【前編】地域愛を生む! 高校生主体の「クッキーのまち久喜市」プロモーション

2017.05.16

埼玉県久喜市

都心まで50キロ圏内、茨城県との県境に位置する埼玉県久喜市。のどかな田園風景が広がるベッドタウンとして栄えてきましたが、東京に近いがゆえ、若者の人口流出が激しい地域でもあります。住民が久喜市に誇りと愛着を持ち、いつでも帰りたいと思えるまちにするためには、どうすればいいのか。その課題に、クッキーを活用したプロモーションで立ち向かう、久喜市シティプロモーション課の金澤剛史さんにお話を聞きました。

「地元に何もない」と答える住民を減らしたい

久喜市の課題は、市外の人から「久喜市ってどんなところ?」と聞かれると、多くの方が「東京の近くで、何もないところ」と答えてしまっていることです。

せっかく住んでいるのに、地域への関心が薄く、まちを誇りに思ってもらえていない。それゆえ、一度進学や就職で東京に出てしまうと、「いつか久喜市に戻ろう」という選択肢を持ちにくいのではないかと思いました。住民の方には、久喜市の魅力を認識してもらいたいし、「久喜市が好き」と思ってもらいたい。シティプロモーションを始めた背景には、こんな現状と思いがありました。

では具体的にどんなプロモーションをすべきなのか。そのアイデアは、自主研究会という、時間外に集まって市役所の仕事や地域のことを考える会の雑談から生まれました。ある日、「他の自治体にどんな自己紹介をしているか」が話題に。というのも、「久喜市の金澤です」と名乗っても、いまいちピンとこない、イメージできないといったような反応をされてしまうことが多いんですよね。

じゃあ、久喜の特徴はなんだろう。何を言えば印象に残るのだろう。そこで出てきたのは、「久喜とクッキーって似ているから、クッキーのまち久喜市って言えば印象に残るんじゃない?」というアイデアでした。ダジャレですが(笑)、たしかに印象には残るかもしれません。

それから1カ月後、ちょうど関東の自主研究会が集まる機会があったので、試しに「クッキーのまち久喜市の金澤です」と名乗ってみました。すると、かなり反応が良かったんですよね。しかも、その会で出会い、後日お会いする機会があった方からは、私の名前はあやふやでも、「クッキーのまちの人ですね」と言われるようになったのです。久喜市でやるべきプロモーションは「これだ!」と思いました。

久喜市役所 シティプロモーション課 金澤剛史さん

久喜市役所 シティプロモーション課 金澤剛史さん

高校の文化部に光を当てた、クッキー甲子園

私が属するシティプロモーション課は、3年前にできた新しい課です。それまで、市としてこれといったプロモーションをやっていたわけではなく、しかも「クッキーのまち久喜市」と市が認めたわけでもありません。前例がないことへの挑戦だったため、手探り状態で企画を進めていきました。

最初に企画したのは、高校生によるオリジナルクッキーのコンテスト、「クッキー甲子園」です。企画書を作って高校にアポイントを取り、いざ説明に向かうと、かなりの不信感で迎えられましたね(笑)。役所が高校の調理部に何の用だ、と。

それもそのはず、今まで高校と行政に接点がなかった上に、クッキー甲子園というイベントは、全国どこにもありません。何度も通って、本気であることを伝えるところから始めました。

クッキー甲子園は、市内のショッピングモールで開催し、審査員は来場者と洋菓子店の店主の方々。イベントで終わらせるのではなく、優秀作品は商品化することで、定着と浸透を目指しています。2017年で、クッキー甲子園は4回目を迎えますが、運営やイベントのあり方などは、まだまだ模索中です。高校生たちの真剣勝負の場ですから、毎回勉強させてもらいながら、最適解を見つけたいと思っています。

(写真左:洋菓子倶楽部エーデルワイス 山本さん)

(写真左:洋菓子倶楽部エーデルワイス 山本さん)

洋菓子倶楽部エーデルワイス 代表 山本俊幸さん

埼玉県は洋菓子店の数が多く、久喜市内にも車で5〜10分圏内に7〜8軒が立ち並んでいます。人口密集地ではないのに、これだけ洋菓子店が密集しているのだから、まちおこしに役立てられるんじゃないかという話は以前からありました。だから、クッキー甲子園の取り組みはおもしろいと思いましたね。

甲子園後、優秀作品は高校とやり取りをしながら商品化しているのですが、そういったつながりは今までなかったので新鮮です。クッキー甲子園の取り組みをきっかけに、「クッキーのまち久喜市」のイメージを定着させ、市内の洋菓子店にいろんなクッキーがある状態を作れたらいいですね。久喜市の人が自信を持ってクッキーをお土産に買える、そんなまちになると楽しいと思っています。

久喜市に限らないかもしれませんが、「地元には何もない」と、住んでいるまちに誇りや魅力を感じていないケースは結構あると感じています。クッキー甲子園から始まったクッキーのまちプロジェクトをきっかけに、久喜市に住んでいることを誇りに思えるようなまちづくりを支えたいです。

クッキーダンスが地域のつながりを生む

クッキー甲子園と並んで始めたもう一つの企画が、PR動画の制作です。全国の自治体が思考を凝らした動画を作っている昨今、久喜市はどんな動画を作るべきか。私は、外に向けたPRではなく、地域の人が地域に興味を持つきっかけを作りたかったので、まずは市民が主役の撮影会を企画しました。

しかし、市民1000人に集まっていただき、当時では珍しかった一発撮りの動画を作ったものの、思うような結果は得られませんでした。地域に定着せず、再生回数も伸びなかったのです。

翌年はその学びを生かして、地域に残る、地域の人みんなに楽しんでもらえる、ダンス動画を作ろうと考えました。ダンスなら「久喜市のダンス=クッキーダンス」として広まるかもしれません。曲は市の歌をダンス調にアレンジし、振付は誰でもできる簡単なものではなく、ある程度難易度が高く、だけど練習したら踊れるようなものをプロの振付師に考えてもらいました。

出来上がったクッキーダンスは、久喜北陽高校のチアリーディング部に協力してもらいながら、市民3000人が踊る動画や、個人の「踊ってみた」動画などを次々とyoutubeにアップ。

すると、チア部のみなさんがいろいろなところで踊ってくれるようになり、さらに、わかりやすい振付動画を作ってくれたり、小学校に教えに行ってくれたりなど、徐々にクッキーダンスが広まり始めたのです。小学校の運動会でもクッキーダンスを踊ってくれると聞いたときは、心の中で思わずガッツポーズをしましたね。

このクッキーダンスは、どんどんアレンジされながら広まってほしいですし、私も一生懸命に広めていきたいと考えています。というのも、ダンスは学校や世代、性別などを超えた、共通言語になるものだと考えているから。クッキーダンスで久喜市民をつなげながら、ゆくゆくは、近接する市区町村ともコラボレーションしていきたいと考えています。

3年前は、「地元には何もない」と言われてしまうことが大きな課題だった久喜市。ですが、クッキー甲子園とクッキーダンスによって、少しずつではありますが、若者たちが地元に愛着を持ち始めている実感を得られるようになりました。これからも、地域の人に愛されるプロモーションで、地域に愛着と誇りを持ってもらえるよう、取り組みを進めたいと考えています。

(取材・文:田村朋美、写真:隼田大輔)


(高校生に話を聞いた、後編はこちら)

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