【前編】ふるさと納税 北海道サミットin夕張

2017.08.07

北海道夕張市

7月28日、29日。株式会社トラストバンクは北海道夕張市と共催で、ふるさと納税の「使い道」をテーマに「北海道サミット」を開催しました。財政破綻から10年が経ち、全国からの応援とふるさと納税による多大な支援によって、財政計画の抜本的見直しができた夕張市。このまちを舞台に、先進自治体による使い道の事例や取り組み紹介、また自治体・事業者同士の交流会を実施。その様子をお伝えする「前編」です。

【前編】

・夕張市長 鈴木直道氏よりメッセージ
・「ふるさと納税と今後の展望」トラストバンク代表取締役 須永珠代
・「財政破綻からのRE START! 夕張とふるさと納税」北海道夕張市役所 佐近航氏
・夕張市クラウドファンディングに関する取り組み
・夕張高校生 代表挨拶

【後編】

・「ふるさと納税を活用した地域高校の魅力づくり」長野県白馬村役場 渡邉宏太氏
・「原点回帰~米子市ふるさと納税の過去と未来~」鳥取県米子市 大江淳史氏
・「「写真の町」ひがしかわ株主制度について」北海道東川町役場 栁澤奨一郎氏
・「平戸市の創業支援の取り組みについて」心優-Cotoyu Sweets- 小値賀布美華氏&トラストバンク 黒瀬啓介(派遣元:長崎県平戸市役所)

夕張市長 鈴木直道氏よりメッセージ

夕張市は緊縮財政の中で10年間歩みを進めてきました。どうやって資金を集めるのか、途方もくれるような暗闇の中で、課題解決の糸口となったのが全国からいただいた思いの詰まったふるさと納税でした。支援がなければ、計画の見直しすらできなかったと思います。これは、夕張のまちづくりに思いを馳せてくれた寄附者がたくさんいらっしゃったからこそ。

返礼品や制度の隙間をついたネガティブな発言が散見されますが、各自治体がいただいた寄附を何に使うのかという「使い道」を考えて議論することで、ふるさと納税制度は健全に発展させられると思っています。

夕張市 鈴木直道市長

夕張市 鈴木直道市長

「ふるさと納税の現状と今後」トラストバンク代表取締役 須永珠代

ふるさと納税をきっかけに、税金や資金調達を含めて、生きたお金の「使い道」に対する議論が各所で出ています。「ふるさと納税をがんばろう」ではなく、どう使うのか、何に活用するのかを考えることが重要です。

いま、ふるさとチョイス内に掲載されている「選べる使い道」は1万件以上あります。これまで、税金の使い道は選べませんでしたが、ふるさと納税によって、自分の税金を使ってほしい自治体の「使ってほしい使い道」に、指定できるようになりました。

なかでも、約200自治体が「教育」や「子育て」などの大きな分野ではなく、より寄附者からの共感を得られるよう、資金調達をしたい具体的な“事業”まで選べるようにしています。

そして400を超える自治体が、サイト上で使い道の報告をするだけでなく、いただいた寄附がどのように使われたかの報告や進捗状況を手紙や冊子で直接寄附者に伝えています。

トラストバンク代表取締役 須永珠代

トラストバンク代表取締役 須永珠代

ふるさと納税は未来への投資に使われるものであり、地域の未来や課題解決のために、寄附者の意思を反映できる制度です。趣旨を見失わず、健全に発展させるためには、お礼の品や使い道に知恵をしぼることで、いかにしてファンを作るかが大切。ぜひ一緒に、ふるさと納税の次のステージをつくっていきましょう。

(ふるさと納税の市場規模は約2兆4000億円(平成28年度は2884億円)。昨年度の都道府県別寄附額は、1位:北海道270億円、2位:山形県220億円、3位:宮崎県206億円。市区町村単位で1億円以上を集めた自治体は518。)

「財政破綻からのRE START! 夕張とふるさと納税」夕張市役所 佐近航氏

夕張市は、他のまちに当たり前にあるものが無いため、できないと思われることに遭遇する確率がとても高いまちです。だけど、それを言い訳にせず、どうやったらできるかを考えて形にしていくために、「RESTART challenge more」というスローガンを掲げています。

そして、夕張市のふるさと納税のテーマは、「全国の寄附者と実現する夕張再生」。市職員としても、志半ばに去っていった同僚や先輩、後輩の思いをつなげていきたい。そんな思いで、夕張の挑戦が未来の誰かのためになるよう取り組みを進めています。

夕張市役所 まちづくり企画室 佐近航氏

夕張市役所 まちづくり企画室 佐近航氏

昨年度、夕張市にいただいた寄附金は3億円強。返礼品率は約2割なので、約8割をまちづくりに活用できています。寄附者の割合で多いのは30〜40代の男性、いただく声は夕張の地域再生に対する応援が圧倒的なので、返礼品よりもまちづくりに目を向けていただいていることを実感しています。

このことからも、寄附者や地域が求めるふるさと納税は、その使い道によって、地域再生の実感を生み出すことだと考えています。

1、返礼品の活用による実感作り

夕張には夕張メロン以外に何もないと地域の人は思っていましたが、昨年、特産品を発掘したり、新たに作ったりすることで、返礼品を約50品目に拡充しました。結果、埋もれていた特産品の魅力にも自信を持てるように。一方で、返礼品ランキングの4位だったのが、「返礼品はいりません」。全国からの支援と期待を実感しました。

2、寄附者との交流による実感作り

「アトリエコザクラ」

アトリエコザクラは、障害を持つ方が、高い技術で良質な切り絵作品をつくっている団体です。お礼の品として切り絵を選んだある寄附者の方から、結婚式で飾る作品を作ってほしいと写真を受け取ったときのこと。何度も連絡を取りながら切り絵をつくり、磨き上げた手作りの額縁に入れて送ると、「素敵な切り絵をありがとう。結婚式で飾りました。これからは家で大切に飾ります」という手書きの手紙が届きました。アトリエコザクラの自信と活力につながっています。

アトリエコザクラの皆さんと鈴木市長

アトリエコザクラの皆さんと鈴木市長

「夕張のうた」

これは、夕張の子どもたちが故郷に対して自信と誇りをもち、いつまでも地域愛を忘れないでほしいという願いを込めて、市民が議論を重ねてつくった歌です。そのCDを、返礼品を希望しない方に市民からの感謝の気持ちとして、クレームを覚悟で送付しました。すると、次々と「感動しました」という手書きの手紙が届いたのです。心に響く感動を生み出すことが夕張のファン作りにつながり、継続的な支援の輪になるのだと思いました。

3、使い道による実感

夕張が目指しているのは、地域課題の解決と人のつながりを作っていくこと。課題をオープンにして、外部の知恵を借りながら解決を目指すために、寄附金だけのつながりではなく、ガバメントクラウドファンディング(以下GCF)を活用しています。

夕張市GCFの取り組みについて

夕張市はGCFを活用して、「夕張高校は絶対になくさない!夕張高校魅力化プロジェクト」をスタートしました。日本の課題探求に挑む高校生に環境を整備するために資金調達を行います。

夕張高校は全校生徒76名(平成29年4月10日現在)の学校です。もし廃校になってしまった場合、それは高校だけの問題ではありません。遠方の高校に通うことで金銭的負担が大きくなり、子育て世代の流出につながることは明白。それに、高校生の活動は地域の誇りや活力を生むものなので、絶対になくしてはいけません。

夕張高校魅力化プロジェクト

夕張高校魅力化プロジェクト

いま高校3年生の子どもたちが小学校1年生のとき、夕張は財政破綻しました。9校あった小学校は2校に統合され、中学校も1校になり、人が次々といなくなるなかで彼らは育ちました。地域の閉塞感や、外からのネガティブな発言によって、まちへの誇りをなくしてしまったのは事実。財政破綻の被害者は子どもたちです。だけど、高校生から発せられたのは「財政破綻はもういい。私たちは夕張だからできることに目を向けたい」という言葉でした。

夕張じゃ何もできない、夕張じゃダメだという印象を打ち消そうと、高校生の純粋な思いが地域に変化を生み出しています。私たち大人の仕事は、高校生が思い切り挑戦できる環境をつくること。そのための資金調達にGCFを活用します。

ふるさと納税の使い道の一つに、複合施設の開設があります。これは行政と民間が一緒になってつくっているもの。ただ、開設は平成31年予定で、2年も先の話です。複合施設は交通結節点であり、集いの場でもあります。そこで、開設までの仮の拠点として「バスまちスポット」を高校生が主体となって企画しました。

夕張高校生 代表挨拶

夕張高校は76名と小さいですが、高校生がまちづくりに参加できる唯一の高校です。私も、複合施設の検討委員として活動させてもらうなど、他の市町村ではなかなかできない経験をさせてもらっています。

仮の拠点となる集いの場「バスまちスポット」は、高校生が6班にわかれて、何時間もかけて企画を練りました。その後、プレゼンを経て決定した案に、採用されなかった5班それぞれの良いアイデアを加えることで完成。公共の視点を持てた貴重な体験だったと思います。

夕張高校に入学した当時は、「学校の近くにこういうお店があればいいのに、もっと人がいればいいのに」と思うことはありました。でも何もないからイチから始めることができる。やりたいと強く思えば思うほど、できることが増えて、実現できるものが増えることを実感しています。

若いうちから貴重な経験ができてとても幸せです。これからも、大好きな夕張市に貢献できるよう頑張りたいと思っています。

※先進自治体の事例が満載の後編はこちら

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北海道夕張市

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