【後編】ふるさと納税 北海道サミットin夕張

2017.08.07

北海道夕張市

7月28日、29日。株式会社トラストバンクは北海道夕張市と共催で、ふるさと納税の「使い道」をテーマに「北海道サミット」を開催しました。財政破綻から10年が経ち、全国からの応援とふるさと納税による多大な支援によって、財政計画の抜本的見直しができた夕張市。このまちを舞台に、先進自治体による使い道の事例や取り組み紹介、また自治体・事業者同士の交流会を実施。その様子をお伝えする「後編」です。

【前編】

・夕張市長 鈴木直道氏よりメッセージ
・「ふるさと納税と今後の展望」トラストバンク代表取締役 須永珠代
・「財政破綻からのRE START! 夕張とふるさと納税」北海道夕張市役所 佐近航氏
・夕張市クラウドファンディングに関する取り組み
・夕張高校生 代表挨拶

【後編】

・「ふるさと納税を活用した地域高校の魅力づくり」長野県白馬村役場 渡邉宏太氏
・「原点回帰~米子市ふるさと納税の過去と未来~」鳥取県米子市役所 大江淳史氏
・「「写真の町」ひがしかわ株主制度について」北海道東川町役場 栁澤奨一郎氏
・「平戸市の創業支援の取り組みについて」心優-Cotoyu Sweets- 小値賀布美華氏&トラストバンク 黒瀬啓介(派遣元:長崎県平戸市役所)

「ふるさと納税を活用した地域高校の魅力づくり」白馬村役場 渡邉宏太氏

人口約9000人の長野県白馬村で、ふるさと納税でいただいた寄附を活用して3年前から進めているのは、白馬高校の魅力化です。

長野県が示した高校再編計画では、生徒数160人を2年連続で下回ると分校化か廃校の対象となってしまいます。白馬高校はオリンピック選手をたくさん輩出しているスキーの名門校ですが、平成25年と26年に連続してこの基準に抵触したため、統廃合の対象となってしまいました。

高校がなくなれば、通学に数時間を要するほか、遠方への下宿なども余儀なくされ、保護者や生徒の経済的・精神的負担が大きくなります。さらに、人口流出と過疎化が急速に進行し、地域の存続に関わる大問題になってしまいます。

人口流出を少しでも防ぎ、UIターンなどによる移住者を呼び込むためには魅力的な教育環境があることは不可欠です。高校を存続させ、地域全体で子どもたちを育てるために、高校魅力化プロジェクトが始まりました。

1、平成28年4月、国際観光科を新設

白馬と世界をつなぐグローカル観光人材の育成を目的に新設。村内外の企業にサポーターになってもらっての教育や、グローバル講演会として宇宙飛行士の山崎直子さんや星野リゾート代表の星野佳路さん、サッカー元日本代表監の岡田武史さんなどに登壇いただいています。また、ブリティッシュスクールとの連携や留学支援も実施。生徒も全国募集することで刺激のある多様な環境づくりをしています。

2、公営塾「しろうま學舎」オープン

高校の敷地内にある合宿所を活用した塾で、英会話や資格取得支援、受験対策、地域活動を行なっています。講師は地域おこし協力隊や地元採用の非常勤講師。地域愛を育むためにも地域活動を大切にしており、地域の特産品をいかにPRするかの授業や、地域の課題を話し合って解決につなげる活動もしています。

3、教育寮「しろうま Pal House」

全国からの生徒を受け入れるための寮。現在約45名が入寮しており、地域のボランティア活動などにも積極的に参加しています。

白馬村役場 渡邉宏太さん

白馬村役場 渡邉宏太さん

この魅力化プロジェクトを推進するに当たっての最初の課題は、継続可能な財源確保と生徒募集の情報発信でした。どこにどう情報を出せばいいのかがわからなかったんですよね。そこで活用したのが、ふるさと納税。ガバメントクラウドファンディング(以下GCF)で資金調達と生徒募集PRの両方を打ち出しました。

結果、資金調達はもちろんのこと、公営塾に期待して優秀な地元生徒が入学したり、ふるさと納税の取り組みから白馬高校の全国募集を知って入学を決めた県外の生徒も出てきたのです。そして何より、継続して地域活動に取り組む生徒が増加したのはうれしい副産物でした。

いま、白馬高校の生徒は200人を超えました。全国からの思いが詰まったふるさと納税により、子どもたちに魅力的な学びを提供でき、子どもたちの活動が地域を輝かせています。これから私たちがすべきは、寄附者の思いをもっと地域に伝え、寄附者には、いただいた寄附が具体的に何に使われてどうなっているのかを報告すること。絆を深めていくことが大切だと思っています。

「原点回帰~米子市ふるさと納税の過去と未来~」米子市役所 大江淳史氏

米子市は、ふるさと納税が始まった初年度から、積極的に取り組みを始めた先駆けの自治体です。「あなたも米子のサポーター」というキャッチコピーを掲げ、「市外に市民をつくろう!」というコンセプトでスタートしました。

当初、特産品を全国に発信するために作ったのが「米子市民体験パック」です。地元企業から無料でいただいた特産品の試供品16品や市内施設の優待券などをパックにして、寄附者全員にお贈りし、気に入っていただけたら是非米子に来てくださいね!というメッセージを込めました。

そして、役所らしくない、迅速、丁寧、簡便な対応を第一と考え、クレジット決済の導入、米子市民体験パックの即時送付、生鮮品配達希望日の意向確認をしました。当時、ふるさと納税のクレジット決済は、全国的にも先駆けとして注目されました。

米子市役所 大江淳史さん

米子市役所 大江淳史さん

こうして市外の寄附者を「市外の市民」としてファン化につなげ、平成24年度・25年度は寄附件数全国1位に。トップランナーとして「ふるさと納税をするなら米子市」というイメージをつくれたと自負しています。

しかし、ふるさと納税が本格化し始めた26年以降は、魅力ある返礼品や使い道によって、米子市は他の自治体に追い抜かれてしまいました。さらに、先駆者だった米子市は独自のクレジット決済システムを持っていたため、ふるさとチョイスなどのポータルサイト掲載にも乗り遅れました。ふるさとチョイスから直接寄附をしていただけるようになったのは平成29年2月、ごく最近のことなのです。

米子市は、当初の理念に基づく「原点回帰」を目指します。再びトップランナーを目指すことで、ふるさと納税の健全な発展に寄与したい、と思っています。米子市の具体的な戦略については、8月25日・26日に米子で開催される中国・四国サミットでお話しします。皆さんどうぞご参加くださいますよう、よろしくお願いいたします。

「「写真の町」ひがしかわ株主制度について」東川町役場 栁澤奨一郎氏

旭川空港から車で10分の場所に位置する北海道東川町。国道・鉄道・上水道はありませんが、ミネラル豊富の美味しく潤沢な地下水で生活ができ、移住者により人口が増えているまちです。

東川町では、1985年に「写真の町」として「自然」「文化」「人」の出会いを大切にした「写真写りのいい町」の創造を目指しています。2014年からは、世界中の人が写真をきっかけに東川町で出会える首都にしようと、写真文化首都を宣言するなど写真文化を通じたまちづくりを行っています。

東川町役場 栁澤奨一郎さん

東川町役場 栁澤奨一郎さん

写真甲子園やフォトフェスタなど写真の町を象徴する事業を通じて、写真の町・東川町を応援したいという人が増えて来た中、2008年に国のふるさと納税が制度化されました。東川町は、まちの未来に投資してくれる寄附者を株主と捉え、まちの未来を一緒に育てていこうという趣旨で「ひがしかわ株主制度」を始めました。

これは、返礼品では終わらないつながりです。このつながりによってまちを活性化させ、株主の皆さんへ還元するという循環を目指しています。具体的には、寄附してくれた人に株主証を発行し、東川町に来たら株主優待利用ができるようにしています。また、特別町民なので、公共施設も町民価格で利用可能。1万円以上の投資株主には年間6泊できる無料宿泊施設も提供しており、年間500人くらいが利用してくれています。

さらに、株主には植樹や株主総会を通じたまちづくりへの参加や、株主がオーナーになれる株主専用の農園企画など、株主とのつながりを大切にする取り組みを実施しており、年間400人から申し込みがあります。2017年6月末時点で、東川町に寄附し株主になっていただいたのは約1万5千人。総額3億円以上の投資をいただきました。

今後も、小さなまちで世界中の人と出会い、笑顔になれるような「写真文化首都・東川町」として、株主制度を始めとした取り組みを進め、まちに共感いただけるような特色ある事業に、ふるさと納税を生かしたいと考えています。

平戸市の創業支援の取り組みについて
心優-Cotoyu Sweets- 小値賀布美華氏
トラストバンク 黒瀬啓介(派遣元:長崎県平戸市役所)

左:黒瀬啓介さん、右:小値賀布美華さん

左:黒瀬啓介さん、右:小値賀布美華さん

黒瀬 もともと平戸はふるさと納税を活用して、スタートアップを支援しています。対象となるのは、起業を考えている人から創業5年以内の方。平戸起業塾や個別相談会などを受けていただいて支援しています。小値賀さんもその仕組みを活用して起業した1人ですが、起業のきっかけについてお話いただけますか。

小値賀 子どもが産まれて母になったことが大きな転機でした。子どもの人生を背負うという視点に立ったとき、危機感を覚えたんですよね。それが、今後の人生の選択肢に起業を入れたきっかけです。

起業の後押しになったのは、ふるさと納税でした。個別相談を含めた助成制度が平戸市にできたことを知り、「この制度がなくなる前にチャンスをつかまないと、もう機会がないかもしれない」と思ったのです。そこで早速、個別相談会に参加し、中小企業診断士の方に、スイーツ店を起業した際の市場規模などすべてデータで出してもらいました。数字が明確になることで、曖昧な不安はなくなりましたね。

その後、「心優-Cotoyu Sweets-」をオープン。平戸の小麦を使ったパンケーキ、平戸に1軒だけある酪農家さんのミルクを使ったキャラメルブリュレ、いちご農家さんのスイーツなどを作っています。

黒瀬 ただ、小値賀さんのお店は平戸市の南部地域にあります。平戸は北部が栄えていて、中部から南部にかけては手付かずの自然が広がる地域なのですが、オープンするときの周りの反応はどうでした?

小値賀 周りは見渡す限り田んぼなので、正気の沙汰じゃないと言われました(笑)。北部でやりなよと。だけど、インターネットがあって、SNSが発達している今の時代は、個人メディアが資産になります。都会も田舎も関係ないと思ったんですよね。それに、高齢化が進む地域でインターネットを使った事業をやることこそが、若手の役割だと思いました。

だから、オープンまで毎日何度もブログを更新して、お店のことや自分のライフスタイルなどを発信し、ファンを作ることから始めました。その結果、オープン前からメディアに密着取材され、初日は30分で完売。今では県外や東京・大阪からもお客さんが来てくださるようになりました。発信を続けることで、潜在顧客を作れたのだと思います。

黒瀬 すごいですよね。小値賀さんは平戸市のふるさと納税特設サイトで期間限定のお礼の品を出品されましたが、出してみて感じたことはありましたか?

小値賀 すごいチャンスだと思いました。新規事業者にとって販路拡大は難しいこと。だからこそ、マーケットがあってお金が循環している場所に出店できるのはチャンスでしかないですよね。販路開拓にエネルギーを割かなくていいぶん、お客さんの反応を見て商品のブラッシュアップに注力できました。

それに私の起業は、全国から平戸市にいただいた寄附があったからこそ。寄附者の方に寄附金が何に変わったのかをきちんと報告できる場でもあると思いました。

黒瀬 今はご自身でECサイトを運営していますが、何か気づいたことと、課題はありますか?

小値賀 痛感したのは「このブランドといえばこれ」という主力商品を持たないと厳しいことですね。ECサイト単独の勝負は難しいけれど、やはりSNSは役に立っています。

結局、人と関わらないと、選択肢も可能性も広がらないんですよね。人と出会ったときに積極的に自分のことを伝え、同時に相手が求めていることを知るのが大事で、それがきっかけになって新しい事業が生まれて、社会貢献につながっていくのだと思います。

黒瀬 その通りですね。出会いをいかに必然にするか、一歩踏み出すのは職種や立場に関係なく大切だと思います。最後に、小値賀さんの今後の計画について教えてください。

小値賀 短期的な目標は、ふるさと納税でいただいた寄附金の使い道として、私の起業を全国に伝えていくこと。寄附が生かされた事例として知っていただくことは重要だと思っています。長期的な目標は、平戸という大好きで素晴らしい場所をたくさんの人に伝えていくことですね。


※夕張市の事例が満載の前編はこちら

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text by
北海道夕張市

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