客が増えると思っています。

東京に平戸の食材を扱う居酒屋や、平戸マルシェができましたが、これはふるさと納税をきっかけにではなく、市の職員が粘り強く通って信頼を勝ち得て始めた取り引きです。商品を供給するのは産直市場で、季節ごとにメニューを変えながら責任を持って出してもらっています。

保田 上士幌も都心で物販をされていますね。

竹中 上士幌の場合は、ふるさと納税でたくさんの人に支持されたことで自信を持ってやれています。付加価値をつければ認められることがわかってきて、挑戦する人が増えてきたのだと思います。

保田 ふるさと納税は、まちの魅力発掘に役立ったと思います。まだまだ、ビジネスや飲食店、移住、観光など、多方面での可能性があると思いますが、そのとき重要になることはなんでしょうか。

須永 この制度はいろんなきっかけを作り、いろんなツールとして活用できるので、制度を守って発展させていくことが重要だと思います。制度がなくなったら、きっかけを潰してしまう。だから、健全に発展させていきたいですね。

関連するリンク

text by
東京都千代田区

この記事につけられたタグ

関連する記事