ふるさと納税で起業支援。全国からの応援で生まれたゲストハウス

2017.07.14

高知県越知町

高知県越知町。美しい仁淀川と大自然の恵みに囲まれた、豊かなまちです。ここに地域おこし協力隊として東京からやってきたのが金原隆生、通称金ちゃん。協力隊を卒業後は、宿泊施設が少ないというまちの課題を解決すべく、ゲストハウスを作って定住することに決めました。しかし、完成までには資金が足りない。そこで活用したのが、ふるさと納税の、ガバメントクラウドファンディング(GCF)でした。返礼品のない寄附が本当に集まるのか。GCFを活用した起業支援の裏側を、越知町役場の大原さんと岡田さん、小松さんに伺いました。

※金原さんのインタビュー動画は本記事の最後からご覧いただけます!

地域おこし協力隊としてやってきた金原青年

小松 私が越知町役場で地域おこし協力隊の担当をしていたとき、金ちゃんが協力隊に応募してやってきました。受付で、「面接の時間まで何をしていた?」と聞くと、「どんなまちかを知るために、あちこち回っていた」と言うもんだから、越知町をちゃんと知ろうとしてくれている、いい子だなあと思ったのを覚えています(笑)。

危機管理課 補佐 小松大幸さん

危機管理課 補佐 小松大幸さん

小松 役場が協力隊にやってもらいたいのは、観光や農業、商業の振興に関わること。当時は、「観光物産館 おち駅」という物産館がまちの中心にできたのと、仁淀川でのラフティングガイドが始まって1年が経ったタイミングだったので、金ちゃんには、その2つを担当してもらうことにしました。

金ちゃんの協力隊員としての1年目の夏が終るころ、「僕は川下りをするために越知町に来たわけじゃないから、他のこともやりたい」と言ってきました。聞くと、観光客を相手しているだけで本当にいいのだろうか、協力隊を卒業後も越知町に定住するとしたらラフティングガイドだけで暮らしていけるのだろうかと、不安になったとのこと。

越知町は宿泊施設が充実していないから、そこに貢献できる何かをしたい、と漠然とした考えはあるものの、まちと自分がどう関わりながら形にすればいいのかを悩んでいたようでした。

越知町を流れる仁淀川

越知町を流れる仁淀川

課題は、宿泊施設が少ないこと

岡田 もともと越知町には旅館1件しかなく、せっかく観光客が来ても、泊まるのは越知町ではなく近隣の町や高知市内に流れてしまうという大きな課題を持っていたんですよね。

特に、10月に開催される「コスモス祭り」は、イベント期間の2週間で約10万人の観光客を見込んでいますし、初夏の鮎釣りも週末には町外からたくさんの釣り人が訪れます。しかし、泊まるところがないから、夜にはみんな違うところに行ってしまう。完全に、経済効果を逃していました。

企画課 係長 岡田浩和さん

企画課 係長 岡田浩和さん

小松 それを解決するために、越知町とは縁もゆかりもない金ちゃんが行動を起こそうとしているなら、それは純粋に応援したい。しかも、協力隊として一生懸命まちの仕事をしてくれた金ちゃんだから、できる限りの事はしたいと思いました。

ただ一つ心配だったのは、宿泊施設を開業しても、ご飯を食べていけるだけ稼げるのかということ。まちとしてできることも限りがあるので、他に良い策はないかと模索していました。

ふるさと納税の「GCF」

岡田 協力隊を卒業後も越知町に残るかを含め悩んだ結果、金ちゃんは越知町でゲストハウスを開業することを決意してくれました。ただ、購入した物件はまちから離れた山奥だったこともあり、小松さんの言うように正直どうなるのかすごく心配でしたね。

廃墟のような家のリフォームを、金ちゃんとお父さん、地域おこし協力隊などが中心になって、補助金を使いながら自力でスタートしましたが、どうしても資金が足りずにできない部分がありました。それは、宿の付加価値となる五右衛門風呂や囲炉裏。

どうしようかと悩んでいたときに、越知町のふるさと納税を担当している大原さんが、ふるさとチョイスのGCFを提案してくれたんです。これはチャンスだと思いました。

総務課 補佐 大原範朗さん

総務課 補佐 大原範朗さん

大原 せっかく定住を決意してくれたのだから、越知町としてもできる限り支援したいですからね。ただ、支援できる資金には限りがある……。そんなもどかしい思いを抱いていたタイミングで、偶然にもトラストバンクが東京で開催した会議の中で、ガバメントクラウドファンディング(以下:GCF)の説明がありました。

GCFとは、自治体が抱える課題解決のため、ふるさと納税でいただく寄附金の使い道をより具体的に伝えて、共感した方から寄附を募る仕組み。一般的なクラウドファンディングと違うのは、ふるさと納税を活用するため、設定する目標金額の達成に関わらず、申し込んでいただいた寄附は全ていただけるということでした。

しかも、GCFは自治体の課題解決につなげるための起業支援もできるとのこと。私は「金ちゃんの支援はこれだ」と思って、その場で「やりたい」と手を挙げました。

越知町に戻った後、すぐに町長や副町長の承認を得て、金ちゃんに説明しましたが、当時は何だかよくわからなかったと思います。ただ、どうしても作りたい五右衛門風呂や囲炉裏の資金を得られるかもしれないなら、やってみようと考えてくれました。

全国から届いた応援

大原 そこから越知町と金ちゃんのGCFへの挑戦が始まったわけですが、正直、返礼品なしで寄附をどれくらい集められるのかは未知数でした。設定した目標金額は300万円。実は、達成する自信はなかったんです。

だけど、いざ始まると、越知町民の方が率先して寄附をしてくれていることに、本当に驚きました。みんな、越知町にゲストハウスができることというよりは、金ちゃんが起業したことに対して、応援していました。

その勢いは日本全国に広まり、越知町や金ちゃんを応援したい人、ゲストハウスに興味のある人、地域おこし協力隊からの起業を支援したい人など、たくさんの方からの応援が届き始めたのです。

最終的に、目標金額は見事に達成。金ちゃんはもちろん、役場や町民の方みんなで喜びました。寄附をしてくれた方のコメントから、ふるさと納税は返礼品ありきではないと思っている人がたくさんいることを実感しましたね。

GCFで掲載したページ

GCFで掲載したページ

越知町を知り、好きになってもらうために

岡田 ほどなくして、ゲストハウスはオープンに至りました。泊まりに来た方からの反響がとても良く、私たちも少し安心しています。

それに、お年寄りしかいない集落にゲストハウスができたことで、子どもたちの声が聞こえるようになったのは思わぬ副産物でした。楽しそうに遊ぶ姿が見られるようになったのは、何年ぶりかわかりません。ゲストハウスがなかったら見られなかった光景ですね。

完成した、ゲストハウス縁

完成した、ゲストハウス縁

岡田 最初はどうなることかと不安でしたが、ふるさと納税のGCFを活用したことで自分たちでは集められなかった300万円という寄附をいただき、また、ふるさとチョイス内で取り組みをPRできたことで越知町外の人への認知にもつながりました。これがきっかけとなり、金ちゃんは各地に呼ばれて講演するほどになっています。

小さなまちに起こった大きな変化。それは、全国からの応援があったからこそと、感謝しています。

大原 越知町にとってふるさと納税は、まちを知ってもらうためのツールです。最初のきっかけは返礼品かもしれません。だけど、私たちはそこから先のつながりを一番大切に考えています。越知町へのふるさと納税、越知町と金ちゃんのGCFを通じて越知町を知ってもらった方に、そしてこれから知ってもらえる方に、越知町を好きになってもらえるよう、取り組みを進めていきたいです。

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高知県越知町

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