【後編】地域愛を生む! 高校生主体の「クッキーのまち久喜市」プロモーション

2017.05.16

埼玉県久喜市

都心まで50キロ圏内、茨城県との県境に位置する埼玉県久喜市。のどかな田園風景が広がるベッドタウン久喜市の課題は、住民に地元への愛着と誇りを持ってもらうことでした。そのための取り組みとして久喜市が始めたのが、クッキーを活用したプロモーションです。高校生を主役にした「クッキー甲子園」と、高校生がまちを巻き込んでいる「クッキーダンス」。この2つの取り組みに当事者として関わっている高校生にお話を伺いました。

(クッキープロモーション仕掛け人に聞いた、前編はこちら)

クッキーダンス
埼玉県立久喜北陽高等学校 チアリーディング部

——久喜市プロモーションの一つとして作られた「クッキーダンス」。その動画を作る際に、久喜北陽高校のチア部の皆さんに、久喜市役所シティプロモーション課の金澤さんから、「動画で踊ってほしい」と声がかかったと聞きました。

「はい、最初聞いたときはびっくりしました。私たち、有名でも何でもない高校生じゃないですか(笑)。それなのに、市のPR動画に出演していいのか、戸惑いました」

「知名度がない私たちが出演していいのかは不安だったけど、地元久喜市のダンス動画に出られるというのはうれしいと思いました」

「カメラの前で踊る経験をしたことがなかったから、そんな機会を与えてもらえて率直にうれしかったです」

「しかも、クッキーダンスの曲って、毎日17時になると市内を流れる曲なんです。通常はものすごくスローテンポだけど、クッキーダンスはアップテンポだったので、明るい久喜市のイメージで踊ってみたらすごく楽しかったです」

 ——動画は一つではなく、複数の動画に出るなど活動の幅を広げていると聞きました。具体的に、これまでどんなことをしたか教えてください。

「これまで、3000人で踊る動画や、一人で踊ってみた動画、チア部の学年別踊ってみた動画などに出演しました。市民のマラソン大会でも、ステージパフォーマンスの時間をもらっていたので、そこでもクッキーダンスを踊りましたね。最近は小学校にクッキーダンスを教えに行ったりもしています」

——小学校は、どういうきっかけで教えに行くことになったのでしょう?

「昨年、ダンスの全国大会で上位成績だった、江面第二小学校5年生の6人に、クッキーダンスを教えて欲しいと市役所の金澤さんから連絡があったんです。僕は教えられないからって。私たちもクッキーダンスが楽しくて、教えたい・広めたいと思っていたから、ぜひやらせてくださいと、教えに行きました」

「小学生は覚えるのがすごく早くて、教えている私たちも楽しかったよね。ただ、何回通しで踊っても疲れないみたいで、教えている私たちのほうがついていけなくなったりして(笑)」

「でも、教えるのって難しいなと思いました」

「そう、伝えることの難しさを知ったよね。同年代に教えるのとは全然違っていて、擬音語を取り入れたり、何かに例えたりして、伝わる工夫をしました。もっといろんな人に教えてみたいという気持ちが芽生えました」

 ——クッキーダンスを始めて、自分や周りに変化はありましたか?

「久喜北陽高校のチア部が有名になったなあって思います。他校からも「クッキーダンスすごいね」って言われることがよくあるんですよ! 顧問以外の先生方も、チア部を応援してくれるようになってうれしいし、クッキーダンスによって久喜市がちょっと有名になりつつあるなって思います」

「正直、今までは「どこに住んでいるの? 久喜市ってどんなところ?」と聞かれてもうまく答えられなかったんです。でも今は「クッキーダンスの久喜市です。ビデオに出て踊っています!」って自慢できるようになりました。しかも、クッキーダンスを知っている人が結構いるんですよね。すごくうれしいです」

「本当、自慢できるようになったよね。市外に住んでいる友達からも「久喜市ってクッキーダンスだよね」と言われることが増えて、久喜市に住んでいることを誇れるようになりました」

「ダンスを踊れば久喜が一つになるというか、まとまる気がするし、実際にそういう実感があります。私は久喜市の市民ではなく、住んでいる市にダンスはないから、うらやましいです。私の市でも作ってもらいたい(笑)」

「私、クッキーダンスをもっともっと広めたいと思っています。最近、足を怪我して、しばらくダンスを踊れなくなったとき、ケガや障害がある人でも踊れるように簡単アレンジした振り付けを作ろうってみんなと話をしました。その動画を作って、いろんな人に教えたい。市民全員が知っていて、みんなが踊れるダンスがある市って、すごくおもしろいと思っています」

クッキー甲子園
埼玉県立鷲宮高等学校 調理部

——クッキー甲子園に出場すると決めてから、どのような準備をしたのか教えてください。

「調理部は毎週金曜日に活動しているのですが、甲子園前は週に2〜3日集まりました。先生と相談しながらベースとなる味を決めて、そこから細い味付けや分量を足したり引いたりしながら作ったのですが、クッキーって分量が5グラム違うだけで味はかなり違うんです」

「だから、毎回、5チームに分かれて少しずつ分量を変え、どうすれば一番美味しいかの研究を重ねました」

「しかも、私たちはイチョウの形をしたクッキーを作ったので、作り方を工夫しないと細い茎の部分が折れてしまう。どうしたら折れにくくなるのか、いろんな方法を試して正解を見つけていくのが大変でしたね」

「とにかくクッキーを食べ続ける日々で、だんだん味がわからなくなるのも大変だったよね(笑)」

——クッキー甲子園出場校の写真を入れたポスターが市内に貼られたと聞きました。周りから反響はありましたか? また、当日印象的だったことを教えてください。

クッキー甲子園のポスター

クッキー甲子園のポスター

「よく行くコンビニが通学路にあるのですが、そこのオーナーと話したことはなかったけど、「ポスター見たよ、クッキー甲子園頑張ってね」と声をかけられたときは、すごくびっくりしました。なんだか有名人になった気分で(笑)」

「友達から、ポスター見たよって写真が送られてくるのは結構あったよね」

「うん、送ってくれる人がたくさんいて、注目されているなあって思いました。しかも、当日は調理部以外の先輩も来てくれて、私たちのクッキーを食べて「美味しかった」と声をかけてくれたのはうれしかったです。多分、クッキー甲子園がなかったら話す機会がなかったと思う」

「それに、審査員のケーキ屋さんが私たちの作ったクッキーを食べて、プロの視点からのアドバイスをもらえたのは、すごくいい経験だったよね。勉強になりました」

クッキー甲子園、当日のプレゼンの様子

クッキー甲子園、当日のプレゼンの様子

——唯一の男性部員である現在1年生の水越さんは、クッキー甲子園で鷲宮高校のクッキーを食べて、調理部への入部を決めたんですよね?

写真

「はい。最初は、「クッキー甲子園ってなんだそれ」って思っていたんです。でも、興味があったので、当日会場に行ってクッキーを食べたら本当に美味しくて驚きました。学校を出て活動するイメージのない調理部が、市民を楽しませていることに感動して、入部希望を出しました」

「こういう後輩が増えるのはすごくうれしいです!」

「私たちは3年生で、もう引退なので、ぜひ1年生と2年生に受け継いでもらって優勝して欲しいです」

——クッキー甲子園に出場したことで、何か自分たちや周りに変化はありましたか?

「市役所の人やケーキ屋さんなど、いろんな人と知り合えました。クッキー甲子園に出ていなかったら、部活に対してもそこまで熱くなれなかったと思います。文化部が表に出られる活動があったことで、周りに調理部も頑張っていることを伝えられたのは、すごく良かったと思っています」

「鷲宮高校の調理部が作ったクッキーは商品化もされたし、少し地元に貢献できたかなって思います」

「それから、久喜市の広報誌にも載ったよね。クッキー甲子園がなかったら、私たちが広報誌に取り上げられることはなかったと思います」

「絶対にないよね! それに、作ったクッキーを商品としてお店に並べてもらう経験もできなかっただろうし、甲子園を見て入部を決めた後輩とも出会えなかったかもしれません」

「うん。だから卒業しても手伝えることがあったらいつでも手伝いたいし、後輩には優勝してもらいたいです」

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「頑張ります。僕は、男子一人で調理部に入部しました。男子でも調理部に入れることを知ってほしいし、シェフに男性が多いように、調理部にも男子の人数を増やしたいんです。だから、次のクッキー甲子園で優勝して、その知名度を上げたいと思っています」

 

【編集後記】
「久喜市って何があるの?」と聞かれると、多くの人が「何もない」と答えていたことが、久喜市にとっての課題でした。せっかく住んでいるまちを誇りに思って欲しいし、魅力に感じて欲しい。そんな思いから、久喜市シティプロモーション課の金澤剛史さんは、クッキーを活用したクッキープロモーションを始めました(金澤さんのお話はこちら)。

市にとって前例のない取り組みでしたが、2017年で4年目を迎える今、その結果は着実に出始めています。

(取材・文:田村朋美、写真:隼田大輔)

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