ふるさと納税で災害支援。全国ニュースで取り上げられなかった、岩手県西和賀町・土砂崩れからの復活

2017.06.28

岩手県西和賀町

2015年3月、秋田県との県境にある小さなまち岩手県西和賀町が、融雪による土砂災害に遭い、西和賀町と北上市をつなぐ大切な生活道路である国道107号が封鎖されてしまいました。小さなまちの災害はローカルニュースで少し取り上げられるにとどまり、岩手県民の多くも知らなかったと言います。そんなとき、西和賀町役場の高橋さんに「ふるさと納税の災害支援フォームを活用してはどうか」と提案したのが、北上市の登内さん。全国に現状を知らせて寄附を募ることで西和賀のまちが復活した経緯を、高橋さんと登内さんに伺いました。

※記事の最後に、インタビュー動画がございます。ぜひご覧ください!

西和賀町役場 農業振興課 主任(当時:6次産業推進センター)高橋直幸さん

高橋 2015年3月、融雪により土砂崩れが発生。それによって西和賀町の生命線とも言える国道107号が封鎖されてしまいました。西和賀の物産PRに大きな役割を果たしていた道の駅も機能しなくなり、当然、そこで働いていた人たちの仕事もストップせざるを得なくなりました。

西和賀にとって道の駅は、地元の農作物や魅力を発信する重要な場所。しかも、春の観光シーズンに向けて観光客の受け入れ準備をしていたタイミングだったので、大きな影響が出ることは一目瞭然でした。

ただ、国道107号は岩手県の管轄だったため、西和賀町だけでどうこうできる問題ではありません。道の駅が使えないなら、他のところを活用するしかない。土砂崩れに負けている場合ではないと、まちが一丸となって高速道路のサービスエリアやインターチェンジに臨時の観光案内を作るなどの対策を打ちました。

加えて、「土砂災害があったけど、西和賀は頑張っているからぜひ遊びに来てね」といった内容をFacebookで投稿。すると、北上市の登内さんから連絡が入りました。「ふるさと納税の総合サイト『ふるさとチョイス』に災害時の緊急寄附フォームがあるから、そこに載せて復旧支援を募ってみないか」と。

たしかに、災害によって西和賀の経済はしぼんでいましたし、国道が封鎖されたままで通勤や物流にも大きな影響をもたらしていたのは事実です。ただ、数年前にあった東日本大震災に比べると、西和賀の災害は局地的で人的被害もなかったから、そんな大々的にやっていいものなのか……。

なかなか行動を起こさないでいると、ふるさとチョイス運営会社の須永社長からも電話がありました。「地域の課題はそれぞれだから、解決手段としてふるさと納税を活用して欲しい」と。その言葉に背中を押され、西和賀町は緊急寄附フォームを開設することにしたのです。

西和賀町役場 農業振興課 主任 高橋直幸さん

西和賀町役場 農業振興課 主任 高橋直幸さん

本当に寄附が集まるのか不安でしたが、フォームを開設すると間もなく、北上市、長崎県平戸市、宮崎県綾町、山形県天童市、福島県大玉村が、ふるさとチョイスの自分たちのページに西和賀町のバナーを貼って応援してくれたのです。想像もしていなかったことなので、まちとしても個人としても、行動を起こせばつながっていくことと、全国からの応援が心底うれしかったです。

最終的には1000万円を超える寄附と多くのメッセージをいただきました。西和賀のような小さいまちの災害は情報発信しにくいのですが、全国に知ってもらうツールとしてふるさと納税を活用させてもらえたのは大きかったです。災害に負けずに頑張っていこうと、みんなが思いました。

なかには、「西和賀を離れて首都圏で働いているので、このフォームで初めて西和賀の状況を知りました。少しですが初任給から寄附します」という声もあり、西和賀出身者の思いの受け皿にもなったんだなと思いましたね。

盛岡さんさ踊りでの様子

盛岡さんさ踊りでの様子

いただいた寄附で導入したのはキッチンカーです。西和賀は封鎖されてしまったけど、こちらから出て行こう、外を走ることで西和賀をアピールしようという意味で導入し、主に各地のイベント会場やお祭りに出店して西和賀をPRして回りました。当時の合言葉は、「ピンチをチャンスに」。

結果、盛岡市のさんさ踊りでは、4日間で約120万円を売り上げるなど、西和賀の生産者や事業者への経済効果につながったことはもちろん、西和賀の存在を知ってもらうきっかけにもなりました。

ふるさと納税がなければ、人口6000人弱の小さなまちの存在を知ってもらうことは難しいと思います。だけど、この制度を活用したことで、全国に応援してくれる人ができたこと、まちをPRできたこと、そして土砂災害の復旧が進んだことに、心から感謝しています。

復活した道の駅「錦秋湖」

復活した道の駅「錦秋湖」

北上市ふるさと納税事業 きたかみチョイス プロジェクトリーダー
(当時:北上市 地域・産業連携復興支援員)登内芳也さん

登内 西和賀の土砂災害は全国的なニュースにはなっていなかった上に、岩手県内でも一部の新聞やテレビのみでしか取り上げられなかったローカルニュース。知っている人が少ないということは、復旧が進まないということも意味します。北上と西和賀がつながる道路は国道107号しかなく、通勤や物流、そして西和賀の経済に大きな影響が出ていました。

ふるさとチョイスに災害時の緊急寄附フォームがあることを知っていた私は、すぐに西和賀のふるさと納税担当の高橋さんへ連絡を取り、フォームを使う提案をしました。西和賀にとって重大な被害ですから、まずはその情報を表に出すべきだと。しかし、高橋さんはもちろん町長も「すごく大きな被害があったわけではないのに、緊急寄附フォームを使っていいのだろうか、申し訳ない」という気持ちでいたんですよね。

そもそも岩手には、控えめで謙虚な文化があって、他にもっと大変な人や地域があるんだから、自分たちのことを表に出すなんて申し訳ないと考えてしまうんです。その考えを変えるためには、“おせっかい役”が必要です。だから私はその役を買って出て、どうにか緊急寄附フォーム開設に至りました。

北上市ふるさと納税事業 きたかみチョイス 登内芳也さん

北上市ふるさと納税事業 きたかみチョイス 登内芳也さん

フォーム開設後は、寄附を集めるために強力な応援が必要だと考えました。もちろん北上市も応援しようと思っていましたが、それだけでは力が足りない。そこで、ふるさとチョイスの「先進自治体会議」で知り合っていた、宮崎県綾町と長崎県平戸市、山形県天童市、福島県大玉村のふるさと納税担当者に相談したのです。

すると、ふるさとチョイス内の自分たちのページに、西和賀の緊急寄附フォームのバナーを掲載して応援してくれたのです。この効果は非常に大きく、全国の人が西和賀の状況を知り、寄附をする援護射撃となりました。

ふるさと納税の制度がなければ、西和賀のような小さいまちで起こった災害を全国的に発信するのは難しく、復活するまでには非常に長い時間がかかったと思います。すると、地域経済はみるみるしぼんでしまったでしょう。

ふるさと納税は、災害時は地域経済を含めた復旧のきっかけに、通常の場合は地元の人には見えなかった魅力を浮き上がらせて、誇りと自信を持つきっかけになるツールだと思っています。

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